大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第110号− 2012年10月31日発行


浄化槽による窒素とリンの除去

 昭和44年に建築基準法で初めて全国一律のし尿浄化槽の構造基準(建設省告示第1726号)が制定され、し尿のみを処理する単独処理浄化槽、し尿と生活雑排水を処理する合併処理浄化槽の具体的な構造が示されました。その後、昭和55年に大幅な改正(建設省告示第1292号)が行われ、次いで昭和63年の改正で小型浄化槽(処理対象人員5〜50人)の構造基準が示され、一般家庭にも合併処理浄化槽が設置されるようになりました。

 これらの浄化槽は主にBOD(生物化学的酸素要求量)で表される有機物を除去することを目的としていました。しかし、河川や湖沼の富栄養化を防止するためには有機物だけではなく、窒素やリンを除去する必要がありました。
 そこで、平成7年の改正で処理対象人員50人以下の小型浄化槽では窒素を、中・大型浄化槽においては窒素とリンを除去する構造基準が示されました。
 では、浄化槽で窒素をどのようにして除去するのでしょうか。家庭用の小型浄化槽の場合を見てみましょう。構造基準に示されたのは「脱窒ろ床接触ばっ気方式」といい、処理の流れを下記に示しました。


 流入汚水は内部にプラスチック担体が充填された脱窒ろ床槽(嫌気槽)で、流入水中の固形物が除去されると同時に、蓄積した汚泥が微生物の働きで嫌気分解されます。脱窒ろ床槽を通った汚水は接触ばっ気槽(好気槽)で有機物の分解を受けるとともに、次式に示すように窒素成分が硝化細菌の働きで、アンモニア性窒素(NH4+)から亜硝酸性窒素(NO2-)、硝酸性窒素(NO3-)へと順次酸化されます。
       NH4+ + 1.5O2 → NO2- + H2O + 2H+

       NO2- + 0.5O2 → NO3-

 この亜硝酸性窒素や硝酸性窒素を含んだ水を嫌気状態の脱窒ろ床槽に循環させると、流入水中の有機物(水素供与体)と槽内に棲息する脱窒素細菌の働きで還元され、窒素ガス(N2)となって除去されます。
       NO3- + 5H → 0.5N2 ↑ + 2H2O + OH-

       NO2- + 3H → 0.5N2 ↑ + H2O + OH-

 リン除去も微生物の働きを利用することが可能ですが、制御が難しいため、構造基準では鉄塩やアルミニウム塩などを添加する凝集沈殿法が示されています。家庭用の小型浄化槽ではリンを除去するための構造基準は示されていないため、メーカーが独自に開発した浄化槽(性能評価型)があります。処理方法は好気槽内部に2枚を1組とした鉄板を浸漬させ、これに直流の微弱電流を流すことにより鉄を溶解し、汚水中のリン酸イオン(PO43-)と反応させて除去します。

       PO43- + Fe3+ → FePO4 ↓

 当所において窒素とリンを同時に除去できる家庭用の小型浄化槽34基の水質調査を行いました。その結果を他の窒素除去型の報告値とともに示しました。

 要求される水質は窒素除去型はBOD20mg/L以下、総窒素(T-N)20mg/L以下、リン除去型はこれに加えて全リン(T-P)1mg/L以下です。窒素・リン除去型は75%値でもいずれの水質項目も低値を示しており、特にリンは1mg/L以下で、窒素除去型に比べ大幅に低い値となっています。

      *1 中央値:データを数値の小さい順に並べた際に中央に位置するデータ
      *2 75%値:データを数値の小さい順に並べた際に3/4に位置するデータ


 当所では小型浄化槽以外に大阪府住宅まちづくり部や大阪府住宅供給公社などと協力して、府営住宅に付帯している大型浄化槽の一部において、合併処理浄化槽では間欠ばっ気運転を併用した窒素・リン同時除去を、単独処理浄化槽では凝集剤添加によるリン除去運転を行い、データの蓄積と運転管理指導を行っています。


   1)  山本康次、中野 仁、奥村早代子ほか:浄化槽面整備地域における事前現況調査と整備の効果予測、浄化槽研究、19(3)、1-11(2007)
   2)  藤村葉子、宇野健一、上治純子:高度処理型合併処理浄化槽に関する調査研究、千葉県環境研究センター、平成16年度年報、118-119
   3)  (財)日本環境整備教育センター:普及啓発のための浄化槽の整備効果に関する調査報告書、(平成17年3月)

(生活環境課 中野 仁)


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