大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第112号− 2012年12月28日発行


病院内薬局における抗がん剤汚染と安全対策

 悪性腫瘍の治療に用いられている抗がん剤は、患者さんにとってなくてはならないものです。一方で抗がん剤の多くは、一部の正常細胞にも影響を及ぼすため、抗がん剤を取扱う医療従事者への健康リスクが懸念されます。そのため、当所では、より安全に抗がん剤調製を実施するための知見を収集するために、以下の調査を実施しました。

 抗がん剤を取扱う部屋の汚染実態を明らかにするために、府内の病院に協力を依頼して、2007年から2011年にかけて、室内に設置された生物学的安全キャビネットなどの備品に付着した抗がん剤の量を測定しました。また、抗がん剤を取扱う薬剤師がどれだけ曝露したかを明らかにするために、薬剤師の尿に含まれる抗がん剤やその代謝物の量を測定しました。また、病院が2007年から2011年にかけて実施した安全対策を、当所が作成した「安全な抗がん剤調製のためのチェックリスト」を用いて加算方式により点数化し、抗がん剤の汚染量および曝露量との関連を調べました。このチェックリストには、安全設備、訓練、安全対策キット、個人保護具、緊急時対応についての質問項目が設定され、安全な抗がん剤調製への寄与や緊急性の度合いを考慮して設問ごとに1〜8点までの点数で重みを付け、累計して総合的に評価しました。質問項目ごとに80%を目標の目安に設定し、医療機関における安全な抗がん剤調製の目標達成度を確認できるようにしました。

 その結果、チェックリストの点数が80%を超えた期間(目標達成期間)における抗がん剤の汚染量は、チェックリストの点数が80%以下であった期間(目標未達成期間)の汚染量に比べて統計学的に有意に減少しました(図1)。また、薬剤師の尿中抗がん剤および抗がん剤代謝物の量は、統計学的に有意ではありませんでしたが、減少傾向が見られました(図2)。




 以上の結果から、抗がん剤を取扱う部屋の汚染や薬剤師の曝露量は、適切に安全対策を推進することにより、減少することが明らかとなりました。今後も医療現場の方と共同で、安全に抗がん剤を取扱えるような職場環境を構築するために調査研究を継続したいと考えています。

(生活環境課 吉田 仁)


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