2006929日 第37

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目次

*今月の話題

 「高病原性鳥インフルエンザ・インフルエンザ(H5N1)防疫総合訓練が行われました」

*大阪の感染症サーベイランス情報

 「9月の感染症」

*研究の窓から

 「近畿地域におけるHIVの広がりについて」

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*今月の話題

 

「高病原性鳥インフルエンザ・インフルエンザ(H5N1)防疫総合訓練が行われました」

 

 平成18年9月14日午後、大阪府、大阪市、堺市、高槻市、東大阪市が参加し、高病原性鳥インフルエンザが発生し、さらにヒトへの感染が起こったことを想定した総合訓練が行われました。この訓練の目的は、関係している機関つまり行政(健康づくり感染症課、動物愛護畜産課)、保健所、家畜保健衛生所、衛生研究所、医療機関の連携を確認し、「大阪府新型インフルエンザ行動計画」に示された活動の習熟を図ることにあります。

 訓練は実際に同様の事例が発生した場合4日間の時間の経過をたどるところ、半日に短縮して行われましたが、概要は次のとおりです。

 

 府内の養鶏農家で鶏の死亡事例が発生し、農家から府家畜保健衛生所に連絡が入り、府家畜保健衛生所は高病原性鳥インフルエンザ疑い例として臨床検査を行うため、検体を府病性鑑定室に送付する。病性鑑定室は遺伝子検査(PCR法)の結果A型インフルエンザと確認する。その後、国の検査機関である動物衛生研究所で検査したところ、H5亜型が確認された。家畜保健衛生所は感染鶏の殺処分や鶏舎の消毒などの防疫作業を実施する。八尾保健所は養鶏農家の従業員の健康診断を行い、発熱と咳の症状を示していた2名について、インフルエンザ(H5N1)要観察例と判断。八尾保健所の要請を受けた藤井寺保健所及び富田林保健所は感染症指定医療機関(市立泉佐野病院)へ2名の搬送を担当。この2名の検体を大阪府立公衆衛生研究所に送り、遺伝子検査を実施したところ、H5亜型が確認された。また、八尾保健所は鶏舎等で防疫作業を行う者に対する健康調査を実施する。さらに、2名の要観察例の従業員の家族の健康調査を住所地である大阪市と堺市の保健所に依頼。両保健所が調査を行ったところ発熱、咳があったため、これらの家族もインフルエンザ(H5N1)要観察例と判断された。検体を採取し大阪市立環境科学研究所および堺市衛生研究所に送り遺伝子検査を実施したところH5陽性が確認されたため、大阪市保健所は高槻市保健所に応援を依頼し、感染症指定医療機関(大阪市立総合医療センター)に、堺市保健所は東大阪保健所に応援を依頼し感染症指定医療機関(市立堺病院)に患者を搬送した。感染鶏の検体を送付された動物衛生研究所、要観察例のヒトの検体を送付された国立感染症研究所の検査によりこのウイルスはA型インフルエンザウイルスH5N1と最終診断された。

 

 訓練はいくつかの反省点はあったものの、大きな問題を生じずに無事終了しました。

 公衆衛生研究所では今回のような鶏からヒトへの高病原性鳥インフルエンザ感染例や、現在、世界のどこで発生してもおかしくない新型インフルエンザの出現に備えて、PCR法のみならずより迅速にウイルス遺伝子を検出するLAMP法、あるいは確実にウイルスの存在を確認できるウイルス培養法(ウイルス分離)を併用し、精度の高いかつ迅速性のある診断を実施できる態勢を整えています。 (ウイルス課 大竹 徹)

 

*大阪の感染症サーベイランス情報

 

9月の感染症」

 

 2006年第37週(911日から917日)の定点あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(2.7)、流行性耳下腺炎(0.9)、A群溶連菌感染症、突発性発しん(0.8)でした(()内は定点*あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比5%、流行性耳下腺炎は7%の減少、A群溶連菌感染症は9%の増加でした。http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照

 

