大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第118号− 2013年6月28日発行


貝毒は煮ても焼いても食えません


 貝毒は、中毒症状から麻痺性貝毒と下痢性貝毒に分けられます。近年、大阪湾岸域で発生した貝毒は、麻痺性貝毒です。

 麻痺性貝毒は、貝自身が作っている毒ではありません。もともと海中に生息する有毒プランクトンが産生する毒であり、このプランクトンを餌として二枚貝が捕食すると、二枚貝の中で毒が蓄積され貝の毒化が起こります。アサリ、ホタテガイ、マガキ、ムラサキイガイ、シジミ等の食用となる二枚貝の毒化は、水産・食品衛生両分野での重要な行政課題となっています。

 麻痺性貝毒に毒化した貝をヒトが摂取した場合、フグ毒中毒とよく似た中毒症状が起こります。食後30分以上の潜伏時間を経て、口唇、手足のしびれに始まり、重症のときには呼吸麻痺により死亡することがあります。

 麻痺性貝毒による貝の毒化は、例年、日本各地で発生しており、貝出荷地では、規制値(可食部1 g当たり4マウスユニット (※) を超えた貝が見つかった場合、出荷自主規制等の措置を講じています。また消費地においても安全性確認のためのモニタリング検査が実施されているため、市販の貝類が原因となる麻痺性貝毒による食中毒は、近年ほとんど発生していません。

 しかしながら、今年4月下旬に、大阪湾内の防波堤に張り付いていたムラサキイガイ等を採取し、加熱調理して喫食したことを原因とする食中毒事件が、大阪市内で発生しました。残品である加熱調理されたムラサキイガイを調べたところ、基準値を大幅に上回る麻痺性貝毒が検出されました。麻痺性貝毒は、加熱によっても完全にはなくなりません。貝毒発生時期には、貝毒発生地域の貝を決して食べないよう注意することが、必要です。

 大阪市立環境科学研究所では、液体クロマトグラフ質量分析計 (LC-MS/MS) を使った麻痺性貝毒の測定法を検討しています (図1)。この測定法は、公定法であるマウス単位法(※)に比べて迅速な麻痺性貝毒の高感度分析が可能なことから、食中毒発生時等の緊急対応や貝の毒化の予測に利用できることが期待されています。



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麻痺性貝毒の検査、定量は、マウス単位法で行うことが、わが国の公定法とされています。 この方法では、貝試料から加熱抽出した試験液をマウスに腹腔内投与し、マウスの致死時間から毒量を求めます。毒量の単位にはマウスユニットが使用されており、1マウスユニットは、体重20 gのマウスを15分間で死亡させる毒量として定義されています。



 関連情報:厚生労働省:自然毒のリスクプロファイル:二枚貝:麻痺性貝毒



(大阪市立環境科学研究所 食品保健グループ 仲谷 正)


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