大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第124号− 2013年12月27日発行


飛んでいるアスベストを見つける


 2005年、兵庫県尼崎市で起こったクボタのアスベスト問題。アスベストは空気中に一旦飛び出すと、数μm (1μm は 1mm の 1000分1)まで細く、短い繊維になって、空気中に浮遊します。空気中のアスベストは普通、目には見えません。どのようにして測るのでしょうか?

 アスベストは天然の鉱物で、糸や針のような細長いかたちをしています。中皮腫という中皮(主に胸膜)にできる腫瘍の原因と考えられており、吸いこんでから発症するまで10年〜40年ほど長い期間をかけて進行していきます。日本では年々、中皮腫による死亡者数が増えています(図1)。


 


 現在、日本ではアスベストの製造・使用は禁止されていますが、建物の吹付けなどに使われていたアスベストが現在も残っています。最も注意が必要なのは、これらの建物を解体などの工事で壊したり、穴をあけたりするときです。大気汚染防止法や大阪府生活環境の保全等に関する条例で、アスベストを含んだ吹付け材などの除去工事等をする際には、周囲に飛散させないよう隔離養生などを行い、周囲に漏れないように厳重に管理して工事等をすることが定められています。

 大阪市ではこれに加えて、厳しい書類審査、立入検査を行っています。大阪市内を北部、東部、西部、南東部、南西部の5ブロックに分け、各ブロックの環境局職員が顕微鏡を現場へ持ち込み、現場で速やかにアスベストの飛散がないかチェックしています。万が一、問題があった場合、その試料は大阪市立環境科学研究所に持ち込まれます。

 空気中アスベストの検査にはニトロセルロースでできたメンブレンフィルター(直径 48mm の白色)を用います。ポンプでフィルターを通して、10L/分の速度で空気を吸引してサンプリングします。いわば、空気をフィルターで「こす」訳です。サンプリングしたフィルター試料はカットしてスライドガラスに載せ、アセトンという液体試薬の蒸気で透明化処理を行い、位相差顕微鏡で観察して測定します。

 研究所では、位相差顕微鏡での分析を行い、敷地境界基準(大阪府生活環境の保全等に関する条例に基づく)である、空気1L中10本という濃度を超えた場合には、さらに走査型電子顕微鏡による精密分析を行うことで詳細な確認をします。電子顕微鏡ではより高倍率で観察し、見つかった繊維1本1本について、エネルギー分散型X線分光法で含まれている元素(ケイ素、マグネシウム、鉄など)を分析し、アスベストか否か、どんな種類のアスベストかを分析します。



 

  


 市民の健康を守る使命のもと、研究所と環境局は連係プレーでアスベストの飛散から大阪の空気を守っているのです。


注1) アンモサイトは6種類あるアスベストの内の1種類で、元々は asbestos mine of South Africa (南アフリカ産アスベスト)の頭文字からとった商品名でした。茶石綿とも呼ばれ、建材の状態では茶色の繊維で、顕微鏡で見ると針のように直線的なかたちが特徴です。



(大阪市立環境科学研究所 都市環境グループ 古市裕子)


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