大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第125号− 2014年1月31日発行


『医療・介護福祉施設を含む地域密着型の感染制御ネットワークの構築に関する研究』を平成25年度から始めました。


 この研究は、厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)の中でおこなわれるものです。研究事業の予定期間は平成25年4月1日から平成27年3月31日までの2年間です。

 本稿では、その概要を紹介します。

 感染症は、患者にも医療を行うものにも非常に負担が大きいものです。特に、院内感染は、患者や医療従事者に不必要な苦しみと医療費の支出を強います。医療レベル向上が地域保健に貢献するのは自明ですが、医療施設だけで院内感染を制圧することは困難です。院内感染の原因には、多剤耐性の細菌があります。多剤耐性菌による感染症は高齢者に多く、病院に紹介される多くの症例が介護福祉施設等に由来します。従って、介護福祉施設における感染制御も地域保健の質を維持するために極めて重要になります。

 医療機関においては、既に地域の病院間ネットワークを構築して、院内感染を制御するノウハウを共有する試みが実施されています。この目的は、院内感染の発生を防止するだけでなく、院内感染が発生した際に拡大を最小限にすることです。地域医療の負荷軽減の視点から見れば、医療施設の試みに比べて介護福祉施設における施設内感染対策は十分ではありません。これには制度、経済性、専門家不在等の要因が複雑に絡んでいると考えられます。そこで、我々は公衆衛生研究所が調整役となって、既に効果的に運用されている吹田市の医療機関が構成する院内感染対策ネットワークに地域の介護福祉施設を含めた拡大相互扶助ネットワークを構築し、医療機関の持つ感染制御ノウハウを介護福祉施設に提供することを着想しました。

 吹田市では、吹田保健所と大阪大学附属病院を核とした院内感染対策地域ネットワークをすでに構築しています。本研究では、これに地域の介護福祉施設を組み入れた維持可能なネットワーク体制のあり方を検討することにしました。介護福祉施設と行政・医療を結びつけるだけでなく、定期的な研修会や講演会の開催により感染制御連携意識の向上と情報共有をはかります。研究後期にはさらに、連携体制の実効性を模擬訓練により検証し、大阪府福祉部医療監や保健所長らによりシステムに対する評価を受け、さらなる改善を目指します。また、医療経済学的なアプローチで事業化の具体的指針と数値目標を策定して、行政施策として提言します。

 本研究事業に期待される効果は、介護福祉施設等における施設内感染制御を達成することを通じて、地域医療の健全性を担保することです。事業モデルを他地域に適応拡大することにより我が国の医療と福祉に貢献できます。また、地域医療サービスの効率化を通じて医療費の削減が可能です。さらに、感染症対策を軸として、多分野の専門家が横断的かつ重層的な連携強化が可能となるなど、地域保健に関わる人材の育成・確保に貢献できると思われます。今後とも本研究事業の推進にご理解とご協力をよろしく御願いします。


 なおこの研究は、以下の研究者を中心に実施されています。

     研究代表者 加瀬哲男  大阪府立公衆衛生研究所  ウイルス課長
     研究分担者 朝野和典  大阪大学医学部附属病院感染制御部  教授
     研究分担者 浅田留美子  大阪府吹田保健所  参事
     研究分担者 駒野淳   大阪府立公衆衛生研究所  主任研究員





医療・介護福祉施設を含む地域密着型の感染制御ネットワークの構築のためのイメージ図


(ウイルス課 加瀬哲男)


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