大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第110号− 2012年10月31日発行


魚介類加工品を対象としたヒスタミン分析法について

 魚介類には、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの人の健康に必要な栄養成分が豊富に含まれています。しかし、魚介類の鮮度が低下して特定の細菌が増えると、アミノ酸の一種であるヒスチジンが分解されてヒスタミンが生じます。ヒスタミンに汚染された魚介類を食べることで、顔面紅潮、口部灼熱感、発疹、頭痛などを発症します。これをヒスタミン食中毒と言い、食物アレルギーの症状に似ていることから、アレルギー様食中毒とも呼ばれています。ヒスタミン食中毒は、軽い症状ですむ場合が多いのですが、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人が発症した場合には、気管支炎や血圧低下を起こして重症になる場合があるので注意が必要です(※1)。

 海外では、食中毒の発生防止に限らず、加工段階の鮮度や細菌汚染の指標とする目的で、魚介類に含まれるヒスタミンの残留基準が設定されています(※2)。

 一方、日本では、食品に含まれるヒスタミンの残留基準はありませんが、魚介類の加工・流通過程を低温状態にして細菌が増えないようにすることで、ヒスタミンによる食中毒の発生を防止することができます。生食用の鮮魚については、「食品、添加物等の規格基準」(厚生労働省)において『生食用鮮魚介類は、清潔で衛生的な容器包装に入れ、10℃以下で保存しなければならない』と保存基準が定められています(※3)。魚介類加工品については、農林水産省が、製造段階におけるヒスタミン低減のためのガイドライン作成に向けて、食品のヒスタミン含有量の実態調査を実施しています(※4)。

 食品中のヒスタミン分析法は、食品から抽出したヒスタミンを蛍光試薬で標識し、高速液体クロマトグラフで測定する方法(蛍光誘導体化HPLC法)が一般的です。当所では、蛍光誘導体化HPLC法を用いて、販売店に流通する魚介類加工品のヒスタミン検査を実施してきました。しかし、魚介類加工品には、測定の妨害となる脂質やアミノ酸が多く含まれています。そこで、精製方法を改良することで、魚介類加工品に適用可能であり、ヒスタミンに特異的な分析法を開発しました。

 この分析法の概略は、次のとおりです。試料をトリクロロ酢酸で抽出した後、中性緩衝液で希釈します。次に、固相抽出カートリッジカラムを用いて、測定の妨害となる脂質やアミノ酸を除去します。測定は、従来法と同じく蛍光誘導体化HPLC法を用います。新しい分析法は、高い精製効果が得られただけでなく、従来法に比べて分析時間が短く、試薬の使用量を減らすことができました。当所では、この新分析法を平成21年度より検査に適用しています。

 なお、ヒスタミンによる食中毒は、魚介類を取り扱う際に次のことを注意することで予防できます。

   1.新鮮な魚を購入し、古くなったら食べないこと(加熱してもヒスタミンは分解されません)。
   2.購入後すぐに冷蔵、冷凍で保存すること。ただし、冷蔵庫での長期保存は避けること。
   3.調理するときに、長時間室温に放置しないこと。
   4.冷凍、解凍を繰り返さないこと。
   5.口に入れたときに、ピリピリするなどの異常を感じたときは食べないこと。


 ヒスタミンのように、食品の鮮度低下によりアミノ酸が分解されて生じるアミンを腐敗アミンといいます。ヒスタミンによる食中毒の発症には、ヒスタミン以外の腐敗アミンの影響を受けるとされています。今後は、食中毒発生時の原因究明に役立てるため、食品中の腐敗アミン類の一斉分析法を開発し、検査体制の充実を図っていきたいと考えています。



  ※1  大阪府立公衆衛生研究所メールマガジンかわら版@iph 第76号2009年12月28日発行
  ※2  コーデックス規格(国際食品規格)、EU、アメリカなどで基準値が設定されています。
  ※3  「食品、添加物等の規格基準」昭和34年厚生省告示第370号
  ※4  「食品の安全性に関する有害化学物質のサーベイランス・モニタリング中期計画」(平成22年12月公表農林水産省消費・安全局)

(食品化学課 粟津 薫)


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