大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第143号− 2015年7月31日発行


腸管出血性大腸菌感染症は減っていません


 腸管出血性大腸菌(EHEC)はベロ毒素と呼ばれる毒素を産生する大腸菌で、ヒトの大腸で増殖して下痢、腹痛、血便などを引き起こします。有症者のうち数%(昨年は3.6%)は、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの合併症に進展して死に至ることもありますが、一方で、無症状や軽い下痢ですむ症例もあり、その病態は様々です。
 EHEC感染症は、診断した医師の届出が義務づけられている全数把握疾患で、毎年4,000例前後の届出があります(1)。2011年に5名もの死亡者を出す飲食チェーン店食中毒事例が発生したことをきっかけに、2011年10月には生食用食肉の規格基準が設定され、2012年7月には牛レバーの生食用としての提供が禁止されましたが、それ以降も感染者数は減少していません。昨年は福島県など11都県で馬刺しによる食中毒が、静岡市では露天の冷やしきゅうりによる食中毒が発生しました。このほか、保育所での集団感染事例も毎年多数報告されています。
 日本で分離されるEHECの菌体抗原(O抗原)タイプは毎年30種類以上ありますが、約6〜7割はO157、約2割がO26で、O103、O111、O121、O145を加えた6タイプで全体の約95%を占めます。図1は2010年から2014年の病原微生物検出情報の集計からO抗原タイプごとの臨床症状をグラフにしたものです。O157では血便患者が多く、O26やO103では無症状保菌者が多いことがわかります。同時期にEHECが検出されたHUS患者150例のうちO157は109例、O26は5例だったことからも、O157に比べO26では重症例が少ないと言えます。一方で、O26は保育所での集団発生の原因となることが多く、昨年までの5年間に発生した集団事例(菌分離陽性者10名以上)のうち、飲食店や旅館で発生した事例では約7割がO157によるものでしたが、保育所・幼稚園で発生した事例は約半数がO26によるものでした(図2)。症状が軽いため医療機関を受診しないまま登園を続け、気づいた時には多くの園児やその家族が感染していたという報告が後を絶ちません。



図1 EHEC検出例のO抗原タイプ別臨床症状 2010〜2014年
病原微生物検出情報による。



図2 菌分離陽性者10名以上の事例 2010〜2014年
病原微生物検出情報による。
2タイプ分離された場合は分離数の多いタイプで集計し、
3タイプ分離された場合はその他とした。


 保育所でのEHEC集団事例では終息(感染者全員がEHEC陰性であることが確認される)までに2か月以上かかることも珍しくありません。EHECは微量でも感染が成立するため、排便後の手洗いが大切なのはもちろんですが、ドアノブ、蛇口、おもちゃなどの消毒や簡易プールの衛生管理も徹底する必要があります。

(1) 病原微生物検出情報
 http://www.nih.go.jp/niid/ja/ehec/552-idsc/iasr-topic/5659-tpc423-j.html

関連情報
 メルマガ 第93号
 http://www.iph.pref.osaka.jp/merumaga/back/93-1.html
 大阪府感染症情報センター ものしり講座(11)
 http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/monosiri/11/11.html

(細菌課 勢戸和子)


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