大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第128号− 2014年4月30日発行


農薬 (マラチオン) を検出した冷凍食品について


 平成25年12月29日に群馬県内の事業者が製造した一部の冷凍食品から農薬のマラチオン#1が検出されたため、自主回収を行うという報道がありました。事業者が回収した製品の中には、実際に食べた場合、健康に影響を生じる恐れのある濃度#2のマラチオンが検出されたものもありました。
 府内にも当該事業者が製造した冷凍食品を食べた時期に体調不良を感じた方が多くおられました。平成26年1月6日から当所では、マラチオンの混入が疑われる冷凍食品を食べて体調不良を感じたとの府民の方からの訴えに応じて、残品の提供を受けて検査を開始しました。1月22日までに48検体を検査しましたが、すべての検体からマラチオンは検出されませんでした。
 マラチオンの検査法は、1月6日の検査開始当初は結果判明までに1日半程度必要な方法を用いていましたが、1月8日からは分析機器の性能を十分に活用して検査法を合理化し、結果判明まで2時間程度の迅速法を早急に確立して対応しました。当所では、平成20年に発生した中国製冷凍餃子事件を受け、同様の事例に対応できるよう、健康危機事例への対応訓練や加工食品中の農薬分析法の開発#3などに取り組んできました。様々な加工食品の性状に応じた農薬分析法を検討し、その結果を学術誌等に公表しています。今後もこのような事案に適切に対応するために様々な可能性と対応策を検討し、府民の食の安全、安心に貢献できるように取り組んでいきたいと思います。


#1:マラチオンは、別名マラソンとも呼ばれる有機リン系農薬です。家庭菜園用の殺虫剤として、ホームセンターなどで市販されています。特異な臭気があります。中毒症状は嘔吐、下痢、腹痛などです。

 

#2:化学物質による急性中毒事例の場合、健康影響の有無については、急性参照用量(ARfD)(24時間またはそれより短時間に経口摂取しても、健康に悪影響が生じないと推定される1日当たりの量)という基準値から考えます。ARfDは安全側に立って設定されており、この基準値を超えた場合、必ずしも健康に影響を生じるというわけではありません。マラチオンのARfDは2 mg/kg/dayです。


計算例):15, 000 ppmのマラチオンが残留するコロッケを体重50 kgの人が食べた場合

◯マラチオン濃度15, 000 ppm = 15 mg/g
コロッケ1 gにマラチオン15 mgが残留する濃度

◯マラチオンのARfD = 2 mg/kg/day
体重50 kgの人の場合、 2 mg/kg/day × 50 kg = 100 mg/day
体重50 kgの人がマラチオンを1日あたり100 mgを超えて摂取すると健康に影響を生じる可能性がある

◯100 mg/day ÷ 15 mg/g = 6.7 g/day
体重50 kgの人が1日あたり6.7 gを超えて上記コロッケを食べると、マラチオンを100 mgを超えて摂取することとなり、健康に影響を生じる可能性がある


#3:加工食品中の残留農薬分析法に関する研究

◯厚生労働科学研究費補助金:食品の安全確保推進研究事業、平成20-23年度
◯文部科学省科学研究費補助金:基盤研究C, 課題番号: 21590677、平成21-23年度
◯投稿論文
岡本ら, 食品衛生学雑誌, 50, 10-15 (2009).
北川ら, 食品衛生学雑誌, 50, 198-207 (2009).
北川ら, 食品衛生学雑誌, 50, 243-252 (2009).
福井ら, 食品衛生学雑誌, 53, 183-193 (2012).
福井ら, 食品衛生学雑誌, 54, 392-396 (2013).
福井ら, 食品衛生学雑誌, 54, 426-433 (2013).

(食品化学課 吉光真人)


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