2006年2月28日 第30号
 
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目次
*大阪の感染症サーベイランス情報
 「2月の感染症」
*今月の話題
 「ふぐ鍋のおいしい季節です。素人調理に御用心!」
*研究の窓から
 「抗がん剤を取り扱う医療従事者の健康リスク」
*質問・問合せはこちらまで
*講読の新規登録/停止はこちら
*30号に対するご意見はこちら
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*大阪の感染症サーベイランス情報
 
「2月の感染症」
 
 2006年第7週(2月13日から2月19日)の定点*あたり報告数の上位3疾患はインフルエンザ(11.6)、感染性胃腸炎(6.8)、水痘(2.2)、でした(()内は定点あたり報告数)。インフルエンザは前週比24%の減少、感染性胃腸炎は20%、水痘は30%の増加でした。(http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html参照)
年明けから報告が急激に増加したインフルエンザは、第4週がピークで定点あたり28.2となり、その後は減少が続いています。南河内の18.2、大阪市西部の14.7などまだ報告の多い地域もありますが、大阪府内11ブロックのうち、5ブロックで定点あたり10以下となり、流行は終息に向かっています。大阪府立公衆衛生研究所で今シーズン分離されたインフルエンザウイルスは、A香港型が27例、Aソ連型が13例でした。どちらの亜型も今シーズンのワクチン株と近い抗原性を持つものが主に検出されています。大阪市内ではB型ウイルスも少数ですが分離されていますが、今年の大阪の流行はA型ウイルスによるものであったといえます。全国のインフルエンザウイルス分離報告でも2月18日現在Aソ連型296例、A香港型1590例で、B型は19例とA型が多くB型は7都道府県のみでの分離・検出にとどまっています。(
http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/inti4j.gif参照)。
 昨年末まで報告が多かった感染性胃腸炎は第1週に減少しその後はほぼ横ばいで経過しています。1月、2月の病原体定点病院の検体からはノロウイルスが16例、ロタウイルスが6例、アデノウイルス5型が1例、40/41型が1例検出されています(2月22日現在)。集団発生の報告数は1月以降27件で、原因ウイルスとしてノロウイルスが検出されています。
 さて、以前にも書きましたが、4月から麻疹(はしか)と風疹の予防接種制度が大きく変わります。予防接種法に定められた定期接種として行われるのは麻疹風疹混合生ワクチンのみで、対象は1歳児と第2期として小学校入学前1年間の小児となります。当面の間麻疹・風疹のいずれにもかかったことがなく、麻疹・風疹ワクチンのいずれも接種していないこの年齢の方のみが対象となります。現行の予防接種法では1歳から7歳半までの方が麻疹・風疹ワクチン定期接種の対象者ですが、4月以降は対象が変更になります。まだ接種をすませられていない方は3月中にお済ませになるようおすすめします。また改正後の定期接種の対象年齢であっても、現在どちらかの単味ワクチン(麻疹ワクチンもしくは風疹ワクチン)のみを接種済みの方は、4月からは定期接種としてもう一方の単味ワクチンの接種をうけることはできません。4月以降も任意接種でもう一方を接種することは可能ですが、定期接種の対象となる3月までに接種をすませるようにおすすめいします。制度についての詳細はお住まいの市町村にお問い合わせください。 (ウイルス課 宮川)
定点*:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは304ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は195ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。
 
*今月の話題
 
「ふぐ鍋のおいしい季節です。素人調理に御用心!」
 
 ふぐ料理店や寿司屋さんなどでフグが泳いでいる光景を目にされたことがあるかと思います。これはトラフグと呼ばれるフグで、筋肉(身)はもちろん、皮や精巣(しらこ)も無毒です。従って、“てっさ”、“てっちり”の他に“皮の湯引きや”しらこ“も料理として出されています。
日本近海には約40種類のフグが棲息していますが、このうち食用にできるのは21種類で、半数は食用にはできません。また、食用種についても、食用にできる部位が決められていて、筋肉だけが食用となるもの、筋肉と精巣が食用となるもの、筋肉と皮と精巣が食用となるものがあります。肝臓(きも)、卵巣(まこ)、その他の内臓は、食用種であっても、いっさい食用にはできません。
フグの種類、生息海域、部位(器官)によって毒性の強さが異なりますが、個体差が大きいことも明らかになっています。また、フグ毒(テトロドトキシン)は耐熱性で、通常の加熱調理によって毒性が消失することはありません。「ふぐ通と 呼ばれる人は 肝を食い」という川柳がありますが、肝を食べる人は「ふぐ通」ではなく、単に無知としか言いようがありません。肝臓一切れでも命を落とす危険性があるからです。フグの肝臓を食べて中毒にならなかったのは、たまたま食べた肝臓の毒性が低かったからで、次に食べる肝臓も毒性が低いという保障はありません。自分がフグ毒に免疫があるとか、調理法を自慢に思っている人があるかもしれませんが、とんでもない誤りです。
大阪府内で発生したフグ中毒事件の原因として、(1)釣ったフグを家庭で素人調理 (2)飲食店が客の求めに応じて肝臓を提供 (3)丸フグ(内蔵を除いていないもの)の販売 (4)許可業者の一般者への丸フグ販売 (5)有毒種の販売 等があげられます。
フグの調理や処理には、一般の調理師免許を持っているだけでは従事できません。各都道府県によって、名称や手続きが異なりますが、免許や資格がいる場合がほとんどです。大阪府の場合は、大阪府ふぐ販売等の規制に関する条例及び同施行規則に基づくフグ処理講習会が、毎年開催されています。年間1500〜2000名が「ふぐ処理講習会」を受講し、「ふぐ取扱登録者」となっています。また、フグの販売営業には、施設ごとに知事の許可が必要となります。
一般にも知られているように、フグ中毒の症状は、舌、手足のしびれ、嘔吐、運動障害、呼吸困難が主な症状で、重篤な場合は死亡します。潜伏時間は30分〜5時間で毒の接種量が多いと潜伏時間は短く、重症を呈します。フグ毒には特効薬はありません。異常に気付いたら、医師の治療を受けましょう。重症患者の場合、挿管による呼吸管理が有効といわれています。
なお、当所では大阪府食の安全推進課の収去計画に基づいて保健所が収去した市販のフグ加工食品(てっさパック、一夜干し)や、大阪府食品検査所から搬入されるフグについて、安全確認のための毒性検査を実施しています。
また、フグ中毒発生時には、原因究明のため、調理残品や摂食残品からフグ毒の検出を行っています。残品が得られない場合は、患者の吐物や尿からフグ毒を検出しています。当所で開発した抗TTXマウスモノクローナル抗体を用いる検査法が中毒事件の解明に役立っています。また、原因魚種を特定する必要がある場合には、軟X線レントゲン骨格写真観察や筋形質蛋白質の電気泳動法、遺伝子解析法などによる鑑別を実施してきました。 (細菌課 濱野)
 
*研究の窓から
 
「抗がん剤を取り扱う医療従事者の健康リスク」
 
 欧米では、抗がん剤を取り扱う医療従事者の職業性曝露に関する危険性について、1970年後半から警告的内容の報告がなされ、1980年代から1990年にかけて安全な抗がん剤の取扱いに関するガイドラインが制定されました。ガイドラインが制定されたことで、個人保護具や作業環境が改善されてきました。また、職業性抗がん剤曝露の健康影響に関する調査  ・研究も盛んに行われています。日本においては、1991年に日本病院薬剤師会がガイドラインを作成し、その後1994年と2005年5月に改訂版が発行されています。それ以降、抗がん剤の安全な取扱いに対する認識が看護師を中心に関心が持たれるようになりましたが、医療現場はあまり変化していません。産業衛生の分野に限ってみると、抗がん剤の安全な取扱いに関する啓発や研究は、ほとんど見あたらない現状です。
 医療従事者の抗がん剤被曝による体内摂取量は、がん患者の治療量の0.1%を越えることはないと推定されますが、長期間扱うため、微量長期摂取による慢性影響や他の危険因子との複合汚染による影響が懸念されています。健康に影響がないことが明らかにされるまでは、医療従事者における抗がん剤の曝露を低減させることが産業衛生上の重要課題であると考えられます。また、医療従事者は抗がん剤だけでなく、放射線や病原性微生物などに曝露されること、夜勤不規則勤務や長時間労働を行っていることが多いことなど、職場で様々なリスクに囲まれています。近年、日本でも医療従事者の労働実態や健康問題が注目されてきており、抗がん剤取扱いによる健康リスクも、そのひとつとなっています。
 日本においては、抗がん剤の取扱いに適切な保護具や作業環境を普及させ、安全な取扱いに関して検討すること、また欧米同様に、実効性や強制力が付与された国家レベルの抗がん剤の安全な取扱い指針が策定されることが望まれます。(産業衛生学雑誌  2005年第47巻5号9月 
http://joh.med.uoeh-u.ac.jp/j/index.html ) (生活衛生課 冨岡)
 
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