大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第59号− 2008年7月31日発行


日本人妊婦におけるホルムアルデヒド曝露とアレルギー疾患との関連
〜大阪母子保健研究のベースラインデータを活用して〜

 先進諸国においてアレルギー疾患の増加傾向が指摘されています。日本のアレルギー疾患患者数は、厚労省による2005年の推計で、喘息109万人、アトピー性皮膚炎38万人、アレルギー性鼻炎45万人であり、その対策は公衆衛生上重要な課題となっています。

 アレルギー疾患発症に遺伝的要因が重要であることは疑う余地がありませんが、遺伝的要因とともに環境要因が強く関与している可能性があります。今回、室内環境汚染物質として注目されてきたホルムアルデヒドを取り上げ、日常生活におけるホルムアルデヒド低濃度曝露がアレルギー疾患の発症あるいは症状悪化と関係しているかどうかについて調べました。

 著者らは、大阪母子保健研究(コホート研究)に参加した妊婦998人(平均年齢30歳)のベースラインデータを用いて、ホルムアルデヒド低濃度曝露とアレルギー疾患の関連を横断研究の手法により検討しました。

 収集した情報は、@24時間平均ホルムアルデヒド曝露濃度(対象者の呼吸域にバッジを装着して測定)、A生活習慣・生活環境、既往歴など(自記式質問票により収集)、B寝具のダニ抗原量(掃除機で捕集して測定)です。

 結果指標(喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)については、「過去1年間に治療歴がある」と質問票に回答した場合を「現在、疾患あり」としました。また、年齢、妊娠週数、寝具ダニ抗原量など多数の交絡要因を調整して解析しました。

 結果は、ホルムアルデヒド濃度が高くなると、アトピー性皮膚炎の有病率も高くなる傾向が見られました。一方、ホルムアルデヒド濃度と喘息およびアレルギー性鼻炎有病率の間には明らかな関連を認めませんでした。以上、「日本人妊婦において、ホルムアルデヒド曝露とアトピー性皮膚炎有病率に正の関連あり」という結果を得ました。疫学手法によりホルムアルデヒド低濃度曝露とアトピー性皮膚炎有病率の関連を報告した研究は初めてであり、アレルギー疾患のリスク要因を探索するうえで、今後の新たな研究につながると考えられます。

*大阪母子保健研究:

 アレルギー疾患の予防・リスク要因を検討するコホート研究で、妊婦とその児を同時追跡しています。当研究所と、福岡大学医学部、大阪市立大学大学院医学研究科、国立成育医療センター、国立健康・栄養研究所が共同して進めています。

*コホート研究:

 着目している要因のある群とない群を追跡して、疾病発症を比較する疫学研究。

*ベースラインデータ:

 コホート研究における観察開始時点のデータ。

*横断研究:

 対象集団のある一時点での要因と疾病の関係を調べる疫学研究。

*結果指標:

 研究で着目している疾病。

*交絡要因:

 調べている要因と疾病の関係に影響を与える別の要因。

*有病率:

 対象集団においてある一時点で着目している疾病を有している人の割合

(生活衛生課 松永一朗)


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