2007531日 第45

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目次

*今月の話題

 ツメタガイ(巻貝)に御用心

*研究の窓から

 「ダイオキシン類による母乳汚染の経年推移

     -ダイオキシン類対策特別措置法の効果-

*大阪の感染症サーベイランス情報

5月の感染症サーベイランス情報」

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*今月の話題

ツメタガイ(巻貝)に御用心

 

平成1957日、二色の浜で採取したツメタガイ(巻貝) (注1) から規制値 (注2) を超える麻痺性貝毒(4.9MU/g)が検出されました。

 本年4月中旬頃から大阪湾に麻痺性貝毒を産生するプランクトンが高密度に発生し、これを餌としている二枚貝が毒化しています。高毒化した二枚貝を人が摂食するとフグ中毒に似た中毒に陥り、重篤な場合は死亡する危険性があります。

現在、大阪府は当該中毒の発生防止のため、アサリの潮干狩りやアカガイ、トリガイの採捕について自粛を要請しています。

 当所では毒化が早く出現するムラサキイガイ等の二枚貝を対象に毎年モニタリング検査を実施していますが、平成1957日、二色の浜で同時に採取したツメタガイ(巻貝)からも規制値を超える麻痺性貝毒(4.9 MU/g)を検出しました。

 二枚貝を捕食するカニ類(トゲグリガニ、イシガニ)も毒化することが知られていますが、今回のツメタガイの毒化は有毒のアサリなどの二枚貝を捕食したことによると考えられます。

 なお、528日、二色浜と樽井浜で採取したツメタガイの毒力は7.313MU/gでした。潮干狩りなどで、採取・摂食しないよう注意してください。
 530日現在、二枚貝の毒は減少傾向ですが、アカガイについては規制値を超えています。淀川下流のシジミについて安全宣言が出されていますが、その他の二枚貝については今後の毒化情報等に注意してください。
                          

                                  (細菌課 濱野)

 

(注1)ツメタガイ タマガイ科 Glossaulax didyma

特徴: 殻長径9 cm。殻は厚く、丸い巻貝。表面は平滑で淡い茶〜灰褐色、縫合下に橙褐色帯がある。殻底は白く殻頂は黒い。有用2枚貝を食害する有害種で、海辺で小さな丸い穴のあいたアサリなどの貝殻を見かけるが、ツメタガイに食べられた跡である。砂浜に多く、水深050mまでの細砂底に生息する。

(注2) 4MU(マウスユニット)/g(可食部)を超えないこと

 

*研究の窓から

 「ダイオキシン類による母乳汚染の経年推移-ダイオキシン類対策特別措置法の効果-

 

 化学工業の発展、高度経済成長に伴い、石油を原料とした多くの有機化合物が合成・多用され、人類は多大な恩恵と多様な利便性を獲得しました。しかし、農薬等に用いられた有機化合物は天然に存在せず、難分解性および高脂溶性のため、環境中に放出されると長期残存し、食物連鎖を通じてその高位にあるヒトや動物に蓄積、濃縮されます。これら化合物は残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants, POPs)と呼ばれます。POPsは人体に有害、かつ難分解性で生体内に蓄積しやすく、大気や海洋を経由して地球全体を汚染します。ダイオキシン類もPOPsの一つですが、その汚染源は、Polychlorinated biphenyl (PCBs) の不純物以外に、廃棄物の焼却過程や有機塩素農薬の生産過程で非意図的に生成され、環境を汚染するという特徴を持ちます。毒性が非常に強いことから1980年代以降大きな社会問題となりました。授乳婦においては、蓄積されたダイオキシン類が母乳を通して乳児に移行するため、乳幼児への影響が懸念されています。

 

 ダイオキシン類は、Polychlorinated dibenzo-p-dioxin (PCDD)7種、Polychlorinated dibenzofuran (PCDF) 10種、 Coplanar-PCB (co-PCB) 12種、計29化合物の総称ですが、その毒性は化合物によりそれぞれ異なります。各化合物の毒性はWHOにより、最も毒性の高い2,3,7,8-TCDD を1として、各化合物の毒性が定められており、これを毒性等価係数(toxic equivalency factors, TEF)、その総量を毒性等量 (toxic equivalency quantity, TEQ)と言います。ダイオキシン類の毒性評価には総TEQを用いて行います。分析には分解能が10,000以上の高分解能ガスクロマトグラフィー/高分解能質量分析計(HRGC/HRMS)を用いて測定します。

