大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第114号− 2013年2月28日発行


加熱したからといって安心できないウェルシュ菌食中毒

 一般的に食中毒は、食品を十分に加熱することで予防できますが、加熱したからといって安心できない食中毒があることをご存知でしょうか?そのひとつにウェルシュ菌による食中毒があります。

 ウェルシュ菌とは
 ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は人の腸管に存在する常在細菌の一種であり、動物の腸管や土壌などの自然環境にも広く存在します。酸素のほとんどない環境でのみ発育できる偏性嫌気性菌であり、30〜47℃では栄養型菌(通常に増殖する状態)の発育が速いのが特徴です。また他の菌が死滅する90〜100℃でも芽胞(生存しにくい環境を生き抜くカプセルのような状態)を形成して生存します (図1)。ウェルシュ菌の一部は下痢を起こすエンテロトキシン(腸管毒)を産生する能力をもち、食中毒の原因菌(エンテロトキシン産生性ウェルシュ菌)となります。


         

芽胞               栄養型 



 ウェルシュ菌食中毒はどのように起こるのか
 多くの場合、カレー、シチューなどの煮込み料理やローストビーフ、仕出し弁当などが、ウェルシュ菌食中毒の原因食品となります。食品を加熱すると、他の細菌は死滅しますが、ウェルシュ菌は芽胞を形成して生き残ります。生き残ったウェルシュ菌は食品の温度が45℃前後にまで下がると、他の菌が死滅しているため、のびのびと急速に増殖します。それらの食品を食べると腸管内でエンテロトキシンを産生して腹痛・下痢などの症状を引き起こします。

 ウェルシュ菌食中毒の特徴
 ウェルシュ菌による食中毒の発生時期は夏場が多いものの(https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data53j.pdf)一年中みられます。潜伏期間は6〜18時間で腹痛・下痢を主症状とし、症状は比較的軽度です。学校やレストラン、事業所などで大量に調理された食品が食中毒の原因になることが多く、患者数が多くなるのも特徴の一つです。この理由として、大きな調理器具では食品の内部が嫌気状態となりやすく、さらに温度も下がりにくいため、ウェルシュ菌の発育しやすい状態が長く続くからです。最近の大規模事例としては、平成23年12月に刑務所で1000名を超える食中毒が発生しました。

 また、食品の放置が数時間程度の短時間で発生したと考えられる事例もありますので、予防のためには以下のことを心がけることが大切です。
 @加熱調理した食品は、室温で放置せずにすぐに食べるようにしましょう。
 A加熱調理した食品を保存する場合は、ウェルシュ菌の発育しやすい温度をなるべく短時間とするため、小分けして急冷後保存するようにしましょう。

(細菌課 余野木 伸哉)


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