大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第148号− 2015年12月31日発行


ごみ処理における課題への対応 〜『燃やして埋める』処理を続けるために〜

 日々の生活によって発生したごみはどのように処理されているのでしょうか?
 日本では、燃やして埋める方法による処理が一般的に行われています。どのような経緯でこの方法が始まり、また時代の変化により発生した課題に対しどのような方法で対処してきたのでしょうか?昭和31年から平成12年まで、年度ごとに発行された厚生白書の記述(各パラグラフの先頭の囲みに引用しています)をもとに、ごみ処理における課題への対応の歴史をたどります。



衛生的な処理の始まりと課題

・ごみ処理の不徹底は、はえ、悪臭の発生源となるなど、国民の生活環境はいたるところ汚染され、健康に悪影響をもたらしている。[昭和31年度版]
・清掃事業の対象の一であるごみについても、生活水準の向上につれ次第に排出量が増加してきており、これに対処する処理施設の整備が伴わず、これがため随所に不潔なごみの山を現出し、悪臭、はえの発生はもとより、著しく都市環境を損傷している。(一部略)、最も衛生的な処分方法である焼却は、31.4%にすぎない状況である。[昭和33年度版]
・各世帯から排出されるごみの量は、国民の生活水準の向上に伴って増加する傾向にあり、以前は1人1日当たり350グラムとされていたが、今では500グラム強となっており(以下略)[昭和35年度版]
・従来大量に行なわれてきた埋立処分についても適地の獲得が困難となるなど、ごみ処理をめぐる事情はきわめてきびしいものがある。[昭和40年度版]
・ごみの処理は、現在焼却による減量化と安定化、無害化を第1の目標として実施している。[昭和44年度版]

 ごみ処理は公衆衛生における主要な一部門です。このため、当初は『焼却』による処理が推進されました。焼却により、腐敗するものは単純かつ確実に分解され、健康への影響が小さくなります。しかし、早くからごみ量の急激な増大が課題となっていました。また、ごみや燃やした後の灰を『埋める』ための場所の確保も重要な課題です。こうしたことから、ごみを焼却する目的に公衆衛生的な課題とは別に「減量化」が加わりました。ごみは、焼却により重量や体積が小さくなります。



焼却には なじまないごみ

・特に近年耐久消費財を中心とした大型家庭廃棄物(いわゆる粗大ごみ)の増加が顕著となってきている。[昭和44年度版]
・近年、ごみの排出量の増加にならんで、ごみの質の変化が問題となっている。[昭和45年度版]
・プラスチックは、焼却すると炉を損傷するとともに有毒ガスが発生し、また、埋立を行なっても自然に還元されないなど現在、ごみの最も一般的な処理方法である焼却、埋立てのいずれにも、技術の改善が行なわれない限り、不適当な物質である。[昭和45年度版]
・プラスチックは通常のセルロース系ごみと比較すると数倍から10倍の燃焼発熱量を有するため、炉内温度が異常な高温となり、あるいは腐食性のガスを発生して、炉材を損傷するものもあり(以下略)。[昭和46年度版]
・事業者による回収の協力を要請して分別収集を行ない、ごみ中におけるプラスチック含有率を抑えていくことが必要であろう。[昭和46年度版]
・粗大ごみは大型で、不焼物を多く含んでいるので、従来からの処理処分方法にはなじまないため破砕、圧縮等の粗大ごみ処理施設の整備を早急に推進する必要に迫られている。[昭和46年度版]

 生活様式の変化に伴い、プラスチックや耐久消費財などが増加するようになりました。引用の通り、技術的な対応をしていない場合には、これらは単純な焼却では処理が困難となります。そのため、通常のごみとは、別の方法での収集や処理をすることが必要となってきました。
 現在では、プラスチックについて、大阪市のように容器包装プラスチック以外のものを「普通ごみ」で収集し焼却する自治体や、「不燃ごみ」,「燃えないごみ」,「燃やさないごみ」,「焼却不適ごみ」などで収集し埋め立てしている場合があります。粗大ごみについて、大阪市のように普通ごみとは別に収集し破砕処理を行っている自治体や、「燃えないごみ」などで収集している場合があります。



ごみの有効利用


・40万km2に満たない狭小な国土のうち70数%が生活の場としては不適な山林原野であり、巨大な産業構造を支えている資源の大部分を外国に依存しているという我が国の特殊性からみて、廃棄物処理技術の開発による減量化対策及び資源回収技術の開発による活用化対策の確立は、今後強力に推進すべき二大命題といえよう。[昭和48年度版]
・ごみ焼却場によって余熱を利用する方法、コンポスティングあるいは分別収荷システム及び分別された再生利用可能なごみの再資源化など焼却処理以外の処理方法についても検討を加えていく必要がある。[昭和50年度版]
・分別収集,集団回収,焼却余熱の利用等の方策を地域の実情に応じ適宜導入することにより、廃棄物の減量化、資源化及びエネルギー利用の促進を図る。[昭和57年度版]
・ごみの減量・再資源化は廃棄物の適正処理の観点のみならず、限りある資源の有効利用、地球環境の保全の観点からも重要である。市町村においては資源ごみの分別収集、粗大ごみ等からの資源の選別回収及びごみ焼却余熱の利用等が従来より行われてきたところであるが(以下略)。[平成元年度版]

 減量化の観点では、ごみが発生しないような生活を心がけることは重要です。毎日の生活の中では不要なものが発生することは仕方がありません。しかし、個人にとっての価値がなくなっても、別の視点からみると有効に利用できる可能性があります。この場合は一定の量を集めないと、価値が発生しないことがあります。そのため、「資源ごみ」として分別し多くの量を収集することで、廃棄物の有効利用が着実に増えるようになりました。(注:"コンポスティング"とは、ごみを農地に還元するためにたい肥にする処理方法です)

 上述のように、ごみは当初、公衆衛生的な課題の解決に最も効果的な『燃やす』ことによる処理が必要とされていました。その後、@ごみ量の増大、A『埋める』場所の確保、B焼却になじまないごみ、Cごみからの資源回収、などの課題が発生するようになりました。そのため、粗大ごみ,燃えないごみ、資源ごみなどを分別することで、焼却できないものも適性に処理されるようになりました。合わせて分別により、ごみの有効利用や、焼却するごみや埋める灰の量を減らし処分場の長期使用を図ってきました。さまざまな改善により、このような循環型社会の基本となる発想が20世紀中に確立されました。循環型社会形成推進基本法が制定された平成12年以降、様々なものが分別され資源として有効利用されています。現在、1人1日当たりのごみ排出量は958グラム(平成25年度; 環境省調べ)となっていますが、衛生的な処理が必要なものは『燃やして埋める』処理が続けられています。





 本文で引用した厚生白書は、厚生労働省サイト(http://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/)にあります(平成27年11月30日確認)。複数の年度で同様の内容が記載されていた場合は、初出年度のもののみ引用しました。



(大阪市立環境科学研究所 調査研究課都市環境グループ  酒井 護)


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