大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第105号− 2012年5月31日発行


大阪府における環境放射能水準調査

 大阪府立公衆衛生研究所では文部科学省からの委託で約50 年間にわたり大阪府の環境中の放射能の調査(環境放射能水準調査と呼ばれています)を行ってきました。この調査には、平常時に行う通常の調査と国内外で放射能に係わる事故等が起こったときに行う"モニタリング強化"とがあります。

 1.通常の調査
 通常の調査では、@降水(雨)の全ベータ放射能の測定、A環境試料(月間降下物,大気浮遊じん,水道水,海水,土壌,海底土)や食品試料(牛乳、野菜類)のガンマ線放出核種分析、およびBモリタリングポストによる空間放射線量率の連続測定を行っています。
 @降水の全ベータ放射能の測定では、放射性核種(放射性物質の種類:セシウム137等)の特定をせず、大まかな放射能レベルの推移を把握するために1日に降った雨について雨が降るたびにベータ線の総量を測定しています。

 Aガンマ線放出核種分析は、ゲルマニウム半導体検出器(メルマガ97号「ゲルマニウム半導体検出器について」参照)を用いて、放射性核種を放出するガンマ線のエネルギーで同定して測定する分析です。この分析では、どのような核種がどのくらい環境中に存在するかを知ることができます。放射性核種には、自然界にもともと存在する自然放射性核種と核実験や原子炉で人工的に作り出される人工放射性核種が存在します。これらは、人への健康影響という観点では違いは無いのですが人工放射性核種の推移を見ることで核実験や原発事故等の影響を見ることができます。

 図に大阪府における月間降下物(当所屋上にある水盤に1ヶ月の間にたまった雨とちりを集めて濃縮したもの)の中のセシウム137(MBq/km2)の推移を示します。大気圏で核実験が行われていた1960〜1970年代から現在にかけて減少してきており、1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原子力発電所の事故の影響で一時的に上昇したものの、その後は低レベルで推移していましたが、2011年3月に発生した福島第1原子力発電所の事故の影響で同年4月にやや上昇しました(7.9 MBq/km2)。しかし、そのレベルは核実験が行われていた1963年5月の値(690 MBq/km2)やチェルノブイリ原発事故当時の値(1986年5月:48 MBq/km2)と比べて低いものでした。また、その後、値は下がり夏頃には事故前のレベルに戻っています(10月以降は、セシウム137は検出されていません)。


 また、他の通常の水準調査においても大気浮遊じんや上水原水(淀川河川水)において福島第1原発事故由来と思われる放射性物質が観測されています。しかし、その量は、非常に微量で人の健康に影響を与えるようなレベルではありませんでした。

 Bモニタリングポストによる空間放射線量率値
 モニタリングポストは、当所屋上に設置されており、空間放射線量率の連続測定を行っています。空間放射線量率値の1時間平均値は、1995年以降、平常時は0.036〜0.072μSv/hの範囲で変動しています。

 また、現在では、より人の生活圏に近いところで測定するという観点から地上1mでのモニタリングポストによる測定を下記の府下5地点で行っています。これらの結果は、当所の屋上(地上20m)の結果と共に文部科学省のホームページにおいてリアルタイムで公表されています(全国及び福島県の空間線量測定結果(平成24年4月2日〜))。



 2.モニタリング強化
 昨年の福島第1原発事故時等の緊急時には、文部科学省の指示で上記の通常調査とは別にモニタリングの強化を行います。モニタリング強化での調査は迅速に放射性物質の飛来を把握するため、サンプルの濃縮や時間をかけての測定をせず、毎日測定を行います。

 モニタリング強化の内容は、福島第1原発事故時の場合、@上記、通常調査の「@降水の全ベータ放射能の測定」を休止し、降水の採取器を用いて毎日(24時間分)の雨(無い場合は、ちりを洗い集める)を採取し、ゲルマニウム半導体検出器で測定、A水道水2Lをそのままゲルマニウム半導体検出器で測定(通常の場合は、100Lを濃縮して測定)、Bモニタリングポストの1時間平均値を毎日報告する、の3点でした。その結果、大阪府においては、異常値は検出されませんでした(詳細は、公衛研ニュース44号)。

 また、平成18年10月および平成21年5月の北朝鮮の核実験時にも直ちにモニタリングの強化を行ってきました(メルマガ38号、および、メルマガ70号)。

 現在(平成24年5月)、北朝鮮が3度目の核実験を行うとの情報がありますが、もし、実験が行われれば、直ちにモニタリングの強化を行う事となっております。

(生活環境課 肥塚 利江)


▲ページの先頭へ