大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第160号− 2016年12月31日発行


インフルエンザの季節です


 寒くなって空気が乾燥してくると、風邪をひく人が増えてきます。
 「のどが痛い、鼻水がでる、熱がでる、クシャミ・咳がでる」といった上気道炎の症状は、多くの場合ウイルスが気道の粘膜に感染することによって引き起こされます。インフルエンザもインフルエンザウイルスが上気道の細胞に感染することにより、上記のような症状が現れます。インフルエンザウイルスが気道以外の部位で検出されることは非常にまれですが、気道に感染した事によって、宿主であるヒトが防御反応として分泌したサイトカイン*が血液にのって全身に拡がり、高熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感といった全身症状が現れます。
 インフルエンザの流行期に呼吸器や全身の症状がみられ、医療機関を受診すると、のどや鼻の奥を綿棒で拭い、インフルエンザかどうかを調べてもらった経験がある方も多いのではないでしょうか。医療機関で検査に用いているのは「迅速診断キット」と呼ばれる製品で、患者さんののどや鼻の粘膜に存在するインフルエンザウイルスが持つタンパク抗原を検出しています。これらのキットでは一部を除いて、A型かB型かインフルエンザではない(すなわち陰性)かの判定しかできません。
 毎年、冬に流行するインフルエンザウイルスは、ウイルスの表面に突き出ているタンパク質の違いにより、A型はH1pdm09とH3の2つの亜型*に、B型は山形系統とVictoria系統という2つの系統に分けられます。私たち地方衛生研究所では、地域の医療機関を通じて搬入される、インフルエンザの患者さんののど、鼻の拭い液や、鼻汁、うがい液などから、培養細胞を使ってウイルスを分離したり、インフルエンザウイルスが持つ遺伝子を検出したりして、毎冬、どんな種類のウイルスが、いつから、どういう規模で流行したのかを調べています。さらに、随時、発生状況をホームページ上で皆さんに発信しています。
 グラフは大阪府立公衆衛生研究所で検出した、昨冬のインフルエンザウイルスの検出状況とインフルエンザの定点あたり患者数*です。昨年の秋には、A型のH3亜型(赤色)の集団発生が第43週(10/19-10/25)に2件、第46週(11/9-11/15)に1件ありました。しかし、実際に冬に流行のメインとなったのはH1pdm09亜型(ピンク色)とB型の2系統(青色、緑色)だったことが分かります。また、オレンジ色の折れ線で示した定点あたり患者数をみると、秋に集団発生が起こっても、患者数の大きな増加はみられず、必ずしも流行に結びついていない事が分かります。
 定点あたりの患者数が1.0を越えると流行期に入ったと判断します。昨冬は2016年の第1週(1/4-1/10)に流行入りしました。年によっては、A型が流行し始め、ピークを過ぎた後からB型が流行し、検出数のグラフが二峰性になることがありますが、昨冬はA型とB型の流行している期間が長く重なっており、A型とB型の両方に同時に罹っていた患者さんもおられました。昨冬は1つの検体から両方の遺伝子が検出された例が4例あり、その内の1検体からはA型のH1pdm09亜型とB型の山形系統の両方のウイルスが分離されました。ウイルスの遺伝子は、ウイルスが感染して増殖している時だけでなく、死滅してからも一定期間は検出されますので、両方の遺伝子が検出されても同時に感染していたとは限りません。しかし、両方が分離された1名の患者さんは、まさに同時にA、B型両方の生きたウイルスを排出していたといえます。
 このような各地方衛生研究所で検出されたウイルスの情報や流行状況などは、国の国立感染症情報センターに集められ、さらに詳細に解析された後、次年度のワクチン株の選定や流行予測に役立てられています。

 
*サイトカイン

  微生物やその他の抗原に応答して生体から一過性に分泌され、炎症・免疫反応を調節する役割を持つタンパク質。
 
*亜型

  ヒトに感染するインフルエンザウイルスの場合、ウイルス内部のタンパク質の違いから大きくA,B,C型に分けられますが、さらにA型インフルエンザウイルスは、表面に突出しているタンパクの内の2種類、HA(16種類 H1-H16)とNA(9種類 N1-N9)の組み合わせから144種類の亜型に分けられます。当所では検出されたウイルスのHAの種類を決定しますが、NAの種類については決定していませんので、H1pdm09またはH3というようにHA亜型のみ表記しています。
 
*定点あたり患者数

  患者さんの発生状況を地域的に把握するため、人口および医療機関の分布などを考慮して定点とする医療機関を指定しています。インフルエンザ定点は昨年度末の段階で府内に307定点あり、定点からの届出を受けて府内のインフルエンザの発生数を把握しています。



2015/2016シーズンのインフルエンザ検出状況と定点あたりの患者数の推移
(2015年:43-53週、2016年:1-13週)



(ウイルス課 森川佐依子)

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