大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第124号− 2013年12月27日発行


照射食品について


 「照射食品」という食品をご存じでしょうか? 日本国内で目にする機会はほとんどないかもしれませんが、今回、照射食品をめぐる現状および研究についてご紹介します。


1.照射食品とは?
 照射食品とは、ガンマ線、X線、電子線等の放射線を照射した食品の総称です。食品に放射線を照射することにより、殺菌や殺虫、農産物の発芽防止等の効果が得られます。このため、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどの各地域では食品への放射線照射が許可されています。一方、日本では、じゃがいも 注1) を除いて、食品への照射は認められていません。

 食品への放射線照射の特性として、1)熱の発生が少なく、生鮮状態での殺菌が可能、2)薬剤とは異なり、食品中に放射線が残留しない、3)放射線の透過力が強く、食品の内部まで均一処理が可能、4)連続的かつ大量処理が可能、等があげられます。これらのことから、海外では香辛料、魚介類、肉類および農産物など幅広い食品に照射が行われています。

 照射食品の健全性は、国連機関であるFAO/WHOの国際食品規格委員会(コーデックス委員会)等で評価されており、基本的に10 kGy 注2) (香辛料等の一部の食品は30 kGy)までの照射は安全であることが確認されています。しかし、その反面、照射食品に拒否反応を示す消費者も少なくありません。これは「食品中に放射線が残留しているのではないか?」、「照射により有害な物質が生成され、人体に悪影響を及ぼすのではないか?」等の不安によるものが大きいと推察されます。

2.新しい研究
 一昨年、牛レバーの生食による食中毒が相次いで起こりました。これは、牛レバー中に潜む腸管出血性大腸菌(O157)等の病原性細菌を摂取したことが原因です。このため、現在は生食用牛レバーの販売・提供が禁止されています。しかし、未だに牛レバーを生食することへの要望は強く残っています。

 こうした要望を受けて、最近、厚生労働省を中心に牛レバーへの放射線照射による殺菌効果が研究されています。これは放射線照射の特性である「生のまま殺菌できる」ことを活用したものと考えられます。放射線照射が牛レバー中の病原性細菌の殺菌に有効であり、その安全性が実証された場合、あらためて生食用牛レバーが販売・提供される日がくるかもしれません。

3.大阪府立公衆衛生研究所での取り組み
 当所では、脂肪を含む食品に適用可能な放射線照射履歴の判別分析法の開発に取り組んでいます。この方法では、2-アルキルシクロブタノンである2-ドデシルシクロブタノン(DCB)および2-テトラデシルシクロブタノン(TCB)を照射履歴の指標物質として用いています。2-アルキルシクロブタノンは、自然界には存在せず、照射によるラジカル反応を介して特異的に脂肪から生成されます(図)。このため、食品中からこれら物質が検出されれば、「放射線照射された食品である」ことの証明になります。当所が開発した分析法 1) は、厚生労働省から通知されている分析法 2) と比較して、迅速性、簡便性に優れており、多検体を一度に処理することが可能です。本法を食肉、およびその加工食品等に適用したところ、適正に放射線照射履歴を判別することができました。今後、牛生レバーを含むより多くの食品への適用性について検討を行う予定です。




 注1)発芽防止の目的にのみ許可
 注2)kGy:キログレイ(照射線の吸収線量の単位。放射線が食品に吸収される量を示す)


【引用文献】
 1) Kitagawa, Y., et al, A Rapid and Simple Method for the Determination of 2-Alkylcyclobutanones in Irradiated Meat and Processed Foods, Food Analytical Methods, in press .
 2) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長, 放射線照射された食品の検知法について(食安発第0706001号、平成19年7月6日)


(食品化学課 北川陽子)


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