2005年9月30日 第25号
 
目次
 
*お知らせ
 「公開セミナー」のお知らせ
*大阪の感染症サーベイランス情報
 「9月の感染症」
*今月の話題
 「最近の食中毒」
*解説
 「大腸菌」
*質問・問合せはこちらまで
*講読の新規登録/停止はこちら
*25号に対するご意見はこちら
 
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*お知らせ
 「正しく知って安心!健康と生活の安全のために」公開セミナー開催のお知らせ
 
大阪府立公衆衛生研究所では、平成17年11月15日(火)午後2時〜4時、下記の演題で府民の方を対象とした「公開セミナー」を開催します。
  (1)「食中毒」 -正しい知識で防ぎましょう-
  (2)「アスベスト」   -曝露される機会と健康影響- 
  (3)「健康食品」って? -健康の基本は「食事」「運動」そして「睡眠」-
 
*大阪の感染症サーベイランス情報
 
「9月の感染症」
 第37週(9月12日から9月18日)の定点あたり報告数の上位3疾患は感染性胃腸炎(1.9)、流行性耳下腺炎(1.1)、突発性発しん(0.7)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比1%、流行性耳下腺炎は25%の増加でした。第4位の手足口病は定点あたり0.5、第6位のヘルパンギーナは0.4の報告がありました。どちらの疾患も大阪府内の全ブロックで定点あたり1以下となり、夏型感染症はほぼ終息したといえます。これから冬型の感染症の流行まで感染症は比較的少ない時期となります。
今シーズン、公衆衛生研究所において検査されたヘルパンギーナ患者検体からは、主にコクサッキーA6型ウイルスが検出されたと前号でもお伝えしましたが、この傾向は全国でも同様でした。(
http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html参照)
 
 第2位となった流行性耳下腺炎は、一般的におたふくかぜと呼ばれているムンプスウイルスによる感染症です。耳下腺部の両側あるいは片側の腫れ、痛み、発熱が主な症状で通常数日で軽快しますが、無菌性髄膜炎、睾丸炎、卵巣炎、膵炎などの合併症を起こすことがあり、高度難聴などの後遺症を残すこともあります。潜伏期は15から21日と長く、耳下腺腫脹の数日前から腫脹が消失するまで感染力を有します。患者との直接接触や唾液の飛沫により感染し、幼児など子供の集団で流行がみられますが、はしかや水ぼうそうほど感染力は強くありません。不顕性感染(かかっても症状がでないこと)もみられ、特に乳児など低年齢では不顕性感染の率が高くなります。予防には生ワクチンが有効で1歳から接種できます。ワクチン接種でも無菌性髄膜炎がおこることがありますが、おたふくかぜにかかった場合に無菌性髄膜炎を起こす頻度にくらべると低く、また症状も軽いのでワクチンでの予防をお勧めします。また小児期に耳下腺がはれる疾患はおたふくかぜ以外にも、他のウイルスや細菌によるものや反復性耳下腺炎などがあります。おたふくかぜにかかったことがあると思っていても免疫をもっていないこともありますので注意が必要です。  (ウイルス課 宮川、大竹)
詳細はこちら<
http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html>
 
* 今月の話題
 
 「最近の食中毒」
 現在のわが国の衛生状態は戦後の混乱期と比較にならないほど改善されており、世界的に最も衛生環境の整った国の一つとなっています。それに伴って全国の食中毒による死者数は、統計をとりはじめた1950年代は300人前後であったのが最近では10人前後となり激減しています。一方、患者数は当時から現在に到るまで2万5千人から5万人とほぼ横ばい状態で、毎年多くの方が食中毒で苦しんでおられます。死者数が激減した理由は病原性の強い赤痢菌、チフス菌などがほとんど見られなくなったためで、患者数が減少しないのは輸入食品の増加、食品流通の広域化、飲食チェーン店の増加などにより大規模な食中毒事例が増えていることと、原因物質として感染性の強い腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクター、サルモネラエンテリテイデス、ノロウイルスなどが現れてきたためだとも思われます。
 
 大阪府内で今年1月から8月までに発生した食中毒は60件、患者数は1797人です。食中毒の病因物質別については、カンピロバクター19件(137人)、ノロウイルス11件(103人)、腸炎ビブリオ5件(515人)、腸管出血性大腸菌4件(13人)、サルモネラ2件(6人)、ウエルシュ菌2件(829人)、その他の病原大腸菌2件(53人)、ブドウ球菌2件(10人)などによって占められます。大規模食中毒事例としては5月に大阪市内の仕出し屋の弁当による674人のウエルシュ菌による食中毒、8月に茨木市内の仕出し店の寿司、会席料理による465人の腸炎ビブリオによる食中毒がありました。
 
