大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第53号− 2008年1月31日発行


健康危機のための地方衛生研究所の役割

 健康危機の変貌

 地方衛生研究所(地衛研)は、全国の都道府県、政令指定都市、中核市に現在77ヵ所設置されています。その役割は、地域の保健衛生行政のために科学的あるいは技術的な根拠となる情報を提供することです。昭和23年の旧厚生省通達による「地方衛生研究所設置要綱」に基づき、地方自治体に次々と地衛研が開設され始めてから約60年が経過しますが、この間、地衛研は地域で発生した様々な健康危機に対し、原因究明や被害の拡大防止、あるいは再発防止のために機能してきました。
 しかしながら、平成に入った頃から、サリン事件、0-157事件、和歌山砒素カレー事件、ダイオキシン汚染、低脂肪乳食中毒事件、狂牛病,炭疽菌事件、健康食品による被害、SARS、鳥インフルエンザ、ノロウイルス感染の多発など、健康危機の被害が大きくなり、多様化、広域化し、テロへの対応も必要になってきました。この様な健康危機の変貌に対し厚生労働省は、保健所法を地域保健法に、伝染病予防法を感染症法(略称)に改正し、また食品衛生法の改正と農薬等のポジティブリスト制の施行、水道法の改正などを行い、より広範で高い安全性確保を目指しました。


 地衛研のあり方検討

 さらに、厚生労働省は地域保健対策検討会を組織し、地域保健法の改正に向けた中間報告を平成17年にまとめ、地域保健の中核を担う保健所等のあり方とともに、地衛研についても機能強化の必要性を示しました。その主な内容は、地域及び広域における健康危機管理の科学的・技術的中核としての機能を保持すること、検査能力や疫学調査能力等の水準を確保すること、地区ブロック内において平時から連携体制の構築を図ること、地方感染症情報センターの機能強化・拡大を図ることなどです。
 地衛研ではこれらを受けて、健康危機管理のための具体的な取り組みを行うとともに、強化すべき機能および新たに構築すべき機能の検討を、関連機関である国立研究機関、地方厚生局、検疫所との共同で行い、平成18年に「提言」としてまとめました。この中では、地衛研の主要4機能である調査研究、試験検査、研修指導、公衆衛生情報の収集・解析・提供を充実強化することにより健康危機管理体制を整備すること、また、保健所などの自治体内関係機関をはじめ地域ブロック内の地衛研、さらに国の機関との連携などが提言されています。詳細は下記ホームページの厚生科学特別事業報告書の項をご覧下さい。
http://www.iph.pref.osaka.jp/report/report.html参照)


 健康危機管理の具体的取り組み

 健康危機が発生した場合、研究所では、24時間体制の緊急連絡網を使って迅速に関係職員を招集し、健康被害の規模に応じて対策会議を開きます。会議では、検査担当、広報・報道担当、連絡調整担当などが決められ、原因究明を中心とした対応を開始します。これらの作業は通常、保健所や自治体の対策会議あるいは担当部署と連絡調整を図りながら進められますが、健康危機の内容によっては警察等との連携も行われます。なお、危機発生時に対応を迅速に行うには、平常時から健康危機に関する情報の蓄積、予見的調査研究、分析・診断技術の開発、関係機関との連携の習慣付けなどの準備が重要です。平常時に準備すべきことと発生時の対応内容は、「健康危機管理要領」に定められており、これにそって対応を進めています。
 また、広域健康危機への新たな取り組みとして、全国6ブロックにおいて各ブロック内の地衛研連携のための協定が平成16年から順次締結され、相互技術研修、模擬訓練、研究会の開催、メーリングリストによる情報交換等を行っており、危機発生時には検査協力や人員の派遣などを行うことが取り決められています。

(生活環境部 薬師寺)


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