大阪府感染症情報センター ものしり講座(18)


小児の下痢症

 小児を中心とした感染性胃腸炎には秋口から年末、そして2月頃から春先にかけて2回の発生ピークがあります(図1)。年末の胃腸炎の原因はノロウイルスがほとんどですが、これからの季節はロタウイルスが流行し、保育園や幼稚園で集団発生を引き起こします。ロタウイルスとノロウイルスは形態的にも大きく異なります(図2電子顕微鏡写真)。ロタウイルスは小児期にほぼ100%罹り、感染によって獲得した免疫は次の感染防御に有効に働きます。したがって、ノロウイルスのように成人が小児と同様に発症することはなく、倦怠感や軽いむかつき程度で経過します。ただし、免疫の低下した高齢の方では発症するので、高齢者施設等で嘔吐下痢症の集団発生の原因となることがあります。

 経口的に侵入したロタウイルスは24〜48時間の潜伏期ののち、激しい嘔吐と下痢を発症します。1日数回の下痢症状は5日間程度続き、その間ウイルスは患者便に大量に排泄されます。ノロウイルス同様に10個程度のウイルスで発症に至るので、小児間では容易に感染が拡大します。症状はノロウイルスに比べ重症で、脱水症状の改善等を行わなければ急速に脱水が進行し死にいたることもあります。治療薬はなく、世界的には年間40万人にものぼる小児がロタウイルスによって死亡しています。先進諸国ではロタウイルスによってなくなることはほとんどありませんが、衛生状況に関係なく世界的に毎年流行を繰り返す疾患であるため、世界的にワクチンが導入され、小児の死亡と重症化の予防が行われています。日本では残念ながら使用されていません。

 気温の低下する秋から春先は小さなお子さんのおられる家庭では、ウイルスによる嘔吐下痢症に注意が必要な季節です。ノロウイルスの流行が終わると、次はロタウイルスへの警戒が必要です。大人が罹りにくいことからノロウイルのように注目されていませんが、小児にとっては危険な感染症です。これから流行をむかえますので、日頃の健康維持と手洗いなどの習慣を身につけて感染予防に努めましょう。
 保育園、幼稚園ならびに高齢者施設においては、集団発生の予防のために嘔吐下痢症発生時にはノロウイルスに準じた対応を取って下さい。

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