大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第106号− 2012年6月29日発行


化粧品中のホルムアルデヒド遊離型(ドナー型)防腐剤とホルムアルデヒドによるアレルギー性接触皮膚炎について

 化粧品には微生物汚染による商品の劣化や健康被害の発生を防ぐ事を目的として、多くの製品に防腐剤が配合されています。日本では、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)類やフェノキシエタノールといった防腐剤が広く使われていますが、欧米では「ホルムアルデヒド遊離型防腐剤」と呼ばれる防腐剤もよく使用されています。(図1に、実験に使用したホルムアルデヒド遊離型防腐剤等の試薬写真を掲載しています。)

 日本では、表に挙げたように1,3-ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン(DMDMヒダントイン)と、N, N''−メチレンビス[N'−(3−ヒドロキシメチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)ウレア](イミダゾリジニル尿素)の2種類しか使用できませんが、諸外国ではいろいろなホルムアルデヒド遊離型防腐剤を配合することができます。

 



 ホルムアルデヒド遊離型防腐剤はその名の通り、分解によりホルムアルデヒドを遊離する性質を持っています。我々の研究グループではこれまでに、ホルムアルデヒド遊離型防腐剤を配合した化粧品中のホルムアルデヒド量に着目し、研究を進めてきました。ホルムアルデヒド遊離型防腐剤を溶かした液や、実際に配合した化粧品を分析したところ、ほとんどのサンプルから数十〜数百ppmのホルムアルデヒドが検出されました(参考文献1〜3)。一方、ホルムアルデヒド感受性患者では、数十〜数百ppmの濃度のホルムアルデヒドで皮膚感作が起こりうるという報告があり(参考文献4)、ホルムアルデヒド遊離型防腐剤が配合された化粧品を使うと、遊離したホルムアルデヒドによりアレルギー性接触皮膚炎を発症する可能性が考えられます。

 このように、ホルムアルデヒド遊離型防腐剤を配合した製品からは、「原材料に含まれない」ホルムアルデヒドが分解により生じ、検出されます。そこで、健康被害発生防止のため、国や地域によっては「表示」による注意喚起が行われています。EU(欧州連合)では、ホルムアルデヒド遊離型防腐剤を使用した化粧品は、最終製品中のホルムアルデヒド濃度が500 ppmを超えると「製品中にホルムアルデヒドが含まれます」という警告文書を記載しなければなりません。また、わが国でも、法律で認められた2種類のホルムアルデヒド遊離型防腐剤(DMDMヒダントイン、イミダゾリジニル尿素)を使用した商品には「ホルムアルデヒドに過敏な方および乳幼児のご使用はお避けください」と記載することが義務付けられています。

 今回は遊離した「ホルムアルデヒド」の観点からのお話でした。しかし、ホルムアルデヒド遊離型防腐剤によるアレルギー性接触皮膚炎は、遊離したホルムアルデヒド以外の原因によっても発症することが疑われています。健康被害発生防止のため、現在ホルムアルデヒド遊離型防腐剤の分解とアレルギー性接触皮膚炎の関係にも注目し、研究を進めています。

 

 (追記)
 最近、関東の浄水場の水道水から水質基準を超えるホルムアルデヒドが検出され、話題となりました。原因物質と推定されたヘキサメチレンテトラミン(メセナミン)は、ホルムアルデヒド遊離型防腐剤の一種であり、日本では使用できませんが、欧米では化粧品への配合が認められています。また、ヘキサメチレンテトラミンと構造が似たホルムアルデヒド遊離型防腐剤として、クオタニウム-15が知られています(図2)。我々は、クオタニウム-15の分解と抗菌活性についての研究を行い、「ホルムアルデヒド以外のクオタニウム-15分解物」にも抗菌活性があることを発見し、今年初めに論文として発表しています(参考文献3)。

 



 (参考文献)

  1. Doi T, Kajimura K, Taguchi S. Survey of formaldehyde (FA) concentration in cosmetics containing FA-donor preservatives. J Health Sci 2010: 56: 116-122.

  2. Kajimura K, Doi T, Tagami T, Taguchi S. The Release of Formaldehyde upon Decomposition of Imidazolidinyl Urea J Jpn Cosmet Sci Soc 2010: 34: 7-13.

  3. Kajimura K, Doi T, Takeda A, Asada A, Tagami T. Bactericidal Activity of Quaternium-15 and Its Decomposition Products against Aerobic Bacteria. J Jpn Cosmet Sci Soc 2012: 36: 1-6.

  4. De Groot A C, Flyvholm M A, Lensen G, Menne T, Coenraads P J. Formaldehyde-releasers: relationship to formaldehyde contact allergy. Contact allergy to formaldehyde and inventory of formaldehyde-releasers. Contact Dermatitis 2009: 61: 63-85.

(薬事指導課 土井 崇広)


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