大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第127号− 2014年3月31日発行


乳幼児は注意を!! 春の呼吸器感染症ウイルス
 〜ヒトメタニューモウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス3型〜


 呼吸器感染症の症状(咳、鼻水、発熱など)の原因の多くは、ウイルス感染によるものです。特に乳幼児が感染することが多く、身近な感染症の1つです。
 呼吸器感染症は、インフルエンザに代表されるように「冬」の感染症のイメージが強いかもしれません。では、「春」・・・はどうでしょう? 
 大阪市立環境科学研究所では、感染症発生動向調査事業において、2011〜2012年の期間に大阪市内の6歳未満の呼吸器感染症検体について多項目の呼吸器感染症ウイルス遺伝子検査をおこないました。その結果、3〜6月の春の季節は、ヒトメタニューモウイルスとヒトパラインフルエンザウイルス3型の急激な検出増加と高い陽性率が認められました(図)。両ウイルスは、春のウイルス性呼吸器感染症の主要な病原体と考えられます。


 


ヒトメタニューモウイルス

 ヒトメタニューモウイルス (human metapneumovirus: hMPV)(写真1) は、2001年にオランダで発見されましたが、すでに50年以上も前から呼吸器感染症の原因として存在していたことが報告されています。生後6ヵ月頃から感染がはじまり、2歳までに約半数が感染すると言われています。主な症状は、発熱、上気道炎〜下気道炎(喘息性気管支炎、細気管支炎、肺炎)です。免疫を獲得しづらいため、何度も感染します。
 医療機関などで実施可能なhMPV抗原検出試薬が開発され、実用化されています。また、2014年1月1日から「hMPV感染症が疑われる6歳未満の患者であって、画像診断により肺炎が強く疑われる患者」の検査に対して保険適用になりました。これまで原因不明であった春の呼吸器感染症におけるhMPV感染症の実態解明が期待されます。


 


ヒトパラインフルエンザウイルス3型

 ヒトパラインフルエンザウイルス(human parainfluenza virus: HPIV)(写真2)は、インフルエンザという名前がついていますが、インフルエンザウイルスとはまったく別のウイルスです。1950年代に発見されたウイルスで、1〜4の血清型が報告されています。古くから知られていますが、医療機関等で実施可能な迅速病原体検出試薬がないこと、積極的な調査がおこなわれていないことから、国内におけるHPIVの検出、解析情報は多くありません。一般的に乳幼児では、HPIV感染により、発熱をともなった上気道炎〜下気道炎の症状が認められます。大阪市の調査の結果、HPIVのうち3型 (HPIV-3) が最多の検出で、その検出数は、冬に流行するRSウイルスの6割近くにのぼりました。HPIV-3 は、2歳までに約60%が感染すると言われており、生後6ヵ月未満の感染も少なくありません。HPIV-3は感染力が強いと言われており、陽性例のうち下気道炎の占める割合も高いことから、注意が必要です。hMPVと同様、何度も感染します。


 


 hMPV、HPIV-3 は、成人も感染し、発症することがあります。また、保育所や幼稚園における集団感染や病院内感染の原因となることがあり、注意が必要です。特に乳幼児では重症の場合、入院が必要となることがあります。治療は、このウイルスに対する特効薬がないため、熱を下げたり、咳を軽くする等の症状を軽減させる対症療法が中心です。現在、ワクチンはなく、感染予防には、手洗いやうがい、マスク等による飛沫、接触感染予防が大切です。

(大阪市立環境科学研究所 微生物保健グループ 改田 厚)


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