大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第107号− 2012年7月31日発行


薬剤耐性淋菌の流行状況

 淋菌(りんきん)は性病の一つである「淋病(りんびょう)」の原因となる病原体ですが、近年、淋菌の薬剤耐性化が進み、治療に使える抗菌薬(抗生物質)の選択肢が減ってきています。以前は効果があったペニシリンGや経口第三世代セファロスポリン剤(セフィキシム)では治療効果が期待できなくなってきているのです。


 日本性感染症学会「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2011」では、淋菌の治療薬として、第三世代セファロスポリン注射剤であるセフトリアキソン、あるいはセフォジジム、ならびにスペクチノマイシンの単回投与が推奨されています。しかし、昨年国際性感染症学会で報告され話題になった、京都市内で2009年に確認されたセフトリアキソン高度耐性淋菌が流行すれば、淋菌感染症の治療が極めて困難になる可能性があります。

 そこで当研究所では、平成23年度(2011年)より府内の診療所医師・国立感染症研究所と共同で、京都市から地理的にも近い大阪府内で流行する淋菌の抗菌薬感受性を調査し、高度薬剤耐性淋菌の流行が起きていないかを監視しています。


 図に平成23年度に府内で採取された淋菌152株の、代表的な5種類の抗菌薬に対する感受性割合を示しました(スペクチノマイシンは現時点では世界的に耐性の報告がないので検査していません)。問題のセフトリアキソン耐性株は見つかりませんでしたが、調べた5種類の薬剤の内、セフィキシム、シプロフロキサシン、ベンジルペニシリンについては、感受性を示す菌の割合が非常に低下しており、使用できない状況となっていることが確認されました。またアジスロマイシンについては、感受性割合がやや低下してきており、少数ながら耐性菌も分離されました。そしてセフトリアキソンについては、耐性菌こそ分離されなかったものの、すでに低感受性株が出現しており、高度耐性淋菌の出現に関して油断できない状況であることが明らかとなりました。ただ、今のところ京都の事例以外にセフトリアキソン耐性淋菌が日本で見つかったという報告は無いので、現状では治療ガイドラインに従った投薬が適切だと思われます。


 今後も府民の健康を守るため、薬剤耐性淋菌の監視を続けていく予定です。

(ウイルス課 川畑 拓也)


▲ページの先頭へ