大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第161号− 2017年1月31日発行


化粧品に配合される防腐剤「イミダゾリジニルウレア」について

 イミダゾリジニルウレアは化粧品に配合される防腐剤の一種であり、ホルムアルデヒドを遊離する性質から「ホルムアルデヒド遊離型(ドナー型)防腐剤」と呼ばれています。「イミダゾリジニルウレア」という名前は、あまり聞き慣れないと思われますが日本でも使用が認められており、化粧品の裏面の成分表示を見ているとごくまれに出会うことがあります(図1)。ホルムアルデヒド遊離型防腐剤についてはこれまでに、遊離されるホルムアルデヒドや分析法の話題をメールマガジンでもご紹介しているのですが(第60号第68号第106号)、今回は防腐剤であるイミダゾリジニルウレアそのものについてのお話です。

 日本の化粧品基準におけるイミダゾリジニルウレアの化合物名はN,N''−メチレンビス[N'−(3−ヒドロキシメチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)ウレア]となっています(文献1)。この名称を元に化学構造式を描くと、図2aのようになります。しかし、過去のイミダゾリジニルウレアの化学構造に関する研究では、この化学構造の状態で存在するという化学的データは得られておらず、単一の化合物ではなく複数の化合物の混合物であると報告されていました(文献2)。主要な構成成分とされていたのが、図2に示したアラントイン、1−[4−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソイミダゾリジン−4−イル)]ウレア(HU)です(図2b, 2c)。主要な構成成分といっても構成比率は合わせても30%程度であり、「残り60%あまりの構造は不明だが、アラントインとホルムアルデヒドの縮合混合物と考えられる」とされていました。私たちはさらに解析をすすめ、イミダゾリジニルウレアの一部を構成するアラントイン・HU以外の2化合物の推定構造を特定できました。その化合物が1−[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソイミダゾリジン−4−イル]ウレア(3,4-BHU)と1−[3−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソイミダゾリジン−4−イル]ウレア(3-HU)です(図2d, 2e、文献3)。

 イミダゾリジニルウレアは化粧品基準(文献1)にも示されているように、化粧品(粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもののみ)に0.30%を上限として配合することができます。欧州連合(EU)でもこの防腐剤の化粧品への使用が認められているのですが(上限0.6%)、EUの化粧品及び非食品に関する科学委員会(SCCNFP)からは、ホルムアルデヒドへの換算値(イミダゾリジニルウレア 最大許容濃度0.6 %、ホルムアルデヒド換算値 0.186 %)とともに、「イミダゾリジニルウレアそのものは分析が難しいものの、最大許容濃度は総ホルムアルデヒド量として示すことができる」旨の意見書が出されています(文献4)。一方で、イミダゾリジニルウレアから遊離されるホルムアルデヒドの濃度は、化粧品の性質(pHや共存成分など)によって異なることが分かっており(文献5)、化粧品に配合されたイミダゾリジニルウレアそのものの量はそのホルムアルデヒド量から推察することが困難です。私たちはこれまでに蓄積した情報を元に、「分析が難しい」とされたイミダゾリジニルウレア定量法の開発を目標に研究を続けています。(本研究はJSPS科研費 JP15K19254の助成を受けて実施しています。)





図1.ホルムアルデヒド遊離型防腐剤を配合した化粧品の表示
(下から2行目に「イミダゾリジニルウレア」の表示がある。)





図2.本文中に出てくる化合物の化学構造
イミダゾリジニルウレア(a)、アラントイン(b)、HU(c)、3,4-BHU(d)、3-HU(e)



[参考文献]

  1. 化粧品基準(厚生省告示第331号、平成12年9月29日)

  2. S. V. Lehmann, et al. Contact Dermatitis 54: 50-58 (2006)

  3. T. Doi, et al. Contact Dermatitis 67: 284-292 (2012)

  4. SCCNFP, SCCNFP/586/02 (URL; https://ec.europa.eu/health/archive/ph_risk/committees/sccp/documents/out188_en.pdf) (2016年12月5日確認)

  5. K. Kajimura, et al. 日本香粧品学会誌 34: 7-13 (2010)


(薬事指導課 土井崇広)

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