2007年7月31日 第47号
 
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目次
*今月の話題1
  「食中毒について」
*今月の話題2
 「食品への放射線照射とその検知」
*大阪の感染症サーベイランス情報
 「7月の感染症」
*質問・問合せはこちらまで
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*今月の話題1
 「食中毒について」
 
 “人は世につれ、世は人につれ”と言いますが、食中毒についても同様のことが言えます。
 以前と言っても30年ほど前ですが、食中毒と言えばその大半が「腸炎ビブリオ」「サルモネラ」「黄色ブドウ球菌」という細菌が原因で発生し、これらの細菌を3大食中毒菌と呼んでいました。中でも腸炎ビブリオによる食中毒が最も多く、食中毒事件全体の5割がこの菌で引き起こされていました。しかし、最近この順位は大きく変わり、トップにキャンピロバクター、次いでノロウイルス、サルモネラの順になり、キャンピロバクターが食中毒事件全体の5割を占めるようになりました。このように食中毒菌の様相が変化したのは、私たちの食生活が魚介類を中心とした和風から肉類を中心とした欧風へと変化したことと深い関係があります。
 食中毒菌はいろいろな種類がありますが、それぞれ住処(出身地)を持っています。例えば
腸炎ビブリオの場合その住処は海底の泥の中です。またキャンピロバクターやサルモネラの場合、家畜や鶏の腸管内です。ということは、海産魚介類には海を住処とする腸炎ビブリオが、また食肉には家畜や鶏の腸管を住処とするキャンピロバクターやサルモネラが付着している可能性が大変高いと言えます。つまり、食材(魚や肉といった生鮮食材)は元々これら食中毒菌が付着しており、条件−温度、栄養、時間− さえ整えば何時でも食中毒が起こるといっても過言ではありません。 
 ここで注意していただきたいことは、「鮮度が良いから安全ですよ!」とよく言われますが、鮮度の良し悪しと食中毒発生とは別問題だということです。特に最近では、食肉や鶏肉由来のキャンピロバクター、O157、サルモネラは非常に少ない菌量(100個程度)で食中毒を発生させるため、食生活の欧風化とあいまってこれらの細菌による食中毒事件が増加傾向にあります。
 食中毒の多発シーズンはなんと言っても夏場です。これは食中毒菌が夏場の高温時期に増殖スピードが増し短時間に食中毒発生菌数に達するためです。しかし、最近ではノロウイルス(細菌でなくウイルス)のように冬場の寒い時期を好んで食中毒をおこす変り種も出てきました。ノロウイルス食中毒はカキ等の二枚貝を生で食べたことが原因で発生すると言われていましたが、今では、これ以外に”人人感染”も大きな原因をしめています。ノロウイルスの特徴はとにかく感染力が強いことです。このため行政的には食品が原因で症状が出た場合は“食中毒”、人から人に感染した場合は“感染症”と別々に分類しています。
 以上、食中毒の最近の傾向をお話してきましたが、食中毒の予防について具体的な方法を述べます。食中毒の原因となる細菌(キャンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオ等)あるいはウイルス(ノロウイルス等)は何に一番弱いでしょうか?「そうです 熱なんです!」大半の食中毒菌(ウイルス含)は75℃ 1分以上の加熱で死んでしまいます。つまり食材はその中心部まで十分(75℃ 1分以上)な加熱調理を行い、できればアツアツ(出来立て)の状態で食べれば食中毒にかかることはまずありません。最近のグルメブームで肉やレバーの生食がもてはやされていますが、幼児や高齢者の方々は抵抗力が弱いため、食材は出来る限り十分に加熱調理したものを食べるようにして下さい。
                                (企画調整課 菅谷)
 
