大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第120号− 2013年8月30日発行


ナナホシクドア食中毒における患者便試験の実施


 ヒラメの生食後、数時間で一過性の嘔吐・下痢を発症する有症事例については、ヒラメ筋肉内寄生性の粘液胞子虫(寄生虫)であるナナホシクドア(学名;Kudoa septempunctata)が関与することが明らかとなり、これらの事例は食中毒として取り扱うことが通知されました(平成23年6月17日付け食安発0617第3号)。これまでの調査研究で、ヒトに病原性を示す粘液胞子虫はこのナナホシクドアのみで、さらに、患者の発症にはおおむね1000万個以上の生きたナナホシクドア胞子の摂取が必要であることが明らかとなっています。そのため、ナナホシクドア食中毒検査では患者の喫食残品であるヒラメから本寄生虫を種特異的かつ定量的に検出することが重要です。しかしながら、ヒラメは刺身や寿司ネタとして提供されるため、多くの事例では残品の入手が不可能で、検査の実施が困難でした。

 公衆衛生研究所感染症部細菌課ではこの問題を解決するため、患者便からのナナホシクドア遺伝子検出法を確立し、大阪府内で発生するナナホシクドア食中毒事例(疑い事例を含む)で患者便の試験を実施しています。この方法は、300 mg程度の便からDNAを抽出し、リアルタイムPCR法という遺伝子検出法を利用して、抽出DNAに含まれるナナホシクドアDNAを検出します(参考)。平成23年度と24年度には、患者便試験を含めた検査と疫学情報から、23の食中毒事例についてナナホシクドアを原因物質として報告しました。また、これまでの試験データから陽性患者便に含まれるナナホシクドアDNAは極めて微量であること、ならびに、ヒラメの喫食から便検体採取までの時間が陽性率に影響を与えること(図1)を明らかとし、第33回日本食品微生物学会で発表しました。


 


 なお、この患者便試験法では患者が喫食したヒラメに発症必要量の生きたナナホシクドアが感染していたかを確定することはできないため、この結果のみで原因物質を断定することは不可能です。そのため、ナナホシクドア食中毒事例では患者の喫食状況、潜伏時間、症状、患者便試験結果から総合的に判断し、原因物質を特定していくことが必要となります。


 参考:大阪府立公衆衛生研究所HP

(細菌課 原田哲也)


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