大阪府感染症情報センター ものしり講座(30)


「多剤耐性アシネトバクター」や「NDM-1産生菌」は恐ろしい?

 最近、「多剤耐性アシネトバクター」や「NDM-1」がメディアなどで大きく取り上げられ、「スーパー耐性菌」「新型耐性菌」等センセーショナルな名前で呼ばれています。

抗菌薬(抗生物質)が効かなくなった細菌を「薬剤耐性菌」と呼ぶ

 細菌感染症を治療するとき、抗菌薬は非常に有効な薬です。この薬で多くの患者が救われるようになり、一時期「感染症は終わった」と言われたこともありました。しかし、抗菌薬の普及とともに、元来有効なはずの抗菌薬が効かない菌が次々と見つかるようになりました。こういった抗菌薬に抵抗性を持つ菌を「薬剤耐性菌」、さらに複数の臨床上重要な抗菌薬に耐性を持つものを「多剤耐性菌」と呼んでいます。
 薬剤耐性菌はMRSAVREなどがよく知られていますが、その他にも緑膿菌肺炎球菌インフルエンザ菌結核菌サルモネラ大腸菌カンピロバクターなどいろいろな菌で見つかっており、以前よりその対策をどうするかが問題となっていました。


スーパー耐性菌がスーパー病原菌とは限らない

 「多剤耐性アシネトバクター」や「NDM-1産生菌」は有効な抗菌薬がほとんどないとされ、実際に病気を起こした場合には治療が困難になると考えられます。しかし、今のところこれらの病原性は弱く、誰にでも病気を起こすような菌ではありません。すなわち、薬剤耐性という「鎧」によって高い防御力を誇る一方で、病原性という「武器」は貧弱でヒトに対する攻撃力は弱いと言うことができます。
 このような菌が病気を引き起こすのはまれで、体内に入ってきても健康なヒトであれば自然に排除されます。しかし病院のように、常に何らかの抗菌薬が使用されており、病気・ケガなどで体の抵抗力が落ちている人が多く、人工呼吸器やカテーテル等の医療器具を使わざるを得ない、といった状況では肺炎や敗血症といった感染症を引き起こすことがあります。医療機関での院内感染が問題となっているのはこのためです。


「多剤耐性アシネトバクター」や「NDM-1産生菌」は通常特に恐れる必要はない

 これまでのところ、これらの耐性菌が検出されているのは国内外の一部の病院に限られており、通常生活で接触することはほとんどありません。また万が一これらの菌と接触しても、前述したように病原性は弱いため病気になることはないと考えられます。従って、日常生活では必要以上に恐れる必要はなく、普段から手洗い等の衛生管理を心がけていれば十分です。
 また、最近病院に行った、海外に行ったとしても、特に症状がなければ検査を受ける必要はありません。もし、発熱や下痢など何らかの症状がある場合は、病院できちんと診察を受けられることをおすすめします。


 以上のように、「多剤耐性アシネトバクター」や「NDM-1産生菌」は必ずしも恐ろしい病原菌であるとは言えません。しかし、もし「多剤耐性アシネトバクター」や「NDM-1産生菌」が新たな病原性を獲得したり、他の病原菌にその「薬剤耐性」を渡したりといったことが起これば、公衆衛生上の大きな脅威となる可能性があります。よって今後その動向を監視していくことが重要です。

 

 

 
 


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