 * 今月の話題2
 「食品への放射線照射とその検知」
 食品を保存する方法として放射線を照射する方法があります。放射線の持つエネルギーにより、直接またはラジカル反応などにより細菌類の遺伝子を損傷し、殺菌などの作用を示します。放射線というと原爆や原子力発電所を想像しがちですが、食品に照射する放射線(ガンマ線や電子線)は持っているエネルギーが弱いので、いわゆる放射能とは無縁です。食品に照射された放射線は、レントゲン撮影のX線と同じように食品を通過しますが、放射線そのものは食品には残りません。当然のことですが、照射された食品には放射能は生成しません。
 日本では現在ジャガイモの発芽抑制以外の目的には食品への放射線照射が禁止されていますが、諸外国では食品の殺菌や貯蔵目的に照射が行われています。国内の食品照射に関する新しい動きでは、昨年内閣府の原子力委員会が香辛料などの殺菌目的に放射線照射を検討すべきであると結論しています。
 香辛料は栽培中だけでなく、収穫後の天日干しなど乾燥作業中に細菌汚染されることがあると言われています。日本では主に加熱蒸気により殺菌していますが、加熱により香辛料の持つ香気成分が損失し、香辛料としての品質低下が起こります。加熱殺菌した香辛料と照射殺菌した香辛料の香りの違いは普通の方でも簡単に区別できます。諸外国で一番多く照射されている食品は香辛料で、殺菌効果を目的としています。
 最近厚生労働省は、香辛料に照射された放射線を検知する公定法(食安発第0706002号、熱ルミネッセンス法:TL法)を公表しました。TL法は、食品に付着している微量の鉱物質が、放射線照射により蓄積したエネルギーを加熱(70-400℃)により放出するとき発光する現象をもとにしています。試料を加熱しその発光量を測定しますが、食品から鉱物質を抽出して測定する方法、さらに再照射を行いその前後の発光量の比を求める方法があり、ヨーロッパの公定法にも採用されています。
 これまで照射検知の公定法がなく、検査機関だけでなく、輸入業者も香辛料照射の有無を確認することができませんでした。香辛料の多くは海外で生産され、主な輸出国では香辛料への照射が許可されています。過去には生産国で照射された香辛料などが誤って日本へ輸出された可能性もありましたが、今後は国内の基準に適しているかを確認できることになり、消費者が持つ食品に対する不安感解消に役立つと思われます。
                                 (食品化学課 尾花)
 
*大阪の感染症サーベイランス情報
「7月の感染症」
 
 2007年第28週(7月9日から7月15日)の定点あたり報告数の上位3疾患は、ヘルパンギーナ(5.2)、感染性胃腸炎(3.9)、A群溶連菌咽頭炎(1.5)でした(()内は定点あたり報告数)。ヘルパンギーナは55%増加、感染性胃腸炎は前週比12%、A群溶連菌咽頭炎は10%減少しました。http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html
 麻しん(はしか)は12例の報告があり、基幹定点からの成人麻しんは2例でした。夏休みも始まり、学校において感染が拡がる機会が少なくなるため流行は終息に向かうと考えられますが、地域での患者発生はしばらく続きます。引き続き定期接種の対象者への積極的な接種勧奨を行うことが重要です。麻しんは風しんとともに昨年から小学校就学前に2回目の予防接種が定期接種として行われていますが、今回の流行では特に中学生以上でワクチン既接種者の中でも感染者が多く出ていることから、今後は2回接種の対象を拡大することも検討されています。
 1位のヘルパンギーナ同様、手足口病も32%増加し定点あたり1.5で4位となりました。エンテロウイルスが原因のこれらの疾患は例年夏期に流行しており、これらの感染症に注意が必要な季節となりました。エンテロウイルスの感染症では無菌性髄膜炎を起こすこともあります。当所のホームページ「感染症ものしり講座」では、一般の方向けに、これらの夏に流行する疾患についての注意を掲載しています。ご参照ください。
http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/monosiri/monosiri.html
                               (ウイルス課 宮川)
 
定点*:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは304ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は197ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。
 
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