大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第121号− 2013年9月30日発行


レジオネラ症


 レジオネラ症はレジオネラ属の細菌(Legionella spp.)による呼吸器感染症であり、病型には比較的軽症のポンティアック熱型と重症の肺炎型があります。ポンティアック熱型は潜伏期が5〜66時間で発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、倦怠感などの風邪様症状を呈し、比較的症状が軽く、3〜5日で回復することが多いのに対して、肺炎型は潜伏期が2〜10日と若干長く、初期症状は全身倦怠感、頭痛、筋肉痛ですが、進行が早く48時間以内に高熱(39℃以上)、咳、胸痛、膿性痰、呼吸困難、四肢の振戦、意識混濁など、重症化することが多い病型です。

 レジオネラ属菌は水の中や、湿った土の中に存在し、そこで増殖した菌が攪拌、循環、泡立ったりしたときなどにできる飛沫とともに気道を通して侵入、肺で増殖し、病気を起こします。インフルエンザや百日咳、マイコプラズマ肺炎などの多くの呼吸器感染症がヒトからヒトへ感染するのに対して、レジオネラ症ではヒトからヒトへの感染はありません。これまでに入浴施設、プール、太陽熱温水器で加温された給湯水、家庭用超音波式加湿器、病院玄関ロビーの修景水、腐葉土などを感染源とする患者発生の報告があります。入浴施設では「公衆浴場における水質基準等に関する指針」で「レジオネラ属菌は、検出されないこと」と定められていますが、循環濾過式浴槽、噴流式泡風呂などで菌の除去、消毒・殺菌が不十分な場合に菌が増殖して、レジオネラ症患者が発生しています。

 一般に高齢者や免疫機能の低下をまねく基礎疾患を有する患者、免疫機能を低下させる治療を行っている患者がレジオネラ症のハイリスクグループとされています。図は大阪府(大阪市、堺市を除く)で2008年から2013年8月までに届出があった患者について性別・年齢別の分布を調べたものです。患者は2歳から103歳、平均年齢は68歳ですが、男女差が著しく、173名の患者のうち73%にあたる127名が男性であり、死亡の7名もすべて男性でした。感染者の年齢分布をみても男性が55歳以降に患者が急増するのに対して女性は60歳以上で患者が増加します。レジオネラ症は男性が罹患しやすい病気といえます。


 


 レジオネラ症にはマクロライド系、ニューキノロン系、テトラサイクリン系の抗菌薬が有効ですが、一般の感冒治療によく用いられるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は効果がありません。発症初期に適切な抗菌薬が投与されなかった場合、急速に症状が悪化する場合もあります。レジオネラ症の診断については、臨床症状からは他の微生物が原因となっている感冒や肺炎と鑑別することができませんが、尿に含まれるレジオネラ由来の物質を短時間(15分程度)で検出できる診断キットが普及し、迅速診断が可能になっています。「どのような施設を利用したか、どのような作業をしたか、どのような器具を使用したか」など、問診で得られる患者からの情報が迅速診断に役立つ場合があります。そのためにもレジオネラ症という感染症について、よく知っておくことが大切です。

 2011年には群馬、長野の3つの温泉を巡ってから帰阪後、発症された方の死亡事例もありました。高齢化社会の到来、温泉好きの日本人、決して他人事ではないかもわかりません。

(細菌課 勝川千尋)


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