大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第147号− 2015年11月30日発行


リステリアについて

 リステリア症は、髄膜炎、敗血症、脳炎などの重症例が多く、特に妊婦は感染しやすく流産や死産の原因となる致死率が30%を超える恐ろしい感染症です。原因となるのはListeria monocytogenes(リステリア:LM) という細菌で、普段は土壌などの環境中にいますが、一度食材や食品加工場の器具などに付着するとなかなか取り除くのが難しい非常に頑強な菌です。原因食品は、食肉製品やナチュラルチーズ、魚介類加工品、市販サラダなど、購入後に加熱なしで食するいわゆるReady-To-Eat食品 (RTE食品)です。健康な人の場合は大量の菌を摂取しない限りほぼ発病しませんが、幼児や老人、妊婦などの免疫力の弱い方は、これらの食品に注意が必要です。また、この菌は冷蔵庫内でもゆっくりですが増殖できるため注意が必要です。昨年11月28日に生ハムなどの非加熱食肉製品及びナチュラルチーズ (ソフト及びセミハードに限る。) の成分規格にLMの基準値 (100 cfu/g) が設定されました。以前はナチュラルチーズのみに基準値が設定されていましたが、生ハムにも設定の対象が広がり、さらに検査法も従来法よりも検出感度の高いものに変わりました。今後も我が国のRTE食品の監視は強化される方向にあります。
 現在、当所では食品から分離したLMの病原性について研究しています。LMがヒトの腸管内で感染する時に必要な病原因子にインターナリンAがあります (図参照)。




図.ヒト腸管上皮細胞へのLMの侵入


 食品から分離したLMでは、遺伝子の変異(未成熟終止コドン)により短くなったインターナリンAが高率に見つかります。インターナリンAに未成熟終止コドンがあるとヒトに感染できないとされ、この変異はリステリア症患者から分離したLMではほとんど見つかりません。そのため、この変異は病原性に深く関与するとされています。当所の食品由来株114株についてインターナリンAの未成熟終止コドン保有率を調査したところ、25.4%でした(表参照)。



表.食品由来LMのインターナリンAにおける未成熟終止コドン保有状況


 これは欧米の報告の35%〜48.5%より低く、我が国のRET食品を汚染しているLMは他国より病原性が高い可能性があります。今後も、LMの病原性について研究し、高い病原性を持つ菌がRTE食品を汚染していないか調査を継続していきます。

(細菌課 神吉政史)


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