大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第145号− 2015年9月30日発行


感染症を媒介する身近な蚊


 蚊やダニなどの虫が媒介する感染症により、世界で毎年100万人以上の人が亡くなっています。日本人がアジアやアフリカなど熱帯・亜熱帯地域の流行地でマラリアなどの病気に感染し、国内で発症する事例が近年増加傾向にありましたが、平成26年8月には、日本国内で蚊に刺されたことによりデング熱を発症した事例がほぼ70年ぶりに報告されました。最終的な国内感染事例は162症例、その内約8割は9月に報告されました[1]。改めて虫が媒介する感染症について予備知識をもち、注意する必要があります。

 蚊のくらし
 蚊が卵から成虫になるまで、好条件下では2週間くらいです。そして、5月から10月下旬までに何度も発生を繰り返します。幼虫(ボウフラ)は水中で有機物を食べて育ちます。メス成虫は、卵を作るための栄養を得るために、人、鳥、動物などから吸血します。一度に1〜2 mgの血を吸った後に産卵し、それを何度も繰り返して約1ヵ月間生きます。一般にヤブカと呼んでいる、背中に白い条が1本ある黒い蚊はヒトスジシマカです。昼間に植物の茂みなどで待ち伏せして吸血し、デング熱やチクングニア熱の原因ウイルスを媒介します。竹の切株、お墓の水受け、空き缶に溜まったわずかな水から発生します。赤茶色の蚊はアカイエカです。家の中に入ってきて、夜間に吸血します。排水溝や雨水枡などの水たまりから発生し、ウエストナイル熱が侵入した場合、重要な媒介者となります。この他にも、水田などから発生するコガタアカイエカ(日本脳炎を媒介)とシナハマダラカ(マラリアを媒介)にも気をつける必要があります。他にも蚊が媒介する感染症はたくさんあります。代表的なものを表に示しました。




表. 蚊が媒介する感染症



 デング熱
 デング熱では、ヒトスジシマカなどがデングウイルスをもつヒトを吸血すると、蚊の体内でウイルスが増幅されます。そして、蚊が別のヒトを吸血するとウイルスがヒトの体内に入り、感染が成立すると3〜7日の潜伏期間後に突然40度くらいの高熱を出し、頭や目の奥、体の節々が激しく痛むデング熱を発症します。発症3、4日後に胸部、体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面に広がります。屋外では肌の露出を避け、虫除けスプレーなどを適切に利用して蚊に刺されないようにしましょう。なお、越冬した卵から羽化した蚊から感染する可能性は低いと考えられています[2]

 大阪市の防除と対策
 大阪市立環境科学研究所では、大阪市保健所と健康局生活衛生課と連携して2006年から市内10ヶ所の緑地で、トラップによる蚊の捕獲調査とデング熱等のウイルスの遺伝子検査を行っています。平成26年度はヒトスジシマカ、アカイエカ等が合計約2800個体捕獲されました。これらの蚊から、デング熱、ウエストナイル熱などの原因となるウイルスは見つかっていません。蚊の防除には、ボウフラが発生する小さな水域を減らすことが重要です。薬剤による防除も行われているところですが、同じ薬剤を続けて使用すると蚊はその薬剤に対して強くなります(薬剤抵抗性)。薬剤が効きにくい性質をもつ個体が生き残るからです。そのため、環境科学研究所では蚊の薬剤抵抗性を調査しています。人に対する毒性が比較的弱いピレスロイド系や、昆虫以外の生物に対して安全性の高い昆虫成長阻害剤の、蚊に対する殺虫効果を試験して効果の高い薬剤を提案してきました。大阪市では、その調査結果を参考にして対応するようにしています。

[1] http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever.html
[2] http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/692-disease-based/ta/dengue/idsc/iasr-topic/5461-tpc421-j.html




図. 大阪市内公園における蚊の捕獲調査結果 (26年度)


 公園により蚊の捕集装置の設置場所が限られるため、本調査における捕獲数が公園内の生息数のすべてを反映しているとは限りません。

(大阪市立環境科学研究所 調査研究課 微生物保健グループ 山ア一夫)


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