 

環境省は1999年に「ダイオキシン対策特別措置法」を制定、施行して対策にあたりました。大阪府では、環境汚染が国内で問題となり始めた1972年より、「大阪府母乳栄養推進事業」として、PCBs等の長期モニタリングを厚生労働省の支援のもと行っていますが、当所ではこの際使用した乳脂肪の一部を冷凍保存していたことから、これを活用して国の調査の一翼を担い、1973年から2004年までの母乳中のダイオキシン類経年推移を測定しました。大阪府健康福祉室精神健康疾病対策課の協力のもと、試料提供了解の承諾(インフォームド・コンセント)を得た2529歳初産婦の乳脂肪を、年度毎に等量混合(各年度1337人)、1サンプルとしてその年度の試料とし、ダイオキシン類を測定しました。その結果、農薬やPCBs製品中の不純物が主な汚染源と思われる高塩素PCDDsおよび低塩素co-PCBsは、1974年を最高に2004年度まで年々大きく減少しましたが、塩素化合物の燃焼が主な汚染源と思われる、TEF値の高い5塩素および6塩素PCDDsの減少率は少なく、特に6塩素の1,2,3,6,7,8-HxCDDは、1970年代から1980年代後半にかけて増加、1990年以降は減少という、他とは異なったパターンを示しました。「ダイオキシン対策特別措置法」の施行により排出規制された2年後の2001年度からは、母乳中ダイオキシン類のTEQに対する各化合物の寄与率の変化が現れはじめました。総TEQに対して最も寄与率の高い5塩素PCDDsTEF=1)が2001年以降大きく減少し、総TEQに与えるダイオキシン類それぞれの寄与率が2001年以降変化していることが認められました。これらの結果から、1999年に施行された「ダイオキシン対策特別措置法」により、TEFの高いダイオキシン類による母乳汚染、人体曝露は徐々に低減しており、その効果は着実に現れていると推察されます。過去30数年にさかのぼって、母乳中ダイオキシン類の汚染実態を調査した研究は、我が国はもとより海外でもなく、これらの分析で得た経年的推移の結果は、今後のダイオキシン類環境汚染対策を実施する上で貴重な情報となっています。

                                (食品化学課 小西)

 

*大阪の感染症サーベイランス情報

「5月の感染症」

 

2007年第20週(514日から520日)の定点あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(8.1)、水痘(2.4)、A群溶連菌咽頭炎(2.2)でした(()内は定点あたり報告数)。水痘は前週比15%減少し、感染性胃腸炎とA群溶連菌咽頭炎はほぼ横ばいでした。http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照

感染性胃腸炎の病原体定点機関の検体からは4月以降のA群ロタウイルスが5例検出されています(523日現在)。

関東地方の麻しん(はしか)の流行の影響を受け、府内でも患者数は増加しています。今年に入ってからの小児科定点からの麻しん報告と基幹定点からの成人麻しん報告は合わせて41例で、昨年1年間に報告があった26例をすでに超えています。また定点医療機関以外からの情報も加えると府内で少なくとも120名の患者が報告されています(523日現在)。今年の流行の特徴として全国的に15歳以上の患者が多く、府内でも大阪狭山市の専門学校において30人を超える集団発生が報告されています。この年齢層の発症者には、ワクチンを接種していない方に加え、幼児期にワクチンは接種しているものの免疫が低下したために感染が防御できなかったと考えられる方もいます。今後流行が拡大すれば、本来の流行の主体である低年齢の患者の増加も危惧されます。現在、麻しんの予防接種は、風しんとともに、1歳時の1年間と小学校就学前の1年間の2回定期接種として受けることになっています。この対象者の接種はもちろんのこと、流行の拡大を防止するために、子供さんのみならず大人の方でも、罹患歴やワクチン接種歴を確認し、麻しんにかかったこともなく、ワクチンも接種されていない方は、早急に接種を受けることをお勧めします。

                               (ウイルス課 宮川)

 

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