大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第153号− 2016年5月31日発行


危険ドラッグ検査法改良の取り組み


 危険ドラッグについては以前よりかわら版@iphや公衛研ニュースでお伝えしていますが[1, 2, 3, 4, 5]、今回は危険ドラッグ検査法改良に関する取組みについてご紹介します。

 大阪府では、危険ドラッグ対策として、危険ドラッグの流通実態の把握と取り締まりを行うために、危険ドラッグ製品の買い上げ検査を平成23年度より実施してきました。危険ドラッグの分析においては、間違いのない結果を得るために、複数の分析機器を使用して検査を行っています。その中でも、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS、※1)は、様々な薬物を分けて確認する能力に優れている非常に重要な分析機器です。しかしながら、GC/MSにも弱点があります。GC/MSは、高い温度で薬物を気体にしてから分析する必要があることから、気化しにくい薬物や熱により分解してしまう薬物については見つけにくく、薬物の量が少ない場合には見落としてしまう危険があります。
 そこで、危険ドラッグ検査における薬物の見落としを防ぐために、GC/MSを用いて「少量の薬物でも見つけだすことができる分析法」の開発に取り組むこととしました。具体的な方法としては、誘導体化(※2)により、「気化しにくい薬物を気化しやすく」、「熱により分解してしまう薬物を分解しにくく」し、薬物を見つけやすくする方法について検討しました。

 今回は25C-NBOMeという薬物(図1、現在は麻薬として規制)を例にとってご紹介します。25C-NBOMeをそのまま分析した場合、25C-NBOMeをはっきりと確認することができませんでした(図2上段、矢印の位置に信号(山)があると検出)。一方、誘導体化(※3)したものを分析した場合、25C-NBOMeをはっきりと確認できました(図2 下段、矢印の位置に信号(山)あり)。誘導体化により、少量の場合でも25C-NBOMeを見つけやすくすることができました。この誘導体化の手法では、25C-NBOMeに類似した11種類の薬物についても、GC/MSで見つけやすくすることができています。
 危険ドラッグに配合される薬物は多くの種類があることから、今回対象とした薬物以外についても、誘導体化の手法を用いて、少量の薬物でも検出できるかを確認し、データの収集に努めるとともに、より良い分析法を開発していきたいと考えています。








(薬事指導課)


  [1] 大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph −第113号−
  [2] 公衛研ニュース 第49号
  [3] 公衛研ニュース 第52号
  [4] 大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph −第133号−
  [5] 大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph −第151号−


  ※1:ガスクロマトグラフィー/質量分析計:気化した薬物などを成分ごとに分離するガスクロマトグラフ部と分離した薬物の質量を測定して検出する質量分析部を組み合わせた分析機器。様々な薬物を分離して分析することができ、分析結果(質量など)から配合されている薬物を推定することができる。
  ※2:誘導体化:誘導体化試薬というものを薬物にくっつけること。これにより、薬物が揮発しやすくなったり、熱により分解しなくなったりする。
  ※3:今回のケースでは、よく使用されている「無水トリフルオロ酢酸」という誘導体化試薬を使用。

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