大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第147号− 2015年11月30日発行


加工食品中の残留農薬検査への取り組み


 【農薬分析における加工食品の特徴】
平成20年初頭の有機リン系農薬が混入した中国製冷凍餃子による健康被害の発生を契機に、加工食品中の農薬検査の需要が高まりました。また、平成25年12月には、国内で冷凍食品へのマラチオン(有機リン系農薬のひとつ)混入事件が発生し、加工食品中の農薬検査の重要性が再認識されました。農薬検査において、加工食品は、以下の2点で野菜・果実などの農産物と大きく異なり、特別な対応が求められます。

@脂質など分析の支障となる成分を多く含む
A複数の原材料から構成される

当所は、@については、検査過程において脂質などを除去する工程を組み込んだ分析法を開発することで対応してきました【公衛研ニュース第37号, メールマガジン第61, 81, 89号参照】。実際に開発した分析法は、上記のマラチオン混入事件の際に役立ちました【メールマガジン第128号参照】。

今回は、Aの「複数の原材料から構成される」ことについて記したいと思います。これは、検査結果の判定に関わる問題です。混入事件のような緊急時には大きな問題になりませんが、日常的な加工食品の農薬検査では課題となります。

【原材料が複数あることで起きる問題】
加工食品には、オレンジジュースやレーズンなどの限られた場合を除いて、すべての農薬に対して0.01 ppmの基準値が食品衛生法(以下、法)で定められています。一方で、加工食品全体を分析して、ある農薬が0.01 ppmを超えて検出されても、その農薬が法で定められている基準値以内の原材料に由来することが判明すれば、法に違反しないことが示されています

例えば3種類の野菜A〜Cを原料とする漬物を例に記します。加工食品である漬物全体として分析した結果、ある農薬が0.01 ppmを超えて検出された場合、直ちに不適合と判断するのではなく、原材料の野菜A〜Cを分別して、個々に分析し、それぞれの基準値と照らし合わせます。仮に漬物から検出された農薬が野菜Aに由来することが判明した場合、野菜A単独での農薬濃度を明らかにし、その値が野菜Aに定められた基準値を超えていなければ、漬物全体としても不適合にはならないという判断になります(図参照)。




図 加工食品の残留農薬基準適合性判定の例


すなわち、加工食品の農薬検査において、法に定められる基準値への適合性を正しく判定するためには、原則、以下の3段階が必要です。1)加工食品全体を検査する、2)左記1)で0.01 ppmを超える農薬を検出した場合、原材料を分別する、3)分別した原材料ごとに再検査して基準値への適合性を判定する。

このように加工食品の日常的な検査には複雑なプロセスがあり、適切に実施するためにはトレーニングが必要です。当所では、加工食品の農薬検査に対応するため、他の地方衛生研究所と共同で、検査を想定したトレーニングを行っています。

※厚生労働省 ポジティブリスト制度についてのパンフレット
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/index.html

(食品化学課  福井直樹)


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