大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第155号− 2016年7月31日発行


ジカウイルス感染症 (ジカ熱)

 今年も蚊の季節がやってきました。2014年には東京の代々木公園を中心にデング熱が流行し、2015年にはブラジルでジカ熱が大流行し、世間を騒がせました。蚊は刺された後かゆいだけではなく、感染症を媒介する可能性があるという認識が広く浸透し、"夏の蚊対策"が求められています。ここでは、ジカウイルス感染症について解説します。


ジカウイルス感染症とは
 ジカウイルス感染症は感染蚊に刺されることによって感染する、蚊媒介感染症の一つです。感染症法上、全数把握疾患の四類感染症に指定され*、ジカウイルス感染症と先天性ジカウイルス感染症に分類されています。
 病原体は、フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスです。ジカウイルスに感染した患者を蚊が吸血すると、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が他者を吸血することでウイルスに感染させます。通常ヒトからヒトへ直接感染することはありませんが、輸血や性行為により感染することがあります。先天性ジカウイルス感染症は、母体から胎児への垂直感染によって生じます。
 潜伏期間は2〜13日で、その後、軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、発しん、結膜炎、疲労感、倦怠感などがあらわれます。一般的にデング熱より軽症といわれ、予後は比較的良好な感染症です。また、感染しても症状のでない不顕性感染が約8割とされています。ジカウイルス感染症に対する特別な治療法はありません。通常は症状が比較的軽く、症状に応じた対症療法が行われます。
 しかし、ジカウイルス感染症は神経症状(ギラン・バレー症候群等)の原因となる場合があります。また、妊娠中にジカウイルスに感染すると、胎児に小頭症等の先天性障害を来すことがあります(先天性ジカウイルス感染症)。

感染リスクのある地域
 ジカウイルス感染症がこれまで報告された地域は、アフリカ、中央・南アメリカ、アジア太平洋地域で、近年はブラジルを中心に主に中南米および周辺地域で流行が続いています(図、表)。これらの地域は他の蚊媒介感染症なども流行していますので、事前に渡航先にどのような感染リスクがあるか確認することが重要です。

図.ジカウイルス感染症のリスクのある地域(2016.6.30現在)
CDC http://www.cdc.gov/zika/geo/active-countries.html

予防について
 ジカウイルス感染症のワクチンはまだ開発中で実用化されていません。そのため、以下の点に注意して予防を行ってください。
・媒介蚊に対する予防
 流行地では、蚊に刺されないように注意が必要です。長袖、長ズボン、靴を着用し、蚊の忌避剤などを使用しましょう。特に妊婦及び妊娠の可能性がある方は、流行地への渡航・滞在を可能な限り控えることとされています。帰国後は、症状の有無に関わらず、国内でのウイルス拡散防止のため、少なくとも2週間程度は蚊に刺されないようにすることが重要です。
 また、普段から周囲の蚊の発生源になりそうな場所を減らし、身の回りの蚊を減らすように心掛けましょう。
・性交渉に伴う感染に対する予防
 流行地域から帰国した男性は、性行為を行う場合にコンドームを使用するか性行為を控えることが推奨されています(帰国後最低8週間、パートナーの妊娠期間中)。流行地域から帰国した女性は、帰国後8週間、妊娠を控えることが推奨されています。また、ジカウイルス感染症を発症した男性は、最低6ヶ月間コンドームを使用するか、性行為を控えてください。
・輸血を介した感染に対する予防
 輸血による感染伝播を予防するため、流行地より帰国後4週間程度は献血を自粛してください。

ジカウイルスの媒介蚊
 ジカウイルスの主な媒介蚊はネッタイシマカやヒトスジシマカなどヤブカ属の蚊です。ネッタイシマカは国内には定着していませんが、ヒトスジシマカは秋田・岩手県以南の地域に定着しています。大阪府の蚊媒介感染症に対するサーベイランスでは、毎年ヒトスジシマカが一番多く捕集されています。ヒトスジシマカは、デング熱やチクングニア熱の媒介蚊としても重要です。
 大阪府では2003年度より蚊のサーベイランスを実施しており、2016年度からはジカウイルスの検出も可能な体制を整えていますが、これまで蚊から蚊媒介感染症に関わるウイルスの検出はありません。また、大阪府では、大阪府蚊媒介感染症(デング熱・チクングニア熱及びジカウイルス感染症)対策・対応マニュアルを作成し、これら感染症の国内発生が生じた場合に迅速な対応をとれる体制を整えています。

表.ジカウイルス感染症 輸入症例(2016年6月現在)



 詳細は以下のホームページをご覧ください

  厚生労働省 ジカウイルス感染症について(リーフレットなど)
   http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109881.html
  大阪府 ウエストナイル熱、デング熱、日本脳炎等に関する蚊のサーベイランスについて
   http://www.pref.osaka.lg.jp/kankyoeisei/westnilevirus/
  厚生労働省検疫所 国・地域別情報
   http://www.forth.go.jp/destinations/index.html
  国立感染症研究所 ジカウイルス感染症のリスクアセスメント 第7版
   http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/sa/zika/6531-zikara-7-160616.html
  WHO  Zika virus and complications
   http://www.who.int/emergencies/zika-virus/en/


 * 全数把握疾患:全ての医師が、全ての患者の発生について保健所への届け出が義務付けられている感染症のことで、感染症法で定められた1〜4類感染症と5類感染症の一部が対象となる。

(ウイルス課 青山幾子)

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