大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第58号− 2008年6月30日発行


腸管出血性大腸菌O157の遺伝子解析

 今年も腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症が増加する季節になってきました。昨年大阪府では186人のEHEC感染者が届けられましたが、このうち105人は7〜8月に発生していました。分離されたEHECは公衆衛生研究所細菌課に集められていますが、多くの感染者が発生する「流行期」には、分離されたEHECを詳しく調べて、どのようなタイプのEHECが流行しているか解析しています。解析方法のひとつは、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法と呼ばれるもので、細菌の遺伝子(DNA)の違いを調べる方法です。DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基がつながったヌクレオチド鎖ですが、特定の塩基配列を認識して切断する酵素(制限酵素)と反応させると、EHEC O157のDNAは15〜20本程度に切断されます。これをアガロースゲルでゆっくりと電気泳動すると、その大きさによってDNA断片が分離され、そのパターンを肉眼で観察して、分離株のDNAが同じであるかどうかを判定することができます。写真の事例では、患者Aとその家族は4月5日に、患者Bとその家族は4月4日に、同じ精肉店で購入した生レバーを食べていました。精肉店従業員から分離されたEHECを含めた6株(No.1〜6)は、全く同じ泳動パターンを示し、この6人は同じEHEC O157に感染したと考えられました。同時期に発症した患者Cの泳動パターンはNo.1〜6と異なっており、別のタイプのEHEC O157に感染したことがわかりました。



 このようなPFGE法を用いたEHECの遺伝子解析は全国規模で実施されており、昨年東京都の大学で発生した集団食中毒の原因菌と同じパターンを示すO157が、大阪府でも3株分離されていたことが判明しています。残念ながら原因食品の特定には至りませんでしたが、日本中に同じ食品が流通する今日、離れた場所で発生した事例に関連性があるのかどうかを見極め、感染源の解明と感染拡大防止をめざして、今年も遺伝子解析を実施しています。

(細菌課 勢戸和子)


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