 病因物質と原因食品にはある程度の関連性があり、ノロウイルスはカキ類(生カキ)、サルモネラは卵(生卵)、カンピロバクターは鶏肉(バーベキュー)、腸炎ビブリオは鮮魚介類(寿司や刺身)腸管出血性大腸菌O157は生牛肉(生レバー)などが原因となりやすいものです。以上のように食中毒の多くは生(未加熱)あるいは加熱不十分な食品を食べることによって起こります。特に乳幼児、児童は重篤になる場合もあり、これらの食品の生食には十分な注意が必要です。最近では一年を通して食中毒の発生が見られますが、発生季節と病因物質にも関係があり、ノロウイルスによる食中毒は冬季、腸炎ビブリオは夏季に多く発生します。サルモネラ、腸管出血性大腸菌O157による食中毒も夏季に多いのですが、それ以外の季節にも発生します。カンピロバクターによる食中毒は一年を通して発生しますが、やや春季に多い傾向が見られます。
 
 細菌性食中毒を防ぐための三原則というのがあります。一つ目は調理場(台所)を清潔にして食材にいるかもしれない食中毒細菌をあちらこちらに付けないこと。二つ目は調理した食品はできるだけ早く食べること。すぐに食べないあるいは使わない食品は冷蔵庫に入れて病原菌を増やさないようにする。三つ目は十分に加熱(75℃、1分 ただしノロウイルスは85℃、1分)して病原物質を殺すことです。食中毒の多発する長い夏が終わりこれから本格的な秋になりますが、食中毒に終息はありません。上記3原則を遵守して健康な生活を過ごされることを望みます。(細菌課 塚本)
 
*解説
 
「大腸菌!?」
 「大腸菌」と聞いて何を思い浮かべますか。「ワッ怖い」あるいは「汚い」と思われる方がほとんどだと思います。私どもの研究所では、三種類の意味に使われます。
(1)病原菌、(2)水道水やプール、海水浴場の汚染の指標、(3)遺伝子工学の道具 です。
 それぞれに、見つかってきた経過や研究されてきた歴史が違いますが、もともとは哺乳動物の大腸に棲んでいる細菌です。
 
(1)病原菌
 腸管出血性大腸菌O157が有名で今では日本に定着してしまいました。他にもコレラと同じ症状をおこす毒素原性大腸菌や、赤痢と同じ症状をおこす腸管侵入性大腸菌などがあり、海外旅行などで気を付けなければいけない病原菌です。これらの大腸菌は、大腸の上皮細胞に張り付きそれぞれ違った毒素を出すことによって、あるいは上皮細胞に侵入して細胞をこわすことによって症状を引き起こします。これらの病原性に関わる遺伝子は、本来大腸菌の遺伝子にあるものは少なく、ほとんどは他の細菌などから入り込んだものです。
(2)水道水やプール、海水浴場の汚染の指標
 「海開きに先立ち○×海水浴場の水質検査をしたところ糞便性大腸菌群は1000個/100 ml以下であり、遊泳に適していると発表されました」などの報道を眼にします。人も含めた哺乳動物の糞便に汚染されていないかの指標として、大腸菌、糞便性大腸菌群、大腸菌群などが使われています。それぞれ測定方法が異なり、大腸菌以外の細菌も測定している場合もありますが「糞便汚染の指標」として用いられていることに変わりはありません。ちなみに、水道水では大腸菌を検出しないこと、プールでは大腸菌群を検出しないこと(大阪府条例)が定められています。
 (3)遺伝子工学の道具
 様々な生き物から遺伝子を取り出し、その中の特定の遺伝子を選んで調べたり、人間社会の役に立つように加工したりしています(遺伝子工学)。選び出した遺伝子を増やしたり性格を調べる道具として大腸菌が使われています。上の2つの大腸菌が野山やジャングルに棲むオオカミや山犬だとすると、ここで使われる大腸菌は血統書付きお座敷犬のようなものです。長い間分子遺伝学の対象として研究されてきましたので、ほとんどの遺伝子が明らかにされていて染色体のどの位置にあるかもわかっています。目的に応じて遺伝子を細工して性質を変えた大腸菌が研究用に市販されています。 (企画調整課 赤阪)
 
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