大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第157号− 2016年9月30日発行


デング熱とデング出血熱について〜流行地域へ渡航の際はご注意ください〜

 デング熱・デング出血熱とは
 デング熱・デング出血熱は、フラビウイルス科フラビウイルス属のデングウイルスにより引き起こされる急性の熱性感染症です。主に熱帯・亜熱帯地域に生息するネッタイシマカ、温帯地域に生息するヒトスジシマカにより媒介され、ヒト→蚊→ヒトの感染環を形成しています。デングウイルスには、1〜4型の4種類の型(血清型※1)があり、ある血清型のウイルスに感染すると、当該の血清型に対する終生免疫を獲得します。一方で、他の血清型に対する免疫も誘導されますが、数か月で消失し他の血清型のウイルスに対する防御能を失います。2度目に異なる血清型のウイルスに感染すると、デング出血熱を発症する等、重症化する可能性が高くなるとされています。その要因の一つに、抗体依存性感染増強※2が提唱されています。2016年7月には、国内において海外からの帰国者がデング出血熱を発症し、死亡に至った症例が報告されました。

 症状
 ヒトがデングウイルスに感染した場合、2〜14日(平均3〜7日)の潜伏期間を経て、約20〜50%にデング熱の症状が出現します。デング熱は、突然の高熱で発症し、頭痛、眼窩痛、結膜充血、顔面紅潮、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感を伴い、発熱は2〜7日程度続きます。発症3〜4日後、発疹が出現し胸部・体幹から四肢・顔面へと広がります。症状は7〜10日程度で消失し、後遺症なく回復します。一部の患者においては、デング出血熱に移行し、発熱2〜7日後に上記の症状に加えて出血傾向やショック症状が出現することがあります。

 予防・対策
 デング熱に対するワクチンは、約20年もの開発期間を経て2015年12月に世界で初めてメキシコで承認されました。2016年4月時点でフィリピン、ブラジル、パラグアイ、シンガポール、エルサルバドル、メキシコの6か国で承認されていますが、日本では承認されていません。ワクチンの開発が遅れた理由の一つに、4種類の血清型のデングウイルスを等しく防御し、抗体依存性感染増強などによりデング出血熱を発症しないことを確認する必要がある点が挙げられます。2014年には、約70年ぶりにデング熱の国内感染が確認されましたが、国内で報告されるデング熱患者の多くは、デング熱発生地域で感染し国内で発症する輸入症例です(図表参照)。よって、デング熱流行地域に渡航された際に、蚊に刺されないことが重要です。デング熱流行地域へ渡航する場合は、長袖・長ズボンを着用し、出来る限り皮膚の露出部を少なくするようにして下さい。蚊の忌避剤を使用することも有効です。外務省より平成28年8月3日付でアジア・オセアニアにおけるデング熱の流行への注意喚起を促す記事が掲載されています。デングウイルスの国内への持ち込みを防ぎ、国内発生が起こらない状態を維持しましょう。

 ※1 血清型:ウイルス表面の抗原を基に分類したウイルスの型
 ※2 抗体依存性感染増強:抗体依存性感染増強:感染防御能を持たない抗体によってウイルスの感染が増強される現象。
 


図.世界におけるデング熱発生地域
Centers for Disease Control and Prevention(CDC)ホームページを一部改変
http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2016/infectious-diseases-related-to-travel/dengue#4598


表.2013年〜2015年までの日本国内におけるデング熱症例の報告数と推定感染国
国立感染症研究所ホームページを一部改変:
http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/690-disease-based/ta/dengue/idsc/6663-dengue-imported.html


(大阪市立環境科学研究所(併任)大阪府立公衆衛生研究所 上林大起)

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