大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第146号− 2015年10月31日発行


梅毒は昔の病気ではありません。


 梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum, 以下T. pallidum)というらせん状の細菌(スピロヘータ)が病原体です。江戸時代には大流行し、鼻の軟骨炎のため鼻が削げたり、有効な治療薬がなかったために死亡する人も多かったと言われています。1940年代のペニシリン普及以降、発症は劇的に減少しましたが、日本でも2010年以降、患者数が増加傾向にある事が報告されています(図)。2014年は男性では同性間性的接触での感染が45%を占めていました。大阪府では異性間での感染も増加しており、特に2015年は女性の患者届出数が急増しており1)、大阪府では5月20日に報道発表を行い、注意喚起したところです。




図. 梅毒患者の病期別報告数 (2008〜2014)


 梅毒の感染経路は性行為です。生殖器、口、肛門から感染し、皮膚や粘膜の微細な傷口から侵入し、血流にのり全身に広がります。早期梅毒の状態の相手とコンドームを使わない無防備な性行為を1回行う事で感染する確率は30%と言われています。妊娠中や出産時の母子感染による胎児の死亡や先天性梅毒もあります。梅毒の症状は第1期(早期顕症)、第2期(早期顕症)、潜伏期(無症候)、第3期(晩期顕症)、第4期(晩期顕症)にわけられます。第1期は感染後3週間から3ヶ月の期間で、T. pallidumが侵入した部位に潰瘍(硬性下疳)ができます。痛みがなく女性の約半数、男性の3人に1人は潰瘍に気づきません。第2期は感染後3ヶ月から3年の期間で、全身のリンパ節が腫れたり、発熱、倦怠感、食欲減退、関節痛などの症状がでたり、身体や手のひらや足の裏にバラの花びらのような色をしたバラ疹と呼ばれる特徴的な発疹が現れる事もあります。第2期のあと、症状のない期間が数年続きます。潜伏期には感染力はありませんが、菌は存在しており、検査を受ければ陽性である事が分かります。第3期は感染後3〜10年の期間です。皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生します。第4期はそれまでに適切な治療をするため、現在ではあまり見られなくなりましたが、未治療のままだと、感染後10年以降で多くの臓器に腫瘍が発生したり、心臓、脳、脊髄、神経がおかされ、最後は死亡してしまいます。
 梅毒にかかっている人は、別の性感染症にもかかっている事が多く、私たちの行った疫学調査においても、HIV感染者の約半数にT. pallidumの感染歴がありました2)
 検査は公的機関であれば無料、かつ匿名で受ける事もできます。大阪検査相談・啓発・支援センター「chotCASTなんば」では、火曜日と木曜日の18:00〜20:00の時間帯に無料かつ匿名でHIV・梅毒・B型肝炎の検査を行っています。大阪府内の保健所でもHIV・梅毒・クラミジアの検査を行っています。実施曜日や時間などは施設により異なりますので、ホームページ3)でご確認されてから検査に行かれる事をおすすめします。梅毒に罹患していてもペニシリン系の抗生物質の投与で治癒します。治療期間も早く始めれば短くてすみます。ゴム腫が体中にできたり、神経がおかされてからでは手遅れになってしまいます。また、母子感染では赤ちゃんに重篤な影響が出ます。予防はもちろん1番大事ですが、早めの検査での早期発見、早期治療が自分とパートナーを守るために重要です。

(1) http://www.pref.osaka.lg.jp/chikikansen/aids/baidoku.html
(2) http://www.iph.pref.osaka.jp/merumaga/back/93-2.html
(3) http://www.pref.osaka.lg.jp/chikikansen/aids/jouhou.html#chu1


(ウイルス課 小島洋子)


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