大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第141号− 2015年5月31日発行


大阪府における淋菌の抗菌薬感受性調査


 淋菌(りんきん、Neisseria gonorrhoeae)は性病の一つである「淋病(りんびょう)」の原因となる病原体で、主に男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎を起こします。最近では性行為の多様化を反映して、咽頭や直腸感染など性器外の感染例も増加しています。近年、この淋菌の抗菌薬耐性化が進み、治療に使える抗菌薬(抗生物質)の選択肢が減ってきています。以前は効果があったペニシリンや経口第三世代セファロスポリン剤(セフィキシム等)では治療効果が期待できなくなってきているのです。





 「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」*では、淋菌性の尿道炎・子宮頸管炎や咽頭感染症の治療薬として、セフトリアキソンの単回投与が推奨されています。しかし、京都市内で2009年に確認された様なセフトリアキソン高度耐性淋菌が流行すれば、淋菌感染症の治療が極めて困難になる可能性があります。
 そこで大阪府立公衆衛生研究所では、平成23年度(2011年4月)より府内の診療所医師、国立感染症研究所と共同で、大阪府内で流行する淋菌の抗菌薬感受性の調査を始めました。
 これまでの4年間で合計672株(2011年:104株、2012年:215株、2013年:205株、2014年:148株)の淋菌を淋菌感染症の患者から分離し、それらの淋菌について下記の6種類の抗菌薬に対する感受性を調べました。

スペクチノマイシン(SPCM:トロビシン
セフトリアキソン(CTRX:ロセフィンなど)
アジスロマイシン(AZM:ジスロマックなど)
セフィキシム(CFIX:セフスパンなど)
シプロフロキサシン(CPFX:シプロキサンなど)
ベンジルペニシリン(PCG:ペニシリンG






 その結果を図に示しています。セフトリアキソン(CTRX)の耐性株はまだ出現していませんが感受性率は低下傾向にあり、同じ系統の抗菌薬であるセフィキシム(CFIX)の感受性率もかなり低下していることから、今後CTRX耐性株が出現してくることが懸念される結果となっています。また、別の系統の抗菌薬であるアジスロマイシン(AZM)の感受性率が低下傾向にあることなども明らかになってきました。
 一方で、スペクチノマイシン(SPCM)は高い感受性率を保っていますが、この抗菌薬は咽頭感染には有効でないと考えられているため、淋菌(淋病)の治療は前述のCTRXへの依存度が高いのが現状です。全体的にみると治療薬の選択肢が少なくなってきていると言えます。




 当所では今後も府民のみなさんの健康を守るため、淋菌の抗菌薬感受性調査を続けていく予定です。

 *日本感染症学会・日本化学療法学会の編集による感染症の治療ガイド

(ウイルス課 川畑拓也)


▲ページの先頭へ