2005年3月31日 第19号

目次
 
・ 今月の話題
 「インフルエンザ終息へ」
 「キャッサバ菓子食中毒死事件」
・ 研究の窓から
 「河川水中のキレート剤の実態調査」
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*今月の話題
「インフルエンザ終息へ」

 
 今冬のインフルエンザの流行は、例年より約1ヶ月遅い、年明け第4週から定点あたりの患者報告数が増加し始めました。大阪府内での定点あたりの患者数はその後増加し続け、第8週で36.2名/週とピークを迎え、第10週現在で患者数は減少傾向にあります。全国的にみれば、過去10年で2番目の規模の流行となりました。
 今冬の流行の特徴は、その主流ウイルスがB型だった点にあります。B型インフルエンザウイルスはA型と異なり、亜型ほど大きな区別はありませんが、Victoria系統、Yamagata系統という2種の抗原性の異なる系統に分けられます。B型はあまり大きな流行とならないことが多いのですが、今冬、異例の大流行となりました。その背景には、一昨年と3年前のシーズンは今年の流行株とは異なる系統(Victoria系統)のウイルスが流行し、昨年はB型の流行が見られなかったことから、今冬流行したウイルス(Yamagata系統)に対する免疫力が十分でなかったことが考えられます。
 ようやく下火になりつつある流行ですが、まだ完全に終息したわけではありません。各地ではA香港型ウイルスの分離報告も続いていますので、引き続き注意が必要です。(ウイルス課 森川、加瀬、宮川)
 
「キャッサバ菓子食中毒死事件」
 
 3月9日、フィリッピン中部ボホール州マビニの小学校で、校外の露天商から買ったキャッサバの揚げ物を食べた生徒27人が死亡、100人以上が入院する事件がありました(3月10日新聞報道など)。
 キャッサバ(タピオカ)は、細長いダリアの球根のような芋をつくり、全世界の熱帯域で主食として栽培されている植物です。品種によって異なりますが、芋にはシアン化合物(配糖体)が含まれており、そのまま食べると中毒を起こすことが知られています。したがって、上の中毒事件はシアンによるものと推測されました。
 厚生労働省は早速3月10日「輸入食品に対する検査命令の実施について(キャッサバ)」で、キャッサバおよびその加工品の輸入食品については、現在詳細を確認しているが、念のためシアン化合物を検査する命令を出しました。
 ところが、3月18日フィリピン調査当局は、シアン化合物の可能性を除外し、露天商の家のフライパンに残っていたもの及び死亡した小学生2名の血液と胃の内容物から有機リン系農薬クマホスが検出されたことを発表しました。露天商の家には小麦粉を入れていた容器とよく似た容器に農薬があったことが見つけられており、小麦粉と間違って使った可能性があるとしています。
 この間、関係機関は3月11日「シアン化合物」の疑い、3月14日には「カーバメイト系農薬と感染症」の疑いなど揺れ動いた発表をしました。シアン化合物から農薬に疑いが変わっていった過程には、子ども達の治療に有機リン系農薬中毒に有効なアトロピンが有効だったこともあります。伝えられている症状は、早い場合5分から10分で、激しい胃痛、嘔吐、下痢ですが、今後の報告を待てば詳しいことがわかるでしょう。
 この事件は「和歌山ヒ素カレー事件」を思い出させますが、私達の身近でこのようなことが発生しても、詳しい症状と状況の把握が原因物質の推測に役立ち、被害者を救うことにつながる早道だと改めて認識した事件でした。このような健康危機に対して、公衛研も含め地方衛生研究所が対応できるよう、毒物検査法の準備や、症状から原因を推測するデーターベースの充実を行っています。 (企画調整課 赤阪)
 
*研究の窓から
「河川水中のキレート剤の実態調査」
 
 キレートとはギリシア語で「カニのはさみ」を意味します。キレート剤はカニが獲物を両方のはさみではさんでいるかのように、金属イオンを捕らえることから名づけられました。その用途は、たとえば固形石鹸ではカルシウムイオン等の金属イオンが多量に存在すると泡立ちが悪くなり洗浄力が低下しますので、キレート剤を加え金属イオンを除去し洗浄力を保持させています。類似の用途でキレート剤は、石鹸・洗剤工業、紙・パルプ工業や繊維工業などで広く使用されています。
 アミノカルボン酸系キレート剤*のうちEDTA(エチレンジアミン四酢酸)は、平成16年4月の水道水質基準の改正に伴い「要検討項目」**に設定されました。WHO(国連世界保健機関)でも飲料水水質ガイドライン値が定められています。またNTA(ニトリロ三酢酸)はわが国では水道水質基準はありませんが、IARC(国際ガン研究機関)によって発がん性が2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)とされ、WHOでは飲料水水質ガイドライン値が定められています。しかし、水道水源となる河川水中に存在するEDTA及びNTAを含むアミノカルボン酸系キレート剤の実態はほとんどわかっておらず、その調査が必要とされています。
 2004年夏に私どもが行った調査では、淀川などの河川水中にはEDTA及びNTAが広く存在することがわかりました。また、その他のキレート剤ではHIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)なども検出しました。しかし、淀川本川で検出されたEDTAレベルは水道水質基準「要検討項目」の目標値(0.5mg/L)の50分の1程度であり、NTAはWHO飲用水水質ガイドライン値(0.2mg/L)の100分の1程度のレベルでした。したがって、大阪府内の河川水中のEDTA等アミノカルボン酸系キレート剤のレベルは、水道水源として問題のないレベルであることを確認しました。 (環境水質課 小泉)
*:アミノカルボン酸系キレート剤:最もよく用いられるキレート剤の一つ。EDTA、NTAをはじめ構造が類似した一連の化合物をいう。
**:要検討項目:毒性評価が定まらない、あるいは浄水中の存在量が不明などの理由から、水質基準項目及び水質管理目標設定項目のいずれにも分類できない項目。
 
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