大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第100号− 2011年12月28日発行


レジオネラの生菌のみを選択的に検出する方法の開発

 近年、大型入浴施設や老人福祉施設の浴槽水を感染源とするレジオネラ症の発生が報告されています。レジオネラ症とは、原因菌であるレジオネラ属菌(以下、レジオネラ)を含む水の微粒子(エアロゾル)をヒトが吸入し肺に取り込むことによって発症する呼吸器感染症で、劇症型のレジオネラ肺炎と、自然治癒型の風邪症状に似たポンティアック熱の2つの病型があります。レジオネラ症は日和見感染症*1のひとつで、高齢者や乳幼児、病気などで抵抗力が低下している人に発症がみられます。ヒトからヒトへの感染はありません。レジオネラ症は感染症法*24類に定められており、診断したすべての医師に届け出が義務付けられています(全数把握)。現在の感染症法が施行された19994月以降、レジオネラ患者報告数は年々増加傾向にあり、2008年には最も多い892件が報告されました。2009年以降も、患者報告数は1年間に700件を超えています。レジオネラ症の感染源は、浴槽水、冷却塔水、修景水(噴水など)が挙げられますが、日本での最も多い感染源は浴槽水です。

 レジオネラ症を防止するためには、感染源となり得る浴槽水の衛生管理を行うと共に、レジオネラが浴槽水中に「検出しない」ことを確認しておくことが重要です。レジオネラの浴槽水からの検出は、国が示す指針に記載された培養法によって行います。しかし、レジオネラは発育が遅いため、培養法では検査結果を得るまでに1週間〜10日かかります。そのため、当研究所では、迅速に検出することが可能であるLAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification)やPCR法(polymerase chain reaction)といった遺伝子検査法を培養法と並行して行ってきました。遺伝子検査法は、半日程度で結果を得ることが可能なことから、レジオネラ患者発生時の感染源特定など迅速さが求められる場合に非常に有用な検出手法です。一方で、これら遺伝子を標的とする検査法では、培養法で検出できる生菌だけではなく、死菌や遺伝子の断片が存在すると陽性となります。そのため、生きているレジオネラのみを迅速に検出可能な検査方法が求められています。

 DNAインターカレート剤*3であるエチジウムモノアジド(EMA)は、生きている細菌の細胞膜を透過しませんが、死滅した細菌の細胞膜を透過してDNAに結合し、光を照射することによってDNAを切断します。当所では、この特性を利用し、浴槽水試料をEMA処理し、死滅したレジオネラのDNAは切断されて検出されない状態にした後で、生きているレジオネラのみを選択的に検出する方法(EMA-LAMP法)について検討を行っています。当研究所において、レジオネラ標準株1株及び浴槽水分離株8株について、生菌及び塩素により死滅させたレジオネラ菌懸濁液を作成して検討した結果、EMAを添加しなかった場合は生菌及び死菌共にLAMP法が陽性であるのに対し、EMAを添加した場合は生菌のみが陽性となり、EMA-LAMP法により生きているレジオネラのみを選択的に検出可能であることが確認されました。現在は、実際の浴槽水を用いて、EMA-LAMP法により生きているレジオネラのみを検出可能であるか検討を行っています。


 語句説明
 1)日和見感染症
   免疫の働きが低下している時に、健康な人には病気を起こさないような病原性の弱い微生物が原因で発症する感染症のこと
 2)感染症法
   感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
 3)DNAインターカレート剤
   DNAの隣り合う塩基対の間に、挿入(インターカレーション)する性質を持つ化合物のこと

(生活環境課 枝川 亜希子)


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