2006830日 第36

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目次

*今月の話題

 「健康危機発生に備え近畿の地方衛生研究所間で協定を締結」

*大阪の感染症サーベイランス情報

 「8月の感染症」

*研究の窓から

 柑橘類中における防かび剤の迅速分析法の開発

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*今月の話題

 

「健康危機発生に備え近畿の地方衛生研究所間で協定を締結」

 

 818日、近畿で健康危機が発生した場合に、近畿27県の17の地方衛生研究所(福井県、三重県、徳島県を含む)が、互いに協力し合う協定を結びました。

 

 この10年間近畿で、記憶に残る健康危機としては、以下のような事例があります。(1)19967月堺市で発生した腸管出血性大腸菌 O157:H7による学童集団下痢症(推定患者数9,523名、死亡者数3名)。(2)19987月和歌山市のヒ素混入カレー中毒事件(患者数67名、死亡者4名)。(3)20006月から7月大阪府・市を中心に和歌山県、兵庫県、奈良県等で発生した低脂肪乳による黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA型)食中毒(患者数約15000名)。(4)20024月から5月兵庫県および近隣府県市において、焼き肉チェーン店の肉類によるO157食中毒事件。(5) 20028月藤井寺市・柏原市で1,4-ジオキサンによる水道水源の汚染が判明。(6)20035SARSに感染した台湾人医師が関西国際空港から大阪、京都、兵庫、香川、徳島を観光旅行。(7)20042月から4月京都府で鳥インフルエンザ発生。防疫措置の最中にカラスがウイルスに感染、死亡したことが判明。(8)2004年から2006年にかけてノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生が多発。高齢者入所施設では死亡者も。   

 

 地方衛生研究所はこれらの原因究明や、被害にあわれた方の治療のために、微生物や化学物質の試験・検査を行っていますが、広域にわたって発生したり、多数の患者が発生する場合もあり、それぞれの地方衛生研究所だけでは対応できない場合もありました。また、近い将来に発生が心配されている新型インフルエンザの大流行や、テロや犯罪に対応する必要もあります。これまでも互いに協力してきましたが、検査などの応援をすることや受けることは難しい場合もありました。

 

 今回の協定を結んだことによって協力のルールができ、健康危機が発生した場合すみやかに、試験検査の応援や検査職員の派遣、機器の貸与や試薬など資材の提供などの協力を要請できることになりました。

 

 この協定は、福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、徳島県、京都市、大阪市、堺市、東大阪市、神戸市、姫路市、尼崎市、和歌山市の知事・市長間で結ばれました。福井県、三重県、徳島県が参加しているのは、今年426日に「近畿27県危機発生時の相互応援に関する基本協定」を結んでおり、今回の協定はこの基本協定の個別協定と位置付けているからです。各自治体の地方衛生研究所は様々な名称になっています。大阪府では府立公衆衛生研究所、大阪市では市立環境科学研究所です。(企画調整課 赤阪)

 

健康危機発生時における近畿27県地方衛生研究所の協力に関する協定書」

 http://www.iph.pref.osaka.jp/topics/kyotei/kyotei.html

 

大阪の感染症サーベイランス情報

 

8月の感染症」

 

 2006年第33週(8月14日から8月20日)の定点あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(1.8)、流行性耳下腺炎(1.3)、咽頭結膜熱(0.7)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比9%、咽頭結膜熱は15%の減少、流行性耳下腺炎は18%の増加でした。http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照2週連続して全体的に報告数は減少しており、医療機関のお盆休みの影響も考えられます。

 

 感染性胃腸炎は第22週以降減少が続いています。7月、8月の病原体定点病院の検体からはアデノウイルス40/41型が1例のみ検出されています。感染性胃腸炎の小児科定点からの報告数は減少している一方、腸管出血性大腸菌感染症の報告が多くなっています。無症状の病原体保有者も含む腸管出血性大腸菌感染症は1月から5月までに府内で41例報告されていましたが、649例、750例とそれまでに比較して大きく増加しています。818日現在今年に入ってからの大阪府内の総報告数は167例ですがそのうち有症患者は110例でした。その6割の67例で発症前1週間以内に焼肉の喫食歴があり、そのうち40例は肉を生食しています。1歳や2歳の低年齢の事例でも本人に生レバーやユッケの喫食歴があり、重症例も出ています。このような事例をださないよう、子供に肉の生食をさせないという認識を高めることが重要であると思います。

 

 流行性耳下腺炎は減少しているものの、南河内、三島、大阪市北部では増加しており、特に南河内では3.8と報告が多くなっています。髄膜炎を発症する事例もありますので注意が必要です。

 

 7月、8月の病原体定点の検体から検出された、夏型感染症の原因ウイルスであるアデノウイルスやエンテロウイルスは、アデノウイルス2型が2例、コクサッキーB5型が1例、エコー9型が4例、エコー18型が17例でした(821日現在)。ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱、手足口病などの夏型感染症はすべて減少しており流行は終息に向かっています。  (ウイルス課 宮川)

 

定点*大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは303ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は195ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

 

*研究の窓から

 

「柑橘類中における防かび剤の迅速分析法の開発」

 

 我が国は、グレープフルーツ・オレンジ・レモンなど多くの柑橘類を輸入しています。輸出国では、これら柑橘類を箱詰めする際に、かびの発生を防止する目的で防かび剤を使用しています。現在、日本において使用が認められている防かび剤は、イマザリル、オルトフェニルフェノール、ジフェニル、チアベンダゾールです。これら防かび剤は、食品衛生法に基づいて使用基準が定められており、規制の対象になっています。そのため、検疫所や当所をはじめ全国の衛生研究所で定期的に検査を行い、使用基準値を超えていないかどうか確認しています。

 

 大阪府では、従来より防かび剤の分析法として、「イマザリル分析法」と、「オルトフェニルフェノール、ジフェニル、チアベンダゾール同時分析法」を用いてきました。イマザリルの分析法は工程が複雑で、全ての防かび剤の測定結果を得るまでに時間がかかっていました。そこで、防かび剤を一斉に測定できる簡便・迅速な分析法を開発しました。

 

 この分析法の概略を説明しますと、まず試料を有機溶媒で抽出した後、塩析によって水分を分離させ除去します。次に、測定の妨害となる色素類や脂肪酸類をイオン交換系樹脂と逆相系樹脂に吸着させて除きます。測定には液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計* を使用します。

 

 この新しい分析法は、従来法に比べて精度が向上し、同等以上の回収率が得られることを確認しています。また、検査時間短縮にも成功しております。例えば、当所における従来法 (2 法の合計) では 10 検体あたり 5 時間かかっていた時間を 2 時間にすることができました。さらに有機溶媒の使用量も 1/20 程度になりました。食品化学課では、この新分析法を今年度より検査に適用する予定です。 (食品化学課 岡本)

 

*液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計:質量分析計とは、イオン源でイオン化された分子や原子を質量の違いにより分離し、検出する分析装置です。この装置は、液体クロマトグラフにより成分ごとに分離した後、2 段階の質量分析計により特定の分子質量だけを検出するもので、液体クロマトグラフのみ又は液体クロマトグラフ/質量分析計に比べて高精度・高感度に測定することができます。

 

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