大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第53号− 2008年1月31日発行


腸炎ビブリオO3:K6による食中毒の流行発生

 腸炎ビブリオは海水中に生息する細菌で、わが国では腸炎ビブリオ食中毒の大部分が魚介類の喫食を原因として7月から9月の夏季に発生します。その発生は海水温との相関性が高く、東南アジア、インド、バングラデシュなどの地域で多発しています。食中毒の原因となる腸炎ビブリオの血清型には、年度ごとに、それぞれ検出される頻度から、流行菌型というものが存在します。わが国では、1996年頃を境にそれまでの流行菌型O4:K8が新しくO3:K6の菌型と入れ替わる現象が起こっています。当時、このO3:K6の流行はインド、バングラデシュで最初にその兆候が見られたことが判っています。その後、世界規模の広がりをみせ、いわゆるパンデミックな様相を呈しており、その状況は現在も続いているものと考えられます。

 現在の流行株を含めて、これらの分離株を遺伝学的に解析したところ、従来のO3:K6株とは異なる遺伝子構造を有し、そのいずれも同一の新しいクローンであることが判明しました。この新クローン株は病原因子として耐熱性溶血毒素(TDH)を産生しますが、TDHの産生レベルは従来の菌株と同じレベルであり、特別に強い病原性を有しているわけではありません。この新クローン株による世界的な流行の原因はいまだ明確にはされておりません。

(細菌課 石橋)

*パンデミック(pandemic):

 世界的な流行病に対する医学用語。ある感染症が世界的に流行することを言う。感染爆発、あるいは汎発流行。

*クローン(clone):

同一の起源を持ち、かつ均一な遺伝情報を持つ核酸、細胞、個体の集団。



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