20058月31日 第24

目次

 

*「公開セミナー」開催のお知らせ

*大阪の感染症サーベイランス情報

 「8月の感染症」

*研究の窓から

「石綿管(水道管)の修繕作業に伴う石綿曝露」 

「マクロファージの活性酸素生成能における鉱物繊維の長さの役割」

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*「公開セミナー」開催のお知らせ

 大阪府立公衆衛生研究所では、一般府民の方をを対象にした「公開セミナー」を11月中旬に開催する予定です。これは、健康増進と生活の安全確保のために役立つ情報を提供し、当所の業務についてご理解を頂くと共に、府民の皆様に保健衛生に関する知識を深めていただくことを目的としています。

 詳細については後日お知らせします。

  

*大阪の感染症サーベイランス情報 

 

8月の感染症」

  第33週(8月15日から821日)の定点あたり報告数の上位3疾患は感染性胃腸炎(1.6)、ヘルパンギーナ(1.0)、流行性耳下腺炎(0.9)でした(()内は定点あたり報告数)。ヘルパンギーナは第28週の定点あたり4.7をピークに以後減少し、大阪府内全11ブロック中6ブロックで1を切りました。手足口病も同様に第28週の2.0以降減少し、第33週は0.555位となっています。咽頭結膜熱は第26週の0.62がピークで第33週は0.437位でした。夏型感染症は全体的に減少を続けています。一方眼科定点からの報告疾患である流行性角結膜炎は第280.25、第300.46、第330.87と増加しており、今後の動向に注意が必要です。

 今シーズンの公衆衛生研究所における、夏型感染症の主な原因ウイルスであるアデノウイルス、エンテロウイルスの検出状況はアデノウイルス2型が6例、3型が4例、5型が2例、コクサッキーA6型が6例、エコー14型が1例となっています。

 

 例年夏期は腸管出血性大腸菌感染症の発生が多く、大阪府でも8月に入って報告数が増加しています。牛肉やレバーの生食など食品が原因となるものの他、感染者の便を介した二次感染もあります。事実、保育所などにおける集団発生も報告されています。食品の取り扱いに充分注意して食中毒を予防するとともに、おむつ交換時の手洗い、食前、トイレ後の手洗いの指導の徹底、プールの衛生管理にも注意することが必要です。

 

 さて平成184月1日からは乳幼児に対する麻疹、風疹ワクチンの定期接種は麻疹風疹混合ワクチンを用いた2回接種が行われることに改正されました。第1期の接種期間は生後12ヶ月から24ヶ月まで、第2期は小学校就学前の1年間です。2回接種により、接種率の向上、1回接種後の抗体価の低下による麻疹罹患をなくす効果などが期待できますが、当面の間はすでに単抗原ワクチン(麻疹ワクチンもしくは風疹ワクチン)を接種したものは第2期の対象にはなりません。改正により4月以降の定期接種は麻疹風疹混合ワクチンのみでしか行えませんが、いずれか一方をすでに接種もしくは罹患しており、単抗原ワクチンの接種を希望する生後12ヶ月から24ヶ月の方については法定接種とならないものの、定期接種と同等の費用負担で接種できるよう経過措置を設けることが通知されています。

現行では生後12から90ヶ月が対象の1回接種でしたが、来年4月以降24ヶ月を超える幼児は第1期の接種対象からはずれるため、現在未接種の接種対象者は早めに接種を済まされるようお勧めします。 (ウイルス課 宮川、大竹)

詳細はこちら<http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html>

 

*研究の窓から

 

「石綿管(水道管)の修繕作業に伴う石綿曝露」

 クボタの神崎工場で石綿管(水道管)を製造していた労働者の中で73名が石綿関連疾患で死亡していたことが明らかとなり、石綿の強い発癌性が話題になっています。クボタの場合は、石綿管の製造部門で働いていた労働者ですが、石綿管を使用していた水道関係の労働者にも石綿曝露があったと考えられます。石綿管はセメントおよび珪砂に石綿を混ぜ水を加えて混合し、円筒状にして固めたものです。石綿を混ぜるのは強度を増すためであり、青石綿と白石綿が使用されました。石綿管が水道管として使用され始めたのは1932年ごろからですが、広く使われるようになったのは1950年代で、それ以降、生産量が急増し、1965年にピークに達します。しかし、交通量の増加や老朽化に伴い石綿管の折損事故が頻発するようになりました。このためより強度のある鋳鉄管やダクタイル鋳鉄管などに代えられていき、石綿管の生産は1985年を最後に中止されています。2003年時点で残存する石綿管の総延長は18,710 km(水道管の総延長の3.2%)であり、1980年(86,806km)に比較し約1/5に減少しています。

 石綿管を使用する労働者が石綿に曝露される機会は敷設作業時と修繕作業時です。私どもは、1991年に水道局職員の水道管修繕作業時の石綿曝露について調査を行いました。既に、学会などでも発表していますが、参考のため紹介します。

 

【修繕作業時の石綿曝露濃度】 石綿管の折損事故で漏水が発生すると、水道局の職員が駆けつけ修繕を行います(外部の業者に委託しているケースもある)。まず、穴を掘って石綿管を露出させ、割れている部分の前後で石綿管を切断します。次に、新しい石綿管を同じ長さに切断してジョイントで接続し穴を埋め戻します。石綿管の切断には、高速ディスクカッター(円盤状の砥石が高速で回転する)を用いますが、この時、石綿を含む粉塵が発生するため、防塵マスクを着用していなければ、職員は石綿を含む粉塵を吸入することになります。

このような修繕作業時にどの程度の石綿曝露があるかを調べるため、某水道局の敷地内に穴を掘り、模擬的に石綿管切断作業を再現し、石綿濃度を測定しました。職員の呼吸位置での石綿濃度は、乾燥した石綿管では60 f/ml*、湿潤な石綿管では48 f/mlであり、いずれも高濃度でした。また、穴の中で作業者から1m離れた位置では91および170 f/mlとさらに高い濃度でした。穴の中での石綿濃度の平均値は92 f/mlであり、切断作業時(約5分間)以外の時間帯は石綿曝露がないと仮定して8時間平均値を算出すると0.96 f/mlとなりました。この値は、日本産業衛生学会が示す白石綿以外の石綿(青石綿、茶石綿など)の評価値(過剰発癌生涯リスク**1000人中1人の場合:0.03f/ml10000人中1人の場合:0.003 f/ml)の30300倍のレベルです。

 

【石綿管切断作業の頻度】 協力の得られた119市町村の水道局の修繕部門の職員を対象に、石綿管の切断作業に関する質問紙調査を行いました。修繕部門に所属していたものの中で切断作業を行っていたものの割合は、196675年が79%ともっとも多く、次いで、197685年および195665年がそれぞれ71%および72%でした。切断作業の頻度は1年間に110日がもっとも多く、次いで1125日でした。これらの結果を基に、職員1人当たりの累積日数を算出すると235日となりました。この値を修繕部門での平均在籍期間14.2年で割って、石綿管切断作業の頻度を算出すると、1年間に17日となりました。

 

【切断作業に起因する肺癌および悪性中皮腫による生涯死亡リスク】 米国労働安全衛生局(OSHA)およびHughesのリスク推定モデルを用いて、水道局修繕部門の職員における、石綿管切断作業に起因する肺癌および悪性中皮腫による生涯死亡リスクを次の仮定に基づき推定しました。修繕部門での在籍期間は14.2年、石綿管切断作業のある日は1年間に17日、その日の石綿曝露濃度は0.96 f/ml、最初の石綿管切断作業は21歳の時とすると、OSHAモデルでは10000人中6.0人(肺癌3.0人、悪性中皮腫3.0人)、Hughesモデルでは10000人中4.3人(肺癌1.5人、悪性中皮腫2.8人)と推定されました。ただし、このようにして算出された値は大きな誤差を伴う推定値であることを銘記しておく必要があります。

 

【石綿管の切断作業を行った方は健康に注意を】 調査を行った1991年と比較し、石綿管の割合が減少した現在では、修繕作業の頻度はさらに減少していると考えられます。しかし、石綿曝露に起因する肺癌や悪性中皮腫の潜伏期間は1050年であり、もっとも頻繁に修繕作業が行われた1960年代、1970年代の曝露による影響が今後現れる可能性があります。石綿管の敷設や修繕を行った経験のある方は、特殊健康診断を受けることが望ましいでしょう。なお、総務省の発表によると、石綿管の敷設作業に従事した水道局職員が悪性胸膜中皮腫により死亡し、1991年に公務災害に認定されています。  (生活衛生課 熊谷)

* f/ml 1ミリリッター中の繊維の数

**例えば、「過剰発癌生涯リスクが1000人中1人」とは、問題にしていること(この場合は石綿管の切断作業)が原因で1000人の中で1人が癌になるということです。

 

「マクロファージの活性酸素生成能における鉱物繊維の長さの役割」

 石綿の発ガン性は、その繊維形状に依存することは1970年ごろから動物実験で示されてきました。従って、その後開発された石綿の代替鉱物繊維もその繊維形状から発ガン性を持つのではないかと問題になっています。疫学的には石綿代替鉱物繊維の発ガン性は現在のところ認められていませんが、動物実験ではいくつかの石綿代替鉱物繊維で腫瘍発生が認められています。

 

 考えられている石綿の発ガンメカニズムの一つに、肺に吸入された石綿をどん食したマクロファージ(様々な異物を細胞の中へ取り込み処理する細胞)が放出する活性酸素が関与するという考えがあります。私達は、9種類の石綿代替鉱物繊維を用い、マクロファージの活性酸素(スーパーオキサイド)放出能は鉱物繊維の種類にかかわらず、繊維の長さに依存すること(繊維が約6ミクロンより長くなると急激にスーパーオキサイド放出能が強くなること、また、繊維長さと放出能との関係は直線的関係であること)を認めました。石綿では実験動物に腫瘍を発生させるには8ミクロン以上の長さが必要なことが示されており、私達の実験は、鉱物繊維の長さの作用は石綿と代替繊維で同様である可能性を示しました。

 

 2002年のIARC(国際がん研究機関)の報告によると、疫学調査の結果、ヒトに対する代替鉱物繊維の発がん性は認められない、あるいは判断するのに十分なデータがないとしています。動物実験では、吸入させたり肺に注入して与えたところ、代替鉱物繊維の内グラスウール、ロックウール、スラグウール、新しく開発されたアルミナ繊維は、肺に腫瘍をおこさなかったとして「3:発がん性を認めない」と分類しました。一方、E-ガラスや「475」と名付けられた特殊な用途のガラス繊維、セラミック繊維は肺に腫瘍を引き起こすことがわかり、「2B:ヒトに対する発がん性が疑われる」と分類しています。私達の試験管内の実験では、マクロファージに活性酸素を発生させる力はグラスウールやロックウールとセラミック繊維とで同様でした。グラスウールやロックウールは実験動物の肺の中で留まる時間が短いことが知られており、これが動物実験と結果が異なる原因と考えられます。

 

 石綿から代替鉱物繊維への転換が進んでいます。代替繊維の安全性についても注意が必要だと思われます。ヒトに対する発ガン性などの影響を疫学調査で調べるには、もっと年数が経つ必要があると考えられているからです。 (生活衛生課 大山)

 

 

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