大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第151号− 2016年3月31日発行


輸入食品の違反事例の実態は?


 2002年に輸入冷凍ほうれんそうや小松菜の残留農薬が基準値を超えた事例などから、輸入食品等の安全性に対して関心が高まり、2004年には食品衛生法が改正され、輸入食品等に対する規制が強化されています。そのような中、輸入相手国との貿易摩擦が生じるなど諸問題が顕在化しているのも事実です。しかし、日本の食料自給率はカロリーベースで39%しかなく、食料の多くを海外からの輸入品に頼っているのが現状です。 輸入業者の届出件数について見てみると、1965年では約9万5千件のところが、年々増加して1995年には100万件を超え、2010年以降は200万件を超えています。それに伴い、輸入重量については、1965年ではおよそ1300万トンのところ、2000年以降は3000万トンを超えています。
 このような状況のなか、厚生労働省では、輸入食品等(食品、添加物、器具、容器包装、乳幼児用おもちゃ)に対して食品衛生法に基づき、検疫所においてモニタリング検査、命令検査等を実施し、輸入時における監視指導を行っています。食品衛生法の違反事例(残留農薬の基準違反、異臭及びカビの発生、指定外添加物の検出、マイコトキシンの検出、大腸菌群の検出など)は月ごとに公開されており(*1)、今回、平成19年度から平成26年度までのすべての事例をまとめてみました。
 まず、国別でみてみますと(表1)、中国、アメリカからの輸入品で違反事例が多いのですが、輸入件数も多いため、違反率は高くないことが分かります。ガーナやエチオピアで違反率が高いのは、ガーナではチョコレートの原材料であるカカオ豆の残留農薬の違反が多いためで、エチオピアではコーヒー豆の残留農薬の違反が多いためでしたが、違反率は平成20〜21年度においてピークとなり、その後減少傾向にありました。



表1 平成19年度から平成26年度までの累計違反数および輸入届出件数


 違反した内容を見てみますと、農薬や動物用医薬品の基準違反、大腸菌群陽性、腐敗やカビの発生が全体の8割程度を占めています。農薬で基準違反となった成分について、平成19年度から平成26年度にかけて累計違反数上位20位までを見てみますと(表2)、除草剤として広く使用されている2,4-Dが全体のおよそ10%を占め、次いで殺菌剤のジフェノコナゾール、殺虫剤のクロルピリホス、イミダクロプリドで違反数が多いことが分かります。また、γ-BHCなど一部の農薬については国内においては使用が禁止されており、国内外での農薬使用基準の違いや登録農薬以外の不正使用により違反となるケースが見受けられました。



表2 平成19年度から平成26年度までの農薬別の累計違反数および全体に占める割合

 また、今年2月に署名式があった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に日本も加盟したことから(*2)、今後加盟国からの多種多様な食品等の輸入が増加することが予想されます。TPP加盟国からの輸入状況を見てみますと(表1)、アメリカ、オーストラリアに次いで、近年めざましく発展を遂げているベトナムからの輸入が多いことが分かります。また、TPP加盟国のなかで違反件数割合が高いのはベトナム、ペルー、カナダになります。ベトナムにおいて違反の多い項目は抗生物質などの動物用医薬品であり、また大腸菌群陽性による違反も多いことから、衛生面についてさらなる管理が求められます。ペルー、カナダについては、違反項目に目立った傾向はありませんが、ペルーでは日本において使用が認められていない酸化防止剤を含有した菓子などの加工食品、また、カナダではカビが発生した小麦や菜種などが違反となったケースがあり、それぞれの国の特色が表れていました。
 先述のとおり、今後TPP加盟国からの輸入品が増加することが想定されますが、検疫所のみならず大阪市立環境科学研究所においても、冷凍野菜、精米、大豆などの残留農薬、漬物、菓子類、チーズなどの加工食品の添加物、穀類の遺伝子組み換え、卵、乳などアレルギー物質、魚介類の残留放射能など、年間400件数以上の様々な輸入食品について検査を行い、市民の皆様の食への安心を提供してまいります。

参照
  *1 厚生労働省 違反事例速報
   http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/ihan/index.html
  *2 内閣官房 TPP政府対策本部
   http://www.cas.go.jp/jp/tpp/

(大阪市立環境科学研究所 調査研究課食品保健グループ  宮本 伊織)


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