 感染性胃腸炎は例年この時期は報告数が少ない季節です。8月以降の病原体定点機関の検体からはアデノウイルス40/41型が1例のみ検出されています。

 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は減少しているものの、中河内1.8、南河内1.5で報告が多く、8月以降の髄膜炎患者の検体からもムンプスウイルスが2例検出されています。流行性耳下腺炎に罹った時に無菌性髄膜炎を発症する率は、おたふくかぜワクチンを受けて無菌性髄膜炎を発症する率に比較すると非常に高いことが知られています。また流行性耳下腺炎に罹患し、難聴を認めることもありますのでワクチンによる予防をおすすめします。

 8月、9月に病原体定点の検体から検出された、夏型感染症の原因ウイルスであるアデノウイルスやエンテロウイルスは、コクサッキーB5型が1例、エコー9型が4例、エコー18型が9例でした(921日現在)。ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱、手足口病などの夏型感染症はすべて減少傾向にあるものの、咽頭結膜炎は大阪市東部で2.1、手足口病は南河内で1.4とまだ一部の地域で終息しておらず、今後の動向に引き続き注意が必要です。

 

 さて今年から始まった麻しん風しんワクチンの2回接種ですが、就学前1年間の児が対象となっている2回目の接種をまだ受けられていない方も多いようです。この2回目の接種は1回目の接種を受けられなかった方の接種機会として重要なだけではありません。1歳時に麻しん、風しんワクチンを接種済みの方にとっても、免疫が充分獲得できていなかったり、一度獲得された免疫が弱くなっていることもあるので、今後麻しんや風しんの患者さんに接触しても罹患しない免疫を獲得するために大変重要な接種です。3月末まで接種は受けられますが、冬になるとインフルエンザの流行もあり体調を崩して受けられないといったことも考えられますので、できるだけ早い機会に接種を済まされることをおすすめします。 (ウイルス課 宮川)

 

定点*:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは303ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は195ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

 

*研究の窓から

 

「近畿地域におけるHIVの広がりについて」

 

 エイズはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって引き起こされる病気です。感染当初はほとんど症状もありませんが、治療をしなければ、いずれは免疫機構が破壊され、健康な人ではかからないような様々な感染症などをひきおこします。HIVの主な感染経路は性的接触、母子感染、血液感染ですが、現在の感染の増加は無防備な性的接触によるものがほとんどです。大阪でも新規患者感染者数は年々増加しており,特に同性間の性的接触による感染が急増しています。

 

 私達は大阪府内にある性病科などのクリニックとの協同で、HIV感染に対して危険度の高い行動をとっていると思われる人々に、HIV検査への働きかけを行い、同意を得られた人々について検査を行っています。この検査の中でも日本人男性の感染陽性者数が急増していることが確認されました。

 この検査の一環として、近畿地域においてどのように感染が広がっているのか、どのようなウイルスが広がっているのか等を知る目的で、この検査でみつかったHIV感染者の体内にあるHIVの遺伝子を解析しました。

 

 その結果、よく似た遺伝子のHIVをもつ男性同性愛者のグループが大阪府内に複数存在しており、それぞれのグループ内でHIV感染が広がっている実態が明らかにされました。

 また、HIVに感染して薬剤を投与している人の中には、薬がきかない耐性変異をもったウイルスが生じることがありますが、まだ治療を始めていない新たに感染が分かった人の中にも、耐性変異ウイルスに感染した例が見られます。この事は、HIV感染者の中に、薬剤治療を受けながら、他の人に感染を広げている例があることが推測されます。

 

 また最近になってHIV検査を簡便に受けてもらうために、当日に結果が判明する迅速検査が導入されていますが、この方法でHIV抗体を検出できない感染のごく初期の例が相次いで見つかっています。これらの例についてHIVの遺伝子を解析すると、感染源は別であると考えられ、色々なグループで新たな感染者が増えていることが推測されます。

 これらの事から、確実に広がりつつあるHIV感染に対して、より積極的な予防・啓発活動が必要であると考えられます。 (ウイルス課 小島)

:当所では1次検査が陽性であった場合の確認検査だけを行っています。HIV検査を受けることが出来る病院、診療所、保健所と受け付け時間については「HIV検査マップ」

http://www.hivkensa.com/index.html をご覧下さい。

 

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