大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第138号− 2015年2月28日発行


魚介類に含まれる水銀について


 我が国は、世界有数の魚食大国です。平成25年の国民健康・栄養調査の食品群別摂取量(20歳以上、総数)において、日本人の一日当たりの魚介類摂取量は平均78.8 g、肉類摂取量は平均86.8 gです。魚介類と肉類の摂取量の経年推移をみると、平成18年に、初めて肉類が魚介類を上回りましたが、魚介類は、日本人の食卓になくてはならないものになっています。
 厚生労働省は、水俣病*1の原因物質がメチル水銀であることが特定されたことにより、水銀汚染された魚介類が市場に出回ることがないように、1973年7月に魚介類の暫定的規制値(総水銀0.4 ppm、そのうちメチル水銀0.3 ppm(水銀として))を定めました。そして、規制値を超えるものは、販売をやめるなどの自主規制を行うこととしました。
 大阪府立公衆衛生研究所では、魚介類に含まれる総水銀濃度を検査しています。過去3年間において分析された約160検体中、暫定的規制値を超える検体は確認されませんでした。
 また、メチル水銀の分析方法については、魚種により抽出率が違うことや発がん性のある試薬の使用、管理が煩雑な分析機器(電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ:ECD/GC)を使用することが問題視されてきました。当所では、これらの点を改善した精度の高いガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)を使用する分析法で検査できるように準備をすすめています。


 魚介類を通じた水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告(社会生活に支障があるような重篤なものではありません。)*2があることから、平成15年6月、国は妊婦を対象に魚介類の摂食と水銀に関する注意事項を公表しました。また、平成17年11月には、国際的な水銀の暫定耐用量が引き下げられたことなどから注意事項の見直しが行われ、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」が公表されました。さらに平成22年6月9日に注意事項の見直しが検討されました。その結果、厚生労働省によって表1*2が示されました。



表1.妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂食量(筋肉)の目安

 

 今回の注意事項は、妊娠している方または妊娠している可能性のある方が対象です。我が国における食品を通じた平均水銀摂取量は、食品安全委員会が公表した妊婦を対象とした耐容量の6割程度であり、影響が懸念されるような状況ではありません。
 魚介類の摂取は人の健康にとって有益であり、この注意事項が魚介類の摂取減少につながらないように、水銀濃度が高い魚介類ばかり多量に食べることを避け、水銀摂取量を減らしつつ、魚食のメリットを活かしていく必要があるのではないでしょうか。

*1:工場排水から有機水銀が熊本県八代海沿岸地域に流れ込み、住民が有機水銀で汚染された魚介類を長期間食べ続けた結果、主に脳や神経が侵され、四肢末端の感覚障害や運動失調などを主な症状とした公害病。
*2:音を聞いた場合の反応が1/1000秒以下のレベルで遅れるようになるなど。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf

(食品化学課 柿本幸子)


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