大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第135号− 2014年11月30日発行


空間除菌グッズの健康被害事例と行政措置命令


 平成21年から平成22年にかけ新型インフルエンザの世界的な流行がありました。それ以降、従来から励行されてきたマスクやうがい・手洗いだけでなく、予防を目的としたグッズが種々開発され市場に出回るようになりました。その中で、二酸化塩素(ClO2)を利用した『部屋に置いたり首にかけたりするだけで「空間除菌できる」』とうたわれている17社の25商品について、『宣伝には根拠が無く、景品表示法違反(優良誤認)にあたる』として、平成26年3月27日、消費者庁が措置命令(「二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうするグッズ販売業者17社に対する景品表示法に基づく措置命令について」)を出し1)、事業者は自主回収を行うこととなりました。
 平成25年2月には、首からぶら下げるタイプの携帯型空間除菌剤が原因で、乳幼児が化学熱傷*を負う重大事故が発生し、消費者庁は平成25年2月18日付けで使用を中止するよう注意喚起しました2)。同年2月22日には、厚労省からも報道発表がされました3)。同じ製品で、化学熱傷を発症する事例が相次いで報告されたため(平成25年5月24日現在115件の報告)、製品の輸入販売業者は消費者庁と厚労省の要請により、販売済み製品の自主回収を行い、販売の中止や注意喚起を行うなどの対処を行いました。
 平成25年の冬に流通した製品の大部分は、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)が主成分で、酸(クエン酸、シュウ酸)と反応して発生した二酸化塩素が除菌効果を示すものでしたが(図1)、重大事故の原因となった製品には、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、クエン酸、シュウ酸、硫酸塩等を含むと表示されていました。当初、事故の原因は、製品を長時間ポケットに入れたままにするなど、必要以上に身体に密着させて使用したため、薬剤タブレット中に含まれる主に塩素系成分が汗に溶解し、塩素の発生が加速された、あるいは、クエン酸、シュウ酸が汗に溶解した際に発生する酸などが原因で化学熱傷がおこったと推測されていました4)。しかし、当該製品の成分について国の研究機関が詳しく調べた結果、表示されていた次亜塩素酸ナトリウムやクエン酸、シュウ酸は検出されず、表示にない亜塩素酸およびイソシアヌル酸が検出され、成分表示にも疑義が認められました5)。その後、国民生活センターが健康被害の原因となった製品を含む8銘柄について安全性(皮膚刺激性)試験を実施したところ、自主回収となった銘柄は「強い」、その他の6銘柄中3銘柄は「中程度」の皮膚刺激性が確認されました6,7)。そのため、事故は当該製品固有の問題によって発生したと結論づけられました。




 



 この製品以外にも類似の製品2種で健康被害が発生し、回収が行われました8)
 今年もインフルエンザのシーズンを前に、予防接種だけでなく様々な予防策を講じられると思います。ウイルスや菌の除去を目的とした製品は、塩素系薬剤やその他の抗菌剤が使用されていることがほとんどですが、塩素系薬剤は濃度が高い場合皮膚や気道粘膜などに直接強い刺激を与え、様々な健康被害を発症します。さらに、その高い反応性によって、他の成分と反応して新たな毒性物質が生成し、健康被害を引き起こす恐れもあり注意が必要です。その他の抗菌剤についても、アレルギーなどの健康被害事例が過去に多数発生しています。
 販売者が、設計段階において製品の有効性および安全性の検討を十分行うこと、設計通りの製品を輸入・製造および販売することはもちろんですが、消費者も製品に記載されている製品情報(表示)に注意を払い、使用方法を守るとともに、異常を感じた場合はすぐに医療機関等に相談することが大切です。また、情報提供されているサイトをこまめにチェックすることも必要でしょう。
 重篤な製品事故発生時は経済産業省や厚労省、消費者庁のウェブサイト等で公表されますし、重篤でない事故などについては独立行政法人製品評価技術基盤機構(nite)のウェブサイト9)で情報提供されています。


*化学熱傷
 化学熱傷とは化学物質による皮膚・粘膜の損傷です。多くは化学物質そのものによる細胞の障害や、二次的に生じる発熱作用などによって局所の炎症や組織壊死が引き起こされます。(消費者庁報道発表資料より引用)

参考文献等
 1)http://www.caa.go.jp/representation/pdf/140327premiums_2.pdf
 2)http://www.caa.go.jp/safety/pdf/130218kouhyou_1.pdf
 3)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002vt2p.html
 4)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002vt2p-att/2r9852000002vt74.pdf
 5)伊佐間和郎、三友優花、河上強志、五十嵐良明:携帯型空間除菌剤によって化学熱傷を起こす事故について,第50回全化協要旨集,250-251,2013
 6)http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20130430_1.html
 7)http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20130430_1.pdf
 8)http://www.caa.go.jp/safety/pdf/130530kouhyou_4.pdf
 9)http://www.jiko.nite.go.jp/

(生活環境課 味村真弓)


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