大阪府感染症情報センター ものしり講座(42)


米国で発見された変異型インフルエンザA型ウイルス(A/H3N2v)のヒトへの感染について

 インフルエンザウイルスは、ヒトの他、カモなどの水禽、ブタ、ウマなど、各動物の集団内で独自に流行しています。動物で流行するインフルエンザウイルスは通常ヒトに感染しません。しかし、稀に動物からヒトへのインフルエンザウイルス伝播が起こることがあります。特にブタやトリで流行しているインフルエンザウイルスがヒトに感染する例が報告されています。このようなウイルスはヒト社会で大流行する可能性があるため、世界各国でブタや家禽でのインフルエンザウイルスが監視されています。

 2011〜2012年に米国で変異型のインフルエンザA型ウイルス(A/H3N2v)感染者の増加が報告されました。このウイルスはヒトで流行している季節性インフルエンザA型ウイルス(A/H3N2、いわゆるA香港型ウイルス)と異なり、ブタで流行しているウイルスでした(図)。そのためこのウイルスの名称にはH3N2の後に変異株(variant)を示すvが付けられ、ヒトで流行している季節性インフルエンザウイルスと区別されています。2011年 7月から2012年4月までは、A/H3N2vウイルス感染者の報告数は全米で13例でした。しかし、2012年7月に新たに4例のA/H3N2v感染者 が報告された後、急激に報告数が増加し、10月5日現在の発表では2012年の患者発生数は全米11州で307例にのぼっています。



 感染者のほとんどがインフルエンザウイルスに感染歴のない小児で、大多数の例が発症前に米国内で開催された農業見本市などでブタとの接触があるか、もしくはブタの飼育施設に入っていたことが明らかになりました。一方、ヒトからヒトへA/H3N2vウイルスが感染した事例は極めて稀です。そのため、日本でインフルエンザと診断されても、米国でブタと接触したことがなければ、A/H3N2v感染が疑われる可能性は現時点では非常に低いと考えられます。

 最後にA/H3N2vウイルスの病原性と治療・予防に関する知見です。A/H3N2vのヒトにおける病原性は季節性インフルエンザと同程度であると考えられています。しかし、高齢者、妊婦、5歳以下の乳幼児、そのほか心疾患、糖尿病、喘息、免疫不全を背景に持つ方などではインフルエンザウイルスに感染すると重症化するリスクが高いため、特に注意が必要です。これは従来のインフルエンザウイルスと共通する注意点です。治療については、現在認可されているノイラミニダーゼ阻害剤はA/H3N2vに対する効果があると考えられます。一方、予防については、現在使用されているインフルエンザワクチンはA/H3N2vウイルスに対し効果がないと考えられています。

 ブタやヒト感染者内でA/H3N2vウイルスが更なる変異を獲得することで、ヒト集団内で効率よく伝播することができるウイルスに変わる恐れもあります。そのようなウイルスは、2009年の新型インフルエンザウイルスのように世界的な流行を起こし、医療・社会・経済的な混乱の原因になるかもしれません。今後の情報に注意して下さい。

 

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