大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第123号− 2013年11月29日発行


水道水質検査における検査精度の向上について(4)


 大阪府では府内の水道事業体、保健所等の水道水質検査機関の検査精度の向上を図ることを目的として、平成5年度より「大阪府水道水質検査外部精度管理」を実施しています。この外部精度管理は、当所で作成した試料を検査機関が測定し、その結果について統計・解析を行い、分析精度が保たれているかどうかを確認するものです。平成24年度は対象項目を、無機物質は「水銀及びその化合物」、有機物質は「有機物(全有機炭素(TOC)の量)」(以下、TOC)とし、無機項目で31機関、有機項目で38機関の参加を得て実施しました。

 TOCは、水道水質基準項目(*1)の一つで、水道水の性状に関する項目として、基準値が3mg/L以下に設定されています。有機物とは、一般に、炭素を主成分とする化合物の総称です。たとえば水道原水の場合では、生活排水や事業場排水に含まれるタンパク質、脂質、糖類といった生体に由来する成分や、洗剤などの界面活性剤、土壌に由来するフミン質と言われる高分子、あるいはダムや池で増殖したプランクトンなど、さまざまな物質が有機物に含まれます。では、なぜTOCが水道水の性状に関係するのでしょうか?それは、TOCが水道水の微生物汚染の指標になることや、原水のTOCが上昇した場合、塩素消毒をすることによって、トリハロメタン(*2)に代表される消毒副生成物が多く生成することから、工程管理の指標になるためです。

 本メールマガジン第66号で平成19年度の結果を、第84号で平成20年度の結果を、第109号で平成22年度の結果を紹介しましたが、今回は平成24年度の結果のうちTOCについて紹介します。


(1)大阪府水道水質検査外部精度管理の結果

 検査は、「水質基準に関する省令の規定に基づく厚生労働大臣が定める方法」である、全有機炭素計測定法で行うこととしました(図1に全有機炭素計の例を示しました)。

 試料には濃度の異なる2つのものを用意しました(試料A及び試料B)。38機関の検査値を統計処理し検査結果の精度を確認したところ、試料A及び試料Bともに、検査値の「変動係数」(*3)が20%を超えた機関、「Zスコア」(*4)の絶対値が3を超えた機関、「真値」(*5)に対する「誤差率」(*6)が±20%を超えた機関はありませんでした。従いましてZスコアと誤差率がともに許容範囲を超えた「外れ値」に該当する機関はなく、良好な結果が得られました(図2及び図3に、試料ごとの度数分布図を示しました)。


 



 


(2)検査精度の向上に向けて

 上記の外部精度管理では、「外れ値」となった機関はありませんでした。しかし、検量線やクロマトグラムなどの提出書類を精査して、参加機関を対象にした結果報告会において、検査精度をさらに向上するための留意事項を周知しました。

 以上のように、当研究所においては、水道水質検査における外部精度管理を実施することによって、府内の水道水質検査機関の検査精度の向上を図り、水道水のさらなる安全性、快適性の確保に努めています。



*1 水道水は水質基準により、飲用水としての安全性、快適性が保たれています。人の健康に対して悪影響を生じさせないという観点から、「健康に関連する項目」としての30項目と、異常な臭気や洗濯物の着色などの生活上の障害をきたさないという観点から「水道水が有すべき性状に関連する項目」としての20項目の、計50項目が定められています。
*2 メタン(CH4)の4つの水素のうち、3つがハロゲン(塩素Cl、臭素Brなど)に置き換わったもの。主としてクロロホルム(CHCl3)、ブロモジクロロメタン(CHBrCl2)、ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl)、ブロモホルム(CHBr3)があり、水質基準値が設定されています。
*3 変動係数は機関内の報告値のばらつきを表します。各機関の報告値の標準偏差を平均値で除したもので、有機物の分析では±20%以内であれば、機関内の検査精度が保たれていることになります。
*4 Zスコアは、ある機関の報告値が、全体のどこに位置するかを表します。正規分布を用いる統計学的検定法で検出される数値で、絶対値が3未満であれば信頼性が保たれていることになります。
*5 真値は対象物質の真の濃度を指します。ここでは全機関の報告値から、異常な値を除いた後の平均値を真値としました。
*6 誤差率は報告値が真値から、どれだけ離れているかを100分率で表したものです。有機物の分析の場合、±20%以内であることが必要になります。


(生活環境課 小泉義彦)


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