大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第131号− 2014年7月31日発行


麻疹・風疹患者発生状況とワクチン接種の重要性について


 1.麻疹と麻疹患者発生状況について
 麻疹(はしか)は、麻疹ウイルス(Measles Virus)によって引き起こされる発疹性疾患で、感染した場合、高熱、結膜炎などの症状や全身性の発疹が認められます。また、麻疹ウイルス感染者10万人あたり1人の割合で5〜10年の潜伏期間を経て中枢神経症状を主徴とする亜急性硬化性全脳炎(Subacute Sclerosing Panencephalitis:SSPE)を発症することが知られています。SSPEは治療法が確立されておらず予後不良の疾患で難病に指定されています。世界保健機関(World Health Organization:WHO)は、麻疹ウイルスの非常に強い伝播力と病原性から、全世界的に麻疹を排除する計画を進めています。日本においても、2008年1月に「麻しんに関する特定感染症予防指針」が施行され、2012年度までの麻疹排除を目指して取り組んできました。現在も予防接種率の向上や感染拡大防止に取り組んでおり、国内での麻疹患者の発生は年々減少傾向にあります。しかし、大阪府内において2014年は26週までの間に37人の麻疹患者が報告されています。これらの患者は、主に海外で麻疹ウイルスに感染し日本で発症した症例(いわゆる輸入事例)とその二次感染事例であり、患者の殆どはワクチン接種歴が無い方で占められています。近畿二府四県の人口百万人あたりの麻疹患者報告数は、大阪府4.2、京都府8.3、兵庫県2.1、滋賀県1.4、奈良県0.7、和歌山県25.9であり(2014年26週現在) 、本年は近畿地方においても患者数の増加が認められます。

 2.風疹と風疹患者発生状況について
 風疹(三日ばしか)は、風疹ウイルス(Rubella virus)によって引き起こされる発熱、発疹、リンパ節腫脹を主徴とする熱性発疹性疾患です。通常、感染しても15〜30%は不顕性に経過し症状も比較的軽度な疾患ですが、妊娠初期の妊婦に感染すると胎児は高い確率で心奇形・難聴・白内障を主徴とする先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrome : CRS)を発症します。日本国内では、2012年2,386人、2013年14,357人の風疹患者が報告され、風疹が全数把握疾患になった2008年以来最大の流行を記録しました。この流行を反映し2012年から2014年12週までの間に44人のCRSの発生が報告されました。2013年は大阪府内において3,198人の患者が報告され、人口百万人当たり361人と人口比で全国一位の患者数を記録しました。患者の殆どは麻疹と同様にワクチン接種歴が不明、または無い方でした。この流行を受け2014年4月に「風しんに関する特定予防指針」が施行され、早期にCRSの発生をなくすとともに、2020年度までに風疹の排除を達成するという目標を定めました。2014年の日本国内における風疹報告患者数は228人と低いレベルで推移しています(2014年第26週現在)。

 3.麻疹・風疹の有効な予防策について
 麻疹や風疹の有効な予防策はワクチン接種です。現在、麻疹と風疹のワクチンは2回接種することが推奨されています。日本では麻疹・風疹混合ワクチンが定期接種に導入されており1歳から2歳までの間と小学校入学前年の2回接種することになっています。その理由として、1回接種のみの場合、免疫がつかないことが数パーセントの割合で存在すること、時間経過とともに免疫が減弱する可能性が指摘されているからです。実際に麻疹や風疹の症例を精査すると、1回のみのワクチン接種者も含まれており、このことは2回のワクチン接種の必要性を示唆しています。出生した年代によりワクチン接種制度が異なり、ワクチンを接種していない方や1回しかワクチンを接種していない方がいます(表1)。2012年から2013年の風疹流行では妊婦の配偶者になり得る可能性の高い30〜40歳代の男性に患者が集中していました。特に、この世代は風疹ワクチンを接種しておらず自然感染も受けていない方が多い為、感染感受性の高い人が多い世代になります。抗体価が無いまたは低い方はワクチンを接種することが望まれます。



 


 現在、大阪府においては風疹抗体検査及び市町村補助事業を実施しています。抗体価は無料で検査することができ、検査の結果、抗体価が低いと判明し予防接種を受ける際は、市町村から予防接種費用の助成を受けることが出来ますので積極的にご活用下さい。詳しくは、大阪府ホームページの「先天性風しん症候群対策(抗体検査・市町村補助)について」(http://www.pref.osaka.lg.jp/chikikansen/kansen/koutaikensa.html)をご覧ください。

 麻疹・風疹の抗体保有率を高めて日本から麻疹・風疹の排除を目指しましょう!


(ウイルス課 上林大起)