大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第156号− 2016年8月31日発行


最近の細菌性食中毒事情

 皆さんは、細菌性食中毒と聞いてどの様なイメージを持たれているでしょうか? おそらく、夏場に食品を長時間、室温に放置していると、その間に食品中で菌が繁殖し、それを食べてしまうと、嘔吐や下痢が起こる、といったイメージを持たれていると思います。
 以前の細菌性食中毒の主流であった、サルモネラや腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌による食中毒では、このような食品の不適切な保存が原因で引き起こされた事例が数多くありました。しかし、現在は、食品の販売業者や消費者の食の安全に対する意識が高まり、このような原因による食中毒事例は激減しました。
 その良い例として、腸炎ビブリオによる食中毒が挙げられます。腸炎ビブリオは、平成12年頃までは夏場の細菌性食中毒の原因として常に上位を占めていましたが、平成23〜27年の5年間では、全国で36件しか発生しませんでした(図)。これは、食中毒予防の3原則である食中毒の原因菌を「付けない」、「増やさない」、「やっつける」の中の特に「増やさない」を徹底したことにより、見事にその発生を抑え込むことに成功した結果です。その詳細については、メルマガ第106号にご紹介しました
 http://www.iph.pref.osaka.jp/merumaga/back/106-1.html

 近年、これらの食中毒原因菌に代わり、カンピロバクターによる食中毒が増加しています。全国で平成23〜27年の5年間に発生した細菌性食中毒を見てみると、その約6割(1453件)が、カンピロバクターによるものです(図)。
 カンピロバクターは動物(主に鶏)の腸の中に生息している菌で、動物や人の腸の中では増えますが、食品中では増えることができません。それでは、食品中で増えることができない菌であるにもかかわらず、なぜカンピロバクターによる食中毒事例は増加しているのでしょうか?
 それは、カンピロバクターが、非常に少ない菌量(数百個程度)で人に食中毒を引き起こすことができるからです。つまり、腸炎ビブリオで成功した「増やさない」を徹底しても、防げない食中毒なのです。また、カンピロバクター食中毒の主な原因食品は鶏肉ですが、鶏の場合、カンピロバクターの保菌率が非常に高く、鶏の解体工程で鶏肉に菌が付着することを完全に防ぐことはできません。つまり、「付けない」を徹底することも難しいのです。そこで、最後に残った「やっつける」つまり、食品を十分に加熱して食べることが重要となります。
 しかし、カンピロバクターによる食中毒は、いわゆる鳥刺し等の鶏肉の生食により起こっている事例が多く、このような食の嗜好がある限り、この食中毒を減らすことは難しいです。でも、逆に考えると、カンピロバクターによる食中毒は、「やっつける」を徹底して、かつ鶏肉の生食を止めれば、腸炎ビブリオの様に、劇的に減らすことができると考えられます。

 そこで、当所では、このことを念頭に、鶏肉を生で食べることの危険性を知ってもらうために、府内で流通している鶏肉類についてカンピロバクターの汚染実態調査を毎年実施し、カンピロバクターが鶏肉類に高率に付着していることを明らかにしてきました。また、大阪府においては、府民の皆様に注意喚起するためのリーフレット**を作成して、カンピロバクター食中毒を減少させるために取り組んでいます。
 **http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/18285/00196161/kanpirori.pdf


図.全国の細菌性食中毒発生件数(平成23〜27年)
厚生労働省 食中毒統計資料より


(細菌課 川津健太郎)

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