大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第120号− 2013年8月30日発行


シックハウス問題の現状


 1990年代後半頃より、住宅等の室内空気中の化学物質がその主要な発症原因とされるシックハウス症候群や化学物質過敏症が社会的な問題となり、厚生労働省では生活衛生上問題となる化学物質を選定し、各物質の室内濃度指針値 1) の策定を進めてきました。また、国土交通省は、2002年に建築基準法を改正し、シロアリ防除剤クロルピリホスの建材への使用禁止、ホルムアルデヒドの建材への使用制限等の措置を講じました。これらの対策により指針値が設定されている化学物質 (以下、規制化学物質・表1) が原因となるシックハウス症候群の発生事例は近年減少し、一定の成果が得られたと考えられます。


 


 しかし、室内空気中には多数の化学物質が存在し、規制化学物質のみが健康に悪影響を及ぼすのではありません。また、規制化学物質の室内濃度のみを指針値以下に低減すれば建材として安全であるかのように取り扱われかねず、より強毒性の代替品が使用される可能性もあります。最近、指針値の設定されていない化学物質 (以下、未規制化学物質) が原因と推定されるシックハウス症候群の発症事例が各地で報告されています。

 大阪府では府内保健所と公衆衛生研究所において2001年度より室内空気中化学物質測定の検査 (有料) を実施しています。当初はホルムアルデヒドなどの規制化学物質が原因となるシックハウス事例が大部分を占めていましたが、2000年代後半以降は、塗料の希釈液や造膜助剤、木材由来の天然成分、防かび剤、シロアリ防除剤、木材防腐剤など未規制化学物質が原因と推定される健康被害の事例や相談が、当所においても相対的に増加しています。

 このような現状を踏まえ、2012年より厚生労働省では、2004年以降途絶えていた「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」を再開し、今後の対策について検討しています 2)

 シックハウス症候群発症の要因として選定された各化学物質の室内濃度指針値の設定、その後の代替化学物質の台頭とそれに起因するシックハウス症候群の発症というこれまでの経緯から、この循環は繰り返される可能性があると推定されます。厚生労働省では、各化学物質の室内濃度指針値とは別に、室内空気中揮発性有機化合物の総濃度 (TVOC濃度) 3) の目標値を暫定的に設定しています。この濃度は、毒性学的な知見に基づくものではありませんが、室内空気の状態の目安として利用されることを期待して設けられており、居住者の健康を確保する上で、有効であると考えられています。また、TVOC濃度は、シックハウス症候群発症の指標として利用できる可能性があるという報告もあります。代替化学物質の安易な使用を規制するためにも、「TVOC濃度の指針値」の策定がシックハウス症候群の予防対策の一つとして非常に重要であると考えられます。


1) 室内濃度指針値:一生涯その値以下の濃度に曝露されたとしても通常は有害な健康影響がないであろうと判断される室内濃度で、現在ホルムアルデヒドなど13種の化学物質について設定されています。

2) 厚生労働省関連ホームページ:シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会( 議事録および資料等

3) TVOC濃度:空気中に存在する沸点が概ね50℃〜300℃の各有機化合物の濃度の合計値で、含まれる有機化合物の種類をすべて特定したものではありません。一般住宅を対象とした全国的な調査結果に基づいて、現在暫定的に400μg/m3 が目標値として設けられています。

(企画調整課 吉田俊